ふろくの花園 54.少女とふろくの歳時記 クリスマスがやってくる☆
12月を迎えると、早いもので今年もあとひと月です。いよいよ一大イベント「クリスマス」の季節がやってきました。街中が大きなクリスマスツリーやイルミネーションで彩られると、寒さ厳しい夜にもかかわらずウキウキした気分になって、つい遅くまで出歩きたくなってしまいます。
12月25日の「クリスマス」とは、「キリスト(救世主)のミサ(礼拝の儀式)」という意味で、キリスト教を開いたイエス・キリストの誕生を祝う日として知られています。キリストの誕生といえば、ベツレヘム(現在のイスラエル)の馬小屋で3人の博士と羊飼い、動物に囲まれた場面が思い浮かびますが、実のところ、キリストの誕生日がいつなのかは、まだはっきりわかっていません。
この日が「クリスマス」と決められたのは、4世紀の中ごろにニカイア(現在のトルコ)で行われたキリスト教の総会議でした。古いヨーロッパの暦で1年でもっとも昼が短い冬至に当たり、「日が再び長くなり、太陽の力がよみがえることを祝う日」であることが、世界に光をもたらす救世主・キリストの誕生日にふさわしいとされたようです。さらに、12月17日に古代ローマで行われていた、プレゼントを贈