ふろくの花園 55.少女とふろくの歳時記 みんなでメリー・クリスマス♪
クリスマスのふろくには、お部屋に飾るツリーやリースといった、クリスマス独自のアイテムだけでなく、みんなでクリスマスを楽しむためのものも登場しています。
ここからは、友だちや家族などとのコミュニケーションツールとしてのクリスマスふろくを紹介していきましょう。
まずは、年賀状(29.少女とふろくの歳時記 お正月(後) 参照)や暑中見舞い(45.少女とふろくの歳時記 暑中お見舞い申し上げます)と同じく、季節の挨拶に使うクリスマスカードです。1955(昭和30)年の『なかよし』『りぼん』創刊当初から年代を問わず登場してきた、クリスマスふろくの大定番ともいえるでしょう。先生方の美しいイラストやかわいいキャラクターが描かれたカードは、どれもクリスマスムード満点で、まさに少女漫画誌の本領発揮。1980年代に入ると、イラストだけでなく遊びごころもプラスされ、友だちに贈っても、自分の部屋に飾っても楽しめるふろくになっています。
「ジグソーパズル・クリスマスカード(りぼん 1980年12月号)」や「スウのクリスマスジグソーカード(なかよし 1984年12月号)」、「ちびまる子ちゃん
カード・パズル(りぼん 1990年12月号)」は、ジグソーパズルとしても遊べます。
「魔法のほうき&クリスマスカード(なかよし 1986年12月号)」は願いがかなう“魔法のほうき”がついているカード。恋の願いをかけて憧れのカレに送れば、恋が実ることまちがいなし!
「光るツリーのクリスマスカード(なかよし 1990年12月号)」は、ツリーの星が暗闇で光ります。
「パラダイス・カフェ 香りのクリスマスケーキカード(なかよし 1991年12月号)」は、いちごの香りがついたスペシャルカード。
「怪盗セイント・テール 絵がわりクリスマスカード(なかよし 1995年12月号)」は、カードを開くとイラストが早変わり!
の仕掛けカードです。
友だちとのプレゼント交換も、クリスマスの楽しみのひとつですね。プレゼントのラッピングに使いたくなるクリスマス用グッズも続々登場しています。
「りぼんアイドル6人+くまちゃん
クリスマスラッピングペーパー(りぼん 1995年12月号)」は、とってもかわいいラッピングペーパーがなんと6種類! このペーパーでできるラッピングのやり方もついているから、すぐに使えて便利です。
「ミルクちゃん クリア・ラッピングペーパー(りぼん 1996年12月号)」は、中のものが透けて見えるオシャレなラッピングペーパー。
「メリークリスマスギフトBOX(なかよし 1977年12月号)」や「北〈ペー〉くん
シェイシェイツリーボックス(なかよし 1986年12月号)」、「香澄ちゃん
ツリー・ボックス(りぼん 1986年12月号)」は、クリスマスツリーをデザインしたおしゃれなプチボックスです。
「ハッピーギフトBOX(なかよし 1987年12月号)」はリボンの形がかわいいボックス。
「ミンミン あっとびっくりギフトボックス(なかよし 1990年12月号)」は、フタを開けるとキャラクターがとびだして、もらった人が名前どおり、“あっ!とびっくり”しちゃうギフトです。
「るりちゃん クリスマス・バッグ(ちゃお 1995年12月号)」は、ちょっとしたプレゼントを渡すのにピッタリな手さげ袋。かわいい袋に入れて、ライバルに差をつけちゃおう。
「鈴ちゃん キラキラ・リースバッグ(りぼん 2001年12月号)」は、上品なピンクパールがツヤツヤのバッグ。CDがピッタリ入るサイズです。
「チャチャ きらきらメッセージシール(りぼん 1996年12月号)」は、ピカッと光るメタリック素材のシール。ひとことメッセージを書いてプレゼントにペタンと貼れちゃいます。
カードとプレゼントの用意ができたら、次はクリスマスパーティの準備です。
