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2019年1月31日 (木)

ふろくの花園 58.“プリクラ” 少女たちの放課後を変えた!?

 あと数か月で終わる平成。その30年余りで私たちの生活は様々な変化を遂げました。なかでも1995年は、携帯電話料金の自由化に続きPHSサービス開始、パソコンOS「Windows95」や液晶画面搭載のデジタルカメラ発売などで、コンピューター・携帯電話・デジタルカメラといったデジタル・ネットワーク機器が一般社会にも手が届くようになります。“1人に1台”時代の到来を告げたこの年は、通信すなわちコミュニケーションのテクノロジー化・デジタル化へと大きく舵を切ったターニングポイントといえるでしょう。

 時を同じくして、親指の先ほどの小さな写真シールが少女たちの前に現れます。これが少女たちの放課後をも変えることになったのです。

 このシールを少女たちに届けたプリントシール機、通称“プリクラ”は、自分の顔写真が入ったシールを作れるアミューズメントマシン。1995年7月に第1号となる「プリント倶楽部」がアトラス社とセガ・エンタープライゼス社との共同開発で発売され、ゲームセンターや行楽地などに設置されました。300円を入れて機械の前に立ち、画面の中から好きな枠や背景を選んで写真を撮り、写り具合を確認してボタンを押すと、1枚約1.5×2.5cmのシールに印刷されて16枚の1シートになって機械から出てくるしくみ。1996年に人気タレントがテレビ番組で紹介したことで注目されると他社からも同様の機械が次々と発売され、特に女子中高生の間では友だちと写真を撮って、シールを手帳や持ち物に貼ったり交換したり、新しい機種を探しに行ったりと、“プリクラ”が放課後の合言葉になるほどの一大ブームを巻き起こします。人気の機種には行列ができ、ゲームセンターの雰囲気が一気に華やかになりました。
 “プリクラ”という名称はアトラス社が商標登録しているため、他社製のものにはプリントシール機や写真シール機といった名称が使われています。しかし、一般的には「写真を撮ったらシールになって出てくるのはみんな“プリクラ”」というくらい呼び名がすでに定着したため、現在では各社で開発された同様の機械の総称・通称となっています。ホッチキスやセロテープのようなものでしょうか。

 憧れのパソコンやケータイ、デジカメがついに自分の家にもやってきた、とはいえまだまだ大人のモノだった1990年代後半、少女たちは“プリクラ”を通じてカジュアルなデジタル体験をしていました。これまで、少女たちにとって写真とは「大人に撮ってもらったものを見る」ことがほとんどでしたが、“プリクラ”では、撮った写真をプリント前に自分で確認して撮り直しができ、機種によっては自分で選んだ枠や柄を付けて好きな文字や絵を書き込むこともできます。これまで大人にやってもらっていたことが自分でできてオリジナルを作れるようになったことで、少女たちの自己表現の手段に写真が新たに加わり、これまで大人の領分だった写真やカメラの世界が少女たちの手にも届きました。
 自分でプロデュースした写真を気軽に入手できることと、もともと少女たちの間でシールが好まれていて、メモ帳やおりがみなどと同じく、小さくてかわいいものを集めたり交換したりしていたことが融合して、デジタル機器を通じた新しい自己表現とコミュニケーションが少女たちの間に誕生したのです。現在花盛りのSNSや“インスタ映え”の走りといえるのかもしれないですね。

 女子中高生よりも年少の少女たちに向けて、“プリクラ”ふろくが登場したのはブーム真っただ中の1997年のこと。彼女たちの“プリクラ”ライフと、それをかわいくサポートするふろくの数々を紹介していきましょう。

 “プリクラ”の大きな特徴は、シールを縁取る「フレーム」の絵柄や写真の背景を選んだり、芸能人との合成写真を作ったり、ペンタブレットによって自由に書き込んだりと、撮った写真に装飾を加える、いわゆる“デコる”ができたことでした。観光地などに置かれた「ご当地プリクラ」など、そこでしか撮れない「限定フレーム」には行列ができることもあったそうです。
 その人気を意識して、雑誌オリジナルフレームをつくるためのシールが次々と登場しました。撮影したシールに上から重ねて貼ることで、人気まんがキャラクターと一緒に写っているような“プリクラ”シールを作ることができるのです。

