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2020年1月の1件の記事

2020年1月 3日 (金)

ふろくの花園 59.レアものゲットでコンプリート!? キャラクターカード

 新元号・令和の時代も2年目を迎えましたが、カードを使ったアナログな対戦ゲームは子どもたちの間で根強い人気を誇っています。友だちとの熱いバトルはもちろんのこと、いかに強いカードを集めていくかも楽しみの一つだそう。
 令和の前の前、昭和の時代に生まれた自分にとって、子どものころのカード集めといえば、お菓子のおまけのプロ野球選手カードやメンコ。それが平成に時代が変わると、いつのまにか「トレーディングカード」という横文字でオシャレなものに進化していました。

 トレーディングカードの「トレーディング(trading)」とはそもそも「取引」「貿易」の意味で、カード収集に置き換えると、相手と取引(交換・購入)しながら集めていくカードとなります。名刺やトランプぐらいの大きさで、アメリカでは子どものころから大リーグやアメリカンフットボール、バスケットボールなどのプロスポーツ選手のカードを集める伝統がありました。これらのカードは通常、数枚入りのパックで売られていて、どのカードが入っているかは買ってパックを開けてみないとわかりません。数パックに1枚の割合でしか入っていない特別なカードもあり、欲しいカードを手に入れられるかどうかは運の要素も多分に左右するという、結構罪なシステムなのです。それゆえに、ダブってしまったいらないカードを仲間同士で交換、もしくはカードを専門に取り扱うショップで購入するなどして、お目当てのカードを揃えていくことが重要なのです。

 日本では1991年に、このシステムのプロ野球選手カードが発売されたことを皮切りに、野茂英雄投手の大リーグでの活躍やマイケル・ジョーダン選手などの米プロバスケNBA人気も追い風となり、アメリカのトレーディングカード文化が広まっていきます。1994年ごろからは新聞記事にも「トレーディングカード」や略称の「トレカ」という言葉が使われ始め、世間一般にも周知されるようになりました。1997年ごろには輸入ウエアや雑貨を扱っている店で、人気ブランドのジーンズやスニーカーに混じりNBAのトレーディングカードが売られていて、若者たちの価値観ではジーンズやスニーカーと同列に、カッコイイものとしてカードが扱われていたようです。この頃にはプロ野球のほか、Jリーグやプロレス、競馬、アニメ、アイドルなど多彩なジャンルのカードが発売されるようになり、トレーディングカードの専門誌も登場。カード専門ショップは世代を超えた愛好家の交流の場としてにぎわうなど、トレーディングカードブームが巻き起こりました。

 子どもたちの間では、トレーディングカード文化が幕を開ける少し前、1980年代の終わりごろから「カードダス」という、アニメや漫画、ゲームのキャラクターが描かれたカードが人気となっていました。おもちゃ屋やスーパーなどに設置されているガチャガチャのような機械にお金を入れ、1枚20円または5枚100円で購入します。子どもたちのカード集めも、お菓子を買っておまけとして手に入れるのではなく、カードそのものにお金を払うようになっていくのです。カードの絵柄自体の魅力はもちろんのこと、トレーディングカード同様、シリーズの中のどのカードが出てくるかわからない、ホログラム加工でキラキラ光る特別なカードもあるなど、欲しいカードを手に入れるために、ついついもう1回お金を入れたくなってしまうギャンブル性やくじ引き感覚も、子どもたちの心をひきつけていたのでしょう。

 その後、1993年には「マジック:ザ・ギャザリング」、1996年には「ポケットモンスターカードゲーム」、1999年には「遊戯王」といった、カード集めとゲームの両方を楽しめるトレーディングカードゲームが続々と発売され、爆発的なブームとなりました。「レアものゲット(希少価値のあるカードを手に入れる)」「プレミア(付加価値がついて高価になっている)」「コンプリート(シリーズ全てのカードが集まったこと)」といった、横文字のコレクター用語を子どもたちが口にするようになるほど、トレーディングカード文化は人々の間に浸透していったのです。

 さて、ここからようやくふろくの話になります。

 『なかよし』では1993年、アニメ化もされて国民的な人気となった「セーラームーン」のキャラクターカードが、「セーラームーン スーパープレミアムカード(1993年8月号~1994年1月号)」としてふろくになりました。

 毎月2枚のカードが付き、6か月で全12枚を集めるこのふろくは、専用ファイルの「セーラームーン 公式カードファイル(1993年8月号)」がセットになっていて、決まった場所にカードを入れていくと永久保存版のコレクションが完成するというシステム。全てのカードにキラキラ光るホログラム加工がされていて、トレーディングカードでいうところのレアカードが当たった気分を毎月味わうことができるのです。裏面にはキャラクターの個人データも書かれています。アニメを見ているセーラームーンのファンも、このカードを目当てに普段は読まない『なかよし』を買い続けていたのではないでしょうか。

 『りぼん』では1998年に、人気まんがのキャラクターを集めた「りぼんスペシャルキャラクターカード(1998年10~12月号)」が登場しています。

 毎月2枚のカードが付き、3か月で全6枚のコレクションが完成。こちらのカードもホログラムやゴールドとシルバーでカッコよく光り、カードをしまっておくための「怪盗ジャンヌ カードファイル(1998年10月号)」がセットになっていました。