大人も子どももみんなでできるパーティゲームやクリスマスリースの作り方、クリスマスについての豆知識もわかる「まるちゃん
わくわくクリスマスブック(りぼん 1988年12月号)」や、
ケーキやカナッペなどパーティ用のお料理がバッチリ作れちゃう「未央ちゃん
クリスマスパーティークッキングブック(りぼん 1991年12月号)」、
リースやカード、オーナメントなどのクリスマスアイテムが手作りできたり、プレゼント交換や恋占いまで、女の子だけのクリスマスパーティーガイド「クリスマスパーティーブック(なかよし 1994年12月号)」、
カードやツリーの作り方、ラッピングやクッキングのアイデアがいっぱい! みんなでいっしょにクリスマスを手作りできちゃう「クリスマス★パーフェクトブック(ちゃお 1998年12月号)」、
お料理やクリスマスファッションほか、手作りパーティで盛り上がれるテクが満載の「ワーキング娘。
ゴールドクリスマスブック(なかよし 2000年12月号)」といった、
ハンディサイズの実用別冊ふろくがお役立ちです。
かわいいキャラクターが“ぜったいきてね!”と誘ってくれる「優ちゃん クリスマス招待カード(ちゃお 1993年12月号)」や、チケットを水でぬらすとパーティで行う出し物が浮かび上がってドキドキの「うぇるかむ! おたのしみパーティーチケット(なかよし 1991年12月号)」など、友だちにわたすパーティーの招待状も忘れずに。
「シロちゃん テーブル・ネームスタンド(りぼん 1988年12月号)」に友だちの名前を書いて席に置いたら、準備OK!
全員揃ったら、いよいよクリスマスパーティを始めましょう。
「変装めがね(ちゃお 1988年12月号)」や「斉くん ダンディーアイマスク(りぼん 1997年12月号)」などの仮装グッズをつけると、みんなにバカウケ! いちやく人気者になれちゃいますよ。
ワイワイ遊べるゲームも、パーティには欠かせないアイテムです。クリスマスパーティなので、クリスマスにちなんだゲームをやってみましょう。
「わんころべえ うたってサンタゲーム(なかよし 1988年12月号)」は、同じ絵のカードを4枚そろえる競争。一番最初にそろった人が「あがり!」と叫んで、人数より1個少なく場に置いてあるコマを1個取ります。それに続いて他の人もコマを取り、取れなかった人が負け。負けた人は自分のスコア欄に「う」「た」「っ」「て」「サ」「ン」「タ」と負けるごとに書いていき、「うたってサンタ」が完成してしまったら、みんなの前で歌をうたわないといけません。罰ゲームもセットされて、ハラハラドキドキのゲームです。
「いそいで!サンタさんゲーム(なかよし 1993年12月号)」は、プレーヤーがサンタさんになって、キャラクターの家へプレゼントを届けに行くすごろく形式のゲーム。まずはプレゼント、トナカイ、そりのカードを揃えて、プレゼントカードのウラに描かれたキャラクターの家にプレゼントを置きに行きます。プレゼントを全部配り終わったサンタさんが勝ち! 『なかよし』の人気漫画キャラクターが総出演のゲームで、どのキャラクターにプレゼントを届けに行けるかも楽しみのひとつです。
「わんころべえ ドキドキパーティーゲーム(なかよし 1996年12月号)」は、クリスマスパーティーにきたカップルがパーティー会場を一周して、早くテーブルにもどったら勝ちという設定。1人で2個のコマを持ってサイコロで1個ずつ進めていき、2個のコマが両方ともゲーム盤を1周したらゴールです。他の人が同じマスに止まったら、もう1個のコマがそのマスを通過するまで進めなくなってしまうため、それぞれのコマをいかにうまく使い分けて進めていくかがコツ。場合によってはコマが2個ともストップしてしまうこともあり、順番が回ってきたときにサイコロの1の目を出すまでひたすらガマンし続けないといけない、なかなかハードなゲームです。
くじ引き感覚で、クリスマスにちなんだ占いをやってみるのはいかかですか?