 「りぼんスペシャルシールコレクション フォトシール(りぼん 1997年6月号)」には、「今話題のプリクラ風シール。りぼんキャラたちのフレームのできあがり!」
 「りぼんオールスターシールコレクション とうめいシール(りぼん 1998年2月号)」には、「プリクラのフレームにもなるかわいいシールだよ」
 「プリクラおあそびシール(ちゃお 1998年3月号)」には、「写真やプリクラの上にはって、オリジナルフレームで楽しもう!」
 「はじけてB.B. はじけるプリクラシール(ちゃお 1998年8月号)」には、「B.B.のオリジナルプリクラフレームが手に入る!」「愛理と一緒のプリクラ完成よ」
 といった説明書きがあり、雑誌の「限定フレーム」であることを伝えています。
 「プリクラであそぼうシール(ちゃお 1997年8月号)」や「東京ミュウミュウ 変身着ぐるみシール(なかよし 2002年9月号)」は、撮った写真にヒゲや眼鏡、かぶりものをつけたり、着ぐるみを着せたりできる、茶目っ気たっぷりのデコシールです。友だちとも盛り上がれそうですね。
 「チョコミミ キューティ★プリントシール(りぼん 2006年3月号)」は、人気まんがのキャラクターが“プリクラ”を撮ったという設定のシールで、まんがのキャラクターも読者のみんなと同じように“プリクラ”を楽しんでるよ、という共感を与えています。自分のコレクションに加えることで、キャラクターとのシール交換を疑似体験できるという、ファンにはとってもうれしいふろくです。

 友だちと撮った、交換したシールを集めることも、少女たちの“プリクラ”ライフの重要なポイント。シールをどれくらい持っているかでコミュニケーションの質と量をはかっていた部分もあったようで、「たくさん集めるとえらい」や「1000枚集めると幸せになれる」という都市伝説のようなことも言われていたとか。そうして集めた“プリクラ”シールを大事にとっておくためのふろくが、手帳やアルバム、ケースでした。これらの手帳やアルバム類には、ページにシールを貼ったりはがしたりすることが自由にできる加工がされているものもありました。“プリクラ”シールを貼って集めるための手帳は“プリ帳”とも呼ばれ、少女たちの必需品となっています。

 「ゴックン!ぷーちょ ぷーちょプリクラノート(なかよし 2004年12月号)」は、112枚をストックできる貼ってはがせるシート。キャラクターが途中で数をカウントしているので、シールを今何枚貼っているかが一目でわかります。
 「みいファぷー スペシャルプリクラカードブック(ちゃお 1998年9月号)」は、お気に入りの“プリクラ”シールを貼ってリングでファイルする単語帳スタイル。
 「だって極上!!めちゃモテ委員長 はっぴー!キズナ☆プリ帳(ちゃお 2008年2月号)」は、貼ってはがせるシートが20ページついているボリュームたっぷりの“プリ帳”。かわいいデザインのシートに、“プリクラ”シールを楽しくコレクションできちゃいます。
 「みきなちゃん 1998年プリクラダイアリー(ちゃお 1998年1月号)」や「デリシャス! プリクラフォト日記(なかよし 1998年1月号)」、「B-ウォンテッド 夏休み!プリクラ日記(なかよし 2001年9月号)」といった、“プリクラ”シールを貼りながら思い出を書きこめる日記形式のアルバムのほか、「オールスターなかよし2004 スペシャルカレンダー(なかよし 2004年1月号)」は表紙ウラに“プリクラ”シールを100枚貼れるコーナーがあり、1年間の“プリクラ”アルバムを作ることができます。
 「しゅごキャラ! JUICY☆プリクラ缶ケース(なかよし 2009年3月号)」は、手のひらサイズの缶ケース。“プリクラ”シールだけでなく、友だちからのメモ手紙も一緒に入れておけます。

 とっておきの1枚は、“プリ帳”にとじておくだけではもったいない! そんな少女たちには、お気に入りの“プリクラ”シールを机の上に飾れるミニ写真立てや、貼って持ち歩けるマスコットがピッタリです。

 「夢のクレヨン王国 フォトシールギャラリー(なかよし 1998年8月号)」は、シールがテレビ画面や舞台、指名手配写真になっちゃう!? ユニークなフォトスタンドです。
 「ニーハオパオパオ ゆらゆらプリクラスタンド(なかよし 2008年7月号)」は、指でさわるとゆらゆらゆれるスタンド。
 「スマイルでいこう メモリアルプリクラスタンド(なかよし 1999年3月号)」は、なんと7枚の“プリクラ”シールを飾れるスタンド。ウラにはメッセージが書きこめるので、プレゼントにもOK。
 「ハローキティ ちゃおオリジナルメモリアルスタンド(ちゃお 2000年3月号)」は、人気キャラクター・ハローキティのイラストがついたクリア素材のスタンド。3種類の絵柄をその日の気分で変えられます。
 「チョコミミ プリチ→プリマシーン&オールスター・プリシール(りぼん 2007年2月号)」は、フォトスタンドだけど横から人気キャラの“プリクラ”風シールがどんどん出てくる、遊び心満載のふろくです。
 「カードキャプターさくら フォトシールネームタグ(なかよし 1997年8月号)」はかわいいネームタグ。台紙に名前を書いて“プリクラ”シールを貼り、ケースに入れてラミネートするとできあがり。
 「紗南ちゃん ピンキー・マスコット(りぼん 1997年8月号)」や「ピカチュウ ぷりくらマスコット(ちゃお 1997年11月号)」も、シールを貼るとバッグにつけられるラブリーなマスコットになります。
 さらに、「みるくSHAKE! 恋のプリクラおまもり(なかよし 2002年2月号)」は、好きな人の“プリクラ”シールを中に貼って、こっそりと持ち歩けるヒミツのおまもり。願いが叶うといいですね。