 カード集めはどちらかというと少年向けの趣味というイメージが強いかと思います。これまでの少女向けのカードふろくといえば、人気まんがのキャラクターが描かれたバースデーカードやクリスマスカード、ポストカード、時間割カードなど、裏面に何か書いて使ったり友だちに渡したりといった実用的な用途がメインでした。キャラクターを紹介する役割も持ち合わせていたカードふろくには、トランプやカルタがありましたが(29.少女とふろくの歳時記 お正月(後) 参照)、こちらも遊びの用途がメインといえるでしょう。

 数か月連続のシリーズふろくは新規読者獲得や継続購入への手段としては効果的なのですが、少女たちに向けて、実用的な用途がなくただ集めて眺めることを目的としたカードを送り続けることは、子どもたちの間でトレーディングカードが人気になってきたとはいえ、少女たちに受け入れられるか、当時の作り手側にとっては大きなチャレンジだったのかもしれません。
 しかし、そんな心配は無用でした。シールやメモ帳、折り紙など、いろいろなものを集めてきた少女たちはカードだって集めます。「好きなキャラクターでうれしい」「キラキラ光ってステキ」「ぜったい全部集める」といった感想が寄せられました。

 そして21世紀を迎えるころには、トレーディングカードの収集とゲーム遊びが子どもたちの間で流行しているという新聞記事が全国的に見られるようになります。

 日本中の子どもたちにトレーディングカード文化が根付いてきた時に、満を持して少女たちに届けられたのが「りぼんキャラクターカードコレクション(2002年5~10月号・2003年2~5月号・2003年10~2004年1月号)」です。なんと1年以上、3期にも渡る壮大なコレクションふろく。先に紹介した2つのキャラクターカードとの決定的な違いは、毎号買っても全てのカードが揃うわけではないということ。街で売っているトレーディングカード同様、オリジナルのパッケージに全種類の中から数枚がランダムに入っているため、どのカードがついてくるのかはわかりません。パッケージを開けるときのドキドキ感が味わえて、他のカードを持っているお友だちとの交換も楽しめます。中には全種類集めるために何冊も『りぼん』を買う少女もいたとか。
 コレクション用のファイルとして「ハルちゃん キャラクターカードコレクション スペシャルホルダー(2002年10月号)」が用意されました。ファイルではなく“ホルダー”にしているところが本格的でカッコイイですね。

 2002年6月号以降、キャラクターカードがふろくになる月には「キャラ・マスター コレちゃんがゆく!!」という1ページのカード情報コーナーが本誌に掲載されるようになりました。カンガルーのコレちゃんが、その月のキャラクターカードや読者のおたよりなどを紹介していきます。ちなみにコレちゃんは、おなかの袋の中にカードを集めている“りぼん最強のコレクター”という設定。通常のふろくコーナーから1つのふろくだけを独立させてしまうとは、キャラクターカードへの作り手側の力の入れようや、少女たちの注目度の高さがうかがえます。
 コンプリートは難しかったかもしれませんが、「学校でみんなで交換しまくっている」「このカードがきっかけで別の学校の友だちができた」「みんなでカードを持ってきて、じゃんけんで勝ったら負けた人からカードを1枚もらう」「男子もこのカードを集めているので男子と仲良くなれた」などの感想から、キャラクターカードは少女たちのコミュニケーションツールとして充分に機能していたようです。
 さらに、「カードの中から1枚引いて財布に入れればラッキーなお守りになる」「寝るときに好きなカードに願い事をする」「好きな男子に告白するときお気に入りのカードを持っていく」といったオリジナルの使い方の報告もあり、収集や交換が目的のカードに少女たち自身のアイデアで実用性を持たせていました。
 大人や少年が中心だったトレーディングカード文化を少女たちの世界に持ち込むことに成功したこのキャラクターカードは、21世紀初めの代表的なふろくといえるでしょう。

 21世紀に入ってからはふろくにファッション性が重視されるようになり、これまでの既定路線だった人気まんがのイラストが描かれたものは次第に減っていきました(25.新世紀のふろくの花園 (3)オシャレが大好き! 参照)。現在では、多数のまんがのキャラクターを長期間全面に押し出すことになるカードコレクションのようなふろくは難しいのではないでしょうか。
 トレーディングカードが子どもたちの間で盛り上がりを見せている時期と、人気まんがのイラストを大々的にふろくにできるギリギリの時期とが重なった、ある意味奇跡的なタイミングで生まれたふろくなのかもしれません。

〈参考文献〉
『トレーディングカード大百科』エニックス 1997年
『トレーディングカード&フィギュア完全ガイド』アスペクト 1997年
『トレーディングカードマガジン No.1 1997 Summer』高橋書店 1997年
『少年ブーム 昭和レトロの流行もの』串間努 著 晶文社 2003年
「スポーツカードいま人気」朝日新聞 1997年1月15日朝刊
「米のカード文化 日本進出中」AERA 1998年8月3日号
「スポーツカード 収集心くすぐる値段」朝日新聞 1998年8月17日夕刊
「お宝 値段じゃなくこだわり」朝日新聞 1998年10月31日夕刊
「トレーディングカードゲームが人気」毎日新聞 2000年8月19日地方版岩手
「1枚数万円も “現代のめんこ”」読売新聞 2001年1月26日夕刊
「子ども新語辞典14 トレカ」毎日新聞 2001年4月7日大阪夕刊
「トレーディングカードゲーム通じ友達の輪も」毎日新聞 2001年8月31日地方版鹿児島
「ニッポン流行記 トレーディングカードゲーム」読売新聞 2002年4月27日夕刊
「復活の秘訣9 トレーディングカード」読売新聞 2002年8月1日朝刊
「女の子だってカードに夢中」読売新聞 2005年10月8日夕刊

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