「クリムちゃん めざせクリスマス占い(りぼん 1990年12月号)」は、好きな銀色の絵をコインでこすって出たキャラクターで今日の運勢を占います。
「B-ウォンテッド ドキドキ・くつした占い(なかよし 2001年12月号)」は、家の窓をえんぴつでぬりつぶし、出てきた靴下の模様でクリスマスの運勢がわかります。
どちらも本来は、クリスマスまでのカウントダウンとして1人で1日1回行う占いなのですが、あえてみんなで運試しというのもパーティならではの楽しみ方です。
パーティの最後に、おなじみのクリスマスソングをみんなで歌いましょう。
「歌の別冊 クリスマスソング集(りぼん 1967年12月号)」は、「ジングルベル」や「もろ人こぞりて」など全部で8曲のクリスマスソングが入った歌集。反対側には当時人気の歌が入った「りぼん紅白歌合戦」もついていて、クリスマスから年末年始まで楽しめる一冊です。
「クリスマスソングレコード(りぼん 1969年12月号)」は、「きよしこの夜」と「神のみ子」の2曲が入ったソノシート。お店で売っているレコードのようなステキなジャケットに入っています。美しい歌声に合わせて歌うと、クリスマスムードも盛り上がります。
「とびだす! クリスマス・ソングブック(りぼん 1998年12月号)」は、立体絵本形式のとびだすクリスマスソングブック。『りぼん』の人気キャラクターと一緒に、「ジングルベル」「あわてんぼうのサンタクロース」「おめでとうクリスマス」「きよしこのよる」の4曲を歌えますよ。
友だちや家族と一緒のにぎやかなクリスマスもいいけれど、本当は、大好きなカレと胸キュンなクリスマスを過ごせるようになりたいな……
こんな秘かな野望を胸に抱く少女たちのために、クリスマスに向けた“恋する乙女”の願掛けふろくも届けられています。
「クリスマス 占い・おまじないカード(ちゃお 1989年12月号)」は、カードに願いごとや欲しいプレゼントを書いて、ツリーにつるすとラッキーが訪れるカードと、好きな子の名前を書いてクリスマスの前々日まで身につけていると、恋が実ってクリスマスを一緒にすごせるというお守りカードがセットになっています。
「ワイルドだもん クリスマス直前!
おまじないBOOK(なかよし 2003年12月号)」は、大好きなカレとハッピークリスマスを迎えるためのキレイになるおまじない、大好きなカレにプレゼントを渡すとき助けてくれるおまじないなど、全部で6つの恋に効くおまじないを紹介。これで恋のチャンスをつかみましょう。めざせ両思い!
1人でこっそりやっても、友だちとヒミツの集会を開いて恋バナしながら試しても、願いがかなえられるといいですね。
このように、少女たちのクリスマスが楽しく思い出深いものになるよう、長い間全力でバックアップしてきたクリスマスふろくですが、新世紀を迎えて10年以上が過ぎた現在、様子が大きく変わってしまいました。
「小川とゆかいな斎藤たち メリクリ!サンタのプレゼント占い☆(なかよし 2007年12月号)」や「飛び出す★ハッピークリスマスカード(りぼん 2007年12月号)」、「株式会社ラブコットン クリスマスツリー小物入れ(りぼん 2008年12月号)」の頃を最後に、ふろくの名前に「クリスマス」や「サンタ」などのキーワードが入った、クリスマスアイテムが見当たらなくなっています。少女漫画誌における最大のシーズンイベントといわんばかりの勢いだったクリスマスもついに、「お正月」(29.少女とふろくの歳時記 お正月(前) 参照)や「ひなまつり」(33.少女とふろくの歳時記 ひな祭り 参照)、「母の日」(39.少女とふろくの歳時記 お母さん、ありがとう 参照)などの他の年中行事と同様、ふろくから姿を消してしまったのです。
1月の「お正月」から12月の「クリスマス」まで、少女たちが1年12か月に出会う、様々な季節の行事や習慣を取り上げたふろくをこれまで紹介してきましたが、今まであまり意識してこなかった、それぞれの行事の由来もふろくを通じて知ることができました。