 “プリクラ”がブームになり、撮って使って集めてが当たり前になった1990年代の終わりごろから、ふろくの中での自己紹介・自己証明に変化が見えてきました。“プリクラ”シールが友だちとのコミュニケーションツールとしてだけでなく、自分自身を証明し自己を表現するツールとして世の中に認知されたことの現れといえるでしょう。

 「みい子&ぷーちゃん めいしメモパッド(ちゃお 1999年4月号)」や「わんころべえ よろしく!ネームカード(なかよし 1999年4月号)」、「ワーキング娘。 ひとことレター名刺(なかよし 2000年4月号)」といった名刺のふろくは、「37.少女とふろくの歳時記 新学期の友だちづくり」でも取りあげているのですが、“プリクラ”登場前は名前や住所など文字を書くだけだった名刺に、「しゃしんシールをはってね」という顔写真欄が加わりました。
 「うるきゅー チェリーブロッサムメモリーズ(なかよし 2001年3月号)」や「b-CLUB こうかんノート(ちゃお 2001年4月号)」といった、プロフ帳(34.少女とふろくの歳時記 卒業・思い出づくり 参照)や交換日記のふろくでは、自己紹介欄が、かつての「にがおえをかいてね」から「しゃしんシールをはってね」に変わっています。
 雑誌の読者であることの会員証「りぼんメンバーズカード(りぼん 1997年11月号)」にも、大人が持つ会員証のように顔写真欄があり、「ここにあなたのプリクラをはってね」と書かれています。少女たちにとって“プリクラ”シールは、もはや大人の証明写真と同等なのです。

 “プリクラ”のブームは、実は1997~1999年ごろのわずか2年ほどで、少女向けのふろくもこの時期に集中しています。2000年に、持ち歩ける“プリクラ”ともいえるカメラ付き携帯電話が発売されたことで人気は一時低迷しますが、21世紀を迎え高画質で画像の加工技術が進化した機種が登場すると再び脚光を浴び、美白やデカ目効果、全身撮影などが話題になりました。2004年に10代前半の少女たちを対象に行った調査によると、お小遣いの使い道のトップが「プリクラを撮りに行く」だそう。21世紀になっても“プリクラ”シールを使うふろくは登場しています。時代が進み、パソコンやスマホ、デジカメが少女たちの持ち物になっても、放課後のコミュニケーションをデジタル化した“プリクラ”は、一時のブームで終わらず少女たちの生活にすっかり溶け込みました。

 また、“プリクラ”は少女たちだけでなく、OLや主婦、男性、中高年の間でも気軽に利用されて私たちの生活の一部となっています。少子化の影響もあり、幅広い年齢層を取り込む動きが今後進んでいくとのこと。子どもや孫との三世代利用も多くなり、大人と子どもが同じレベルで楽しめる、世代間のコミュニケーションツールとしても大切な役割を果たしていくことでしょう。 

〈参考文献〉
『写真のなかの「わたし」 ポートレイトの歴史を読む』鳥原学 著 筑摩書房 2016年
『国産はじめて物語 世界に挑戦した日本製品の誕生秘話』レトロ商品研究所 編 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 2003年
『別冊歴史読本 懐かしの昭和・平成流行事典 2001-1945』 新人物往来社 2002年
『週刊日録20世紀 1997年』講談社 1999年
「生活調べ隊 プリクラ20年 幅広い年代に」読売新聞 2015年11月10日朝刊
「それが時代のキーワードだ」モノ・マガジン No.563 2007年6月16日号
「データ透視図*小遣いの使い道」読売新聞 2004年9月21日夕刊
「87~99年ヒット商品グランドチャンピオン」日経トレンディ 1999年12月号
「'96 Best Sellers 30」日経トレンディ 1996年12月号

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