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2018年2月の1件の記事

2018年2月17日 (土)

ふろくの花園 57.祝・平昌オリンピック金銀メダル! スケートふろく

 4年に一度行われるスポーツのビッグイベント、冬季オリンピック平昌大会がついに開幕しました。連日熱戦が繰り広げられ、日本人のメダルラッシュで盛り上がりを見せています。そこで今回は、男子シングルでワンツーフィニッシュという快挙を成し遂げた、冬季オリンピックの華・フィギュアスケートを取り上げたふろくを紹介します。

 日本では江戸時代からスケートに似た氷滑りという遊びが行われていて、東北や北陸では下駄の底に割り竹を取り付けたスケートが流行したそうです。1877(明治10)年に、北海道の札幌農学校(現在の北海道大学)の先生としてやってきたアメリカ人のブルックスが、持参したスケート靴で滑ったことで西洋的なスケートが伝えられました。その後、新渡戸稲造がアメリカ製スケート靴を元にした下駄スケートを開発して日本中に広まったり、長野県の諏訪湖には全国から愛好者が集まるなどスケート熱は年々高まり、明治時代の終わりごろには冬の代表的なスポーツとなりました。
 フィギュアスケートは、明治時代の終わりから大正時代の初めにかけて研究され、1922(大正11)年に初めての競技会が行われます。冬季オリンピックは1932(昭和7)年のレークプラシッド大会に日本選手が初出場し、1936(昭和11)年のガルミッシュ・パルテンキルヘン大会の稲田悦子さんが女子選手としての初出場でした。

 こうして、冬スポーツの定番となったスケートは子どもたちにも人気となり、昭和30年代の『なかよし』にもスケートにちなんだふろくが登場します。

 「スケートぐつブローチ(1959年2月号)」はピンク色のスケート靴をデザインしたブローチ。スケートを楽しむ少女たちにとって、自分のスケート靴を肩から下げてリンクに行くことは憧れの一つでした。「これからのおしゃれにぜひほしいピンク色のすてきなスケートぐつブローチが、あなたのものになります」というコピーからは、憧れのマイ・シューズ気分をこのふろくで少しでも味わってもらえればという、作り手の思いが伝わってくるようです。
 「世界のスケート切手シール(1964年1月号)」は、外国の切手風デザインのシール。次号予告の画像では、フィギュアスケートのペアと男女シングルのイラストが計6枚描かれています。昭和30~40年代にかけて子どもたちの間で起こった、世界の切手ブームを反映したふろくともいえるでしょう。

 雑誌生まれのスター作家たちが活躍する昭和50年代以降は、冬の号のふろく、特にカレンダーやポストカードといったイラストの美しさ・細やかさを全面に押し出せるものに、スケートシーンが描かれました。当時の少女たちにとって、スケートが冬の身近なレジャーになっていたことを感じ取れますね。

 写真①「なかよし1980ジャンボポスターカレンダー(なかよし 1980年1月号)」
 写真②「A子・秀子のビッグ・ポスター(りぼん 1978年1月号)」
 写真③「マリアン・ポストカード(りぼん 1979年1月号)」
 写真④「のえる&まりあ ウインター・ポーチ(りぼん 1998年12月号)」

 そして、フィギュアスケートを題材にした漫画も登場します。昭和30年代に全盛だったバレエ漫画の特徴である華やかな衣装・美しい動きとポーズに、演技に点数と順位がつく・ライバルとの勝負・勝利への努力・必殺技といったスポ根の要素を加え、さらにはパートナーとのLOVE要素も盛り込んで、少女向けスポーツ漫画の一ジャンルとして確立していきました。

 ここからは、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』『ひとみ』に登場したフィギュアスケート漫画のふろくを紹介します。

 まずは、バレエ漫画全盛期の昭和35年に『なかよし』で連載された「別冊 小リスちゃん/中島利行(なかよし 1960年9月号~1962年3月号)」です。

 小リスちゃんこと上原ミワが東京に移り住み、お世話になっている家のおねえさん(元オリンピック選手)からフィギュアスケートを教わります。選手権大会に出るために練習にはげみテストで級を取ったり、アイスショーに飛び入りで出演したり、離れて暮らすお母さんを助けるためにアメリカのアイスショーに入ってしまったりという物語で、スポーツ漫画というよりは、“ミワちゃんはお母さんと幸せに暮らせるでしょうか”という母子もの色が強い作品のようです。「3.別冊がいっぱい」でも書きましたが、本誌の続きを別冊ふろくで楽しむスタイルだったため通しで読むことはできず、結末はどうなったのかがわかりませんでした。機会があれば最後まで読んでみたいです。
 主人公の名前「上原ミワ」は、1960年のスコーバレーオリンピックとバンクーバー世界選手権に出場した日本のトップ選手、福原美和さんと上野純子さんからとったのではないかと思われます。福原美和さんは1964年のインスブルックオリンピックで5位入賞を果たしました。上野純子さんは本誌のグラビアページにも登場しており、当時からフィギュアスケートが少女たちの注目を集めるスポーツだったことがわかります。

 『りぼん』『ちゃお』にもフィギュアスケート漫画の別冊ふろくが登場しました。

 写真①「別冊 クリスタル前奏曲〈プレリュード〉/森本里菜(りぼん 1997年2月号)」
 写真②「…そして3年/島貴子(ちゃお 1985年2月号 別冊 MY LOVE COMICS〈マイ ラブ コミックス〉より)」

 日本人選手が世界の舞台で次々と活躍しはじめると、スケートは自分でするだけでなく、“観る”スポーツにもなっていきます。『なかよし』『りぼん』『ちゃお』『ひとみ』の各誌でもフィギュアスケート漫画の連載が始まり、少女たちの人気を集めました。それに伴ってこれらのキャラクターが描かれたふろくも登場します。ただ残念なことに、スケート靴をはいていないイラストがほとんどでした。スタンプ、ティッシュ、ミニ占いカード、お年玉袋といった細々としたグッズには、全身を入れるのが難しかったのでしょう。その分、カレンダーや下じき、ポストカードなど、イラストを思う存分見せられるふろくでは、華麗なスケートシーンが描かれました。

 1977年に東京での世界選手権で佐野稔さんが銅メダル、1979年にウィーンでの世界選手権で渡部絵美さんが銅メダルと、日本人が初めて世界の表彰台に立った頃に連載された漫画が「虹色のトレース/田中雅子(ひとみ 1978年9月号~)」です。
 フィギュアスケートに憧れる少女・流音〈るね〉が、父親と離れながらも先輩の水城や友人に支えられ、持ち前のジャンプ力を武器にコーチやライバルと共に世界をめざしていく物語です。「17.新規参入-『ひとみ』の場合(後)」でも書きましたが、初心者が一からスケートを始めて選手になっていく過程がわかりやすく描かれています。私は当時小学校の低学年でしたが、この漫画がきっかけでフィギュアスケートに興味を持つようになりました。

 写真②「イラスト・ライティングシート(ひとみ 1979年11月号)」
 写真③「ひとみキャラクター あこがれシール(ひとみ 1979年11月号)」
 写真④「ひとみキャラクター★シール(ひとみ 1980年11月号)」

 渡部絵美さんが1980年のレークプラシッドオリンピックでのメダル獲得に向けて、日本中の期待と注目を集めていたころに連載されたのが「Mickey ミッキー/小椋冬美(りぼん 1980年2月号~)」です。
 フィギュアのチャンピオン・ミッキーは陽気で飾り気のないキャラクターで学園のアイドル的存在。男と恋には無関心と思われていた彼女にプレイボーイのグレイが急接近。さらには幼いころを知る謎の妖精シンシアも現れて…… スポ根ではなくスケートをやっている女の子のファンタスティックラブロマンで、フィギュアスケートの漫画への取り入れ方も、トキメキを忘れない『りぼん』らしさを感じる作品です。
 写真①「りぼんギャラリー・12(りぼん 1980年7月号)より」を透明下じきに入れて、学校に持って行ったことを思い出しました。

 日本のフィギュアスケート人気を盛り上げたのは、なんといっても伊藤みどりさんの活躍でしょう。天才的なジャンプ力で跳ぶトリプルアクセルを武器として、女子フィギュアを芸術からスポーツに大きく転換させました。1989年にパリでの世界選手権で日本人初優勝、1992年のアルベールビルオリンピックでは銀メダルで日本人初のオリンピックメダルに輝くなど、日本中にセンセーションを巻き起こします。その流れに乗るかのように、1994年のリレハンメルオリンピックで5位入賞した佐藤有香さんが、翌月行われた千葉・幕張での世界選手権で日本人2人目の世界チャンピオンになりました。

 その頃の『なかよし』と『ちゃお』で、フィギュアスケート漫画の連載が始まります。

 「THE チェリー・プロジェクト/武内直子(なかよし 1990年10月号~)」
 元オリンピック選手を父に持つスケート大好き少女・飛鳥ちえりの前に突然現れた元ジュニアチャンピオン・続正紀と2人の男子。学園祭でのスケートショーを成功させるために“チェリー・プロジェクト”を組むことになるが、そのプロジェクトの真の目的は、ちえりを続のペアスケーティングのパートナーに育て上げ、世界の舞台に立たせることだった。おなじみ「セーラームーン」の作者が描くスケートロマンで絵柄は華やか。ちえりと続のペアの行方のほか、ライバルとの対決、自分の欠点と向き合う努力、さらには必殺技とスポ根要素も盛り込んだ少女向けらしいスケート漫画です。

 写真①「ドリーム下じき(なかよし 1991年4月号)」
 写真②「なかよしオールスター 1991フラワードリームカレンダー(なかよし 1991年1月号)」
 写真③「チェリー キラキラギフトパック(なかよし 1991年5月号)」

 「ワン・モア・ジャンプ/赤石路代(ちゃお 1992年9月号~)」
 ペアで世界選手権の銀メダルをとった両親を持つ七瀬帝〈みかど〉。父親と双子の弟・皇〈こう〉を相次いで事故で亡くし母親はショックを受け入院、ひとりぼっちになった帝の前に、ロシアから母親の違う兄・トーマが現れます。トーマのコーチで帝は両親と皇の夢を継ぎ、フィギュアスケートの金メダルをめざすことに。低学年の少女向けですが本格的なスケート漫画で、当時の海外トップスケーターをモデルにしたと思われるライバルキャラも見どころの一つでした。

 写真①「1995CIAOカレンダー(ちゃお 1995年1月号)」
 写真②「ウインターポストカード(ちゃお 1992年12月号 ちゃおスペシャルカードBOOK より)」
 写真③「ハロウィンごあいさつカード(ちゃお 1994年11月号)」
 写真④「CIAO DESK CALENDAR 1994(ちゃお 1994年1月号)」
 写真⑤「帝ちゃん わくわく金メダルカセットレーベル(ちゃお 1993年11月号)」

 1998年の長野オリンピックを経て21世紀を迎えると、2004年にドルトムントでの世界選手権で優勝した荒川静香さんが、2006年のトリノオリンピックでは日本人初のオリンピック金メダルに輝いたり、2008年にヨーテボリでの世界選手権で優勝した浅田真央さんが2010年のバンクーバーオリンピックで銀メダルを獲得し、その後2度も世界チャンピオンになったり、2007年の東京と2011年のモスクワでの世界選手権で安藤美姫さんが優勝するなど、日本の女子フィギュアスケート界からは世界の頂点を狙える選手が続々登場し、世界屈指のフィギュア大国になります。
 が、それと相反するように『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のスケートふろくはすっかり影をひそめてしまいました。フィギュアスケート漫画自体はいくつか掲載されていたのですが、読みきりだったり短期連載だったりで、ふろくになるほどのインパクトを少女たちに与えることはできなかったようです。スポーツ漫画自体、現在の『なかよし』『りぼん』『ちゃお』ではほとんど見られなくなりましたが、お姉さん世代やお母さん世代を対象にした漫画雑誌にはフィギュアスケート漫画がたびたび連載されています。年少読者には細かいルールをわかりやすく説明する必要があったり、努力・友情・勝利・必殺技のスポーツドラマ的展開が、今の少女たちには共感を得にくいのかもしれません。

 その一方で近年は、2010年のバンクーバーオリンピックで高橋大輔さんが銅メダルとなり日本人男子初のオリンピックメダルを獲得、翌月のトリノで行われた世界選手権で日本人男子初の世界チャンピオンになったり、2014年のソチオリンピックで羽生結弦選手が日本人男子初のオリンピック金メダルに輝いたことから、男子フィギュアの方に注目が集まってきたようで、男子選手が主人公のフィギュアスケート漫画が少年誌や青年誌に登場しています。
 そしてまさに今日、ちょうどこれを書いている途中で、羽生結弦選手の66年ぶりオリンピック連覇と宇野昌磨選手の銀メダルという歴史的快挙のニュースが飛び込んできました。これでまた男子フィギュアスケート人気が一段と高まることでしょう。ちなみに66年前にオリンピックを連覇した選手は、1948年サンモリッツ大会と1952年オスロ大会の男子シングル、アメリカのリチャード(ディック)・バットンさんだそうです。

 現在の日本女子フィギュアスケートは新世代の有望な選手たちが次々と育っており、タレント性のある選手がすでにメディアの注目を浴びています。
 きれいな衣装で美しい技を競い合うファッショナブルなスポーツであるフィギュアスケートは、ファッション性に重点をおいている現在の『なかよし』『りぼん』『ちゃお』とも親和性があるのではないでしょうか。フィギュアスケートの漫画やスケートモチーフのファッションアイテムなどのふろくが、そろそろまた登場しないかなと思っています。

 平昌オリンピックのフィギュアスケート競技は、アイスダンスと女子シングルを残すのみとなりました。選手のみなさんがベストを尽くした演技が、一つでも多く見られますように。

〈参考文献〉
『NHK美の壺 切手』NHK「美の壺」制作班 編 日本放送出版協会 2009年
『まるごとわかる「モノ」のはじまり百科 5.遊び・スポーツ』山口昌男 監修 日本図書センター 2004年
『フィギュアスケートへの招待』ダンスマガジン 編 新書館 2004年
『スケート教室 フィギュア・スピード・アイスホッケー』滝沢甲子彦 著 成美堂出版 1994年
『小学館入門百科シリーズ スケート入門』三野勉 著 小学館 1978年
『小学館入門百科シリーズ スキー・スケート入門』今野和明ほか 監修 小学館 1975年
『五輪で振り返る日本フィギュアスケート史』読売新聞 2018年1月1日朝刊第4部
『平成時代 写真で見る冬季五輪・パラリンピック』読売新聞 2018年1月28日朝刊

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