これら「歳時記ふろく」の全般的な傾向として、『なかよし』『りぼん』に教育的な役割があり、まだ漫画雑誌になっていなかった1960年代までと、人気漫画が花盛りでふろくが登場人物のキャラクターグッズとなっていた1990年代に多く取り上げられています。その間にあたる時期は、雑誌生まれのスターである「マスコットキャラクター」(18.雑誌が生んだ人気者 (1)マスコットキャラクター 参照)や「まんが家」の先生方(19.雑誌が生んだ人気者 (2)憧れの先生・まんが家 参照)、「漫画作品と登場人物」(20.雑誌が生んだ人気者 (3)連載漫画のTVアニメ化 参照)が輝きを見せていたにもかかわらず、実はあまり目立って取り上げられていません。
1980年前後は、サンリオなどの市販のキャラクターグッズが少女たちの間に爆発的に普及した時期でもあり、ふろくに年中行事を忠実に取り入れるよりも、雑誌生まれのスターたちを推しながら、文房具やインテリア小物などの実用品を紙でどれだけ再現できるかに重点を置くことで、少女たちのニーズに応えていたのです。
1980年代の終わりごろから1990年代にかけては、発行部数が大きく伸びてひと月あたりのふろくの数も多くなったことで、実用品の中に年中行事を取り入れる余裕が出てきました。メインふろくも完成品だけではなく、紙のパーツを自分で型から抜いて組み立てる形式が増えていきます。メインふろくのパーツ以外に細々としたサブふろくも同じ型に組み込めたため、毎月のように季節感のあるふろくを付けることができたのです。
そして、新世紀を迎えて「歳時記ふろく」が姿を消したのは、“ホンモノ”ふろく(23.新世紀のふろくの花園 (1)ホンモノがふろくに!? 参照)の登場で紙のふろくが少なくなったことや、発行部数の激減といった要因がありますが、なんといっても、読者である少女たちが漫画よりもファッションのほうに関心を持ってしまい(25.新世紀のふろくの花園 (3)オシャレが大好き! 参照)、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のライバルがお互いではなく、少女向けのファッション誌になってしまったことが大きいのではないでしょうか。
少女たちの“好きなもの・欲しいもの”を60年間ずっと詰め込み続けてきた少女漫画誌ふろくが2010年代の今、少女たちに届けたいものは、ファッション誌のふろくに負けないオシャレでインパクトを与える雑貨であり、そこに伝統、風習といったものや、さらには雑誌生まれのスターでさえもあまり必要がなくなってしまいました。生活に密着した日本の四季・伝統・行事を少女たちに伝えるという、ふろくの大切な役割が失われてしまうことも、時代の自然な流れといえるのかもしれません。
小学生なら誰もが通ってきた道だった『小学○年生』も、2017年からは1年生向けを残すのみとなってしまいました。多くのモノや情報に囲まれて育っている、現代の子どもたちの興味・嗜好は早い年代から細分化し、また同じ学年でも知識量の個人差が開いてきたと思われるため、学年ごとの総合情報誌は難しい時代になったのではないでしょうか。
雑誌を読んだりふろくで遊ぶだけで、自分が今まで知らなかった世界を目にし、興味の幅を広げることができるような、かつての『なかよし』『りぼん』が持っていた、娯楽や生活情報だけではない様々な分野の雑学・教養・一般常識を少女たちに伝えるという役割が、少女漫画誌やそのふろくに今後また戻ってくるかどうかは、少女たちと少女漫画誌を取り巻く環境次第でしょう。
みんなで楽しんだクリスマスが終わると、翌日の26日にはもう、街はクリスマスなどなかったかのように一瞬にして和の雰囲気に包まれ、お正月を迎える準備で人々がせわしなく動き回ります。この手のひらを返すような変わり身の早さもまた、日本の12月ならではの風景です。
いろいろなことがあった1年の終わりと、新たな1年の始まりが、もうすぐそこまで来ています。どうぞみなさま、良いお年をお迎えくださいませ。
さて、当『少女漫画 ふろくの花園』は冬の間、休園させていただきます。春の花咲くころに、またお会いしましょう。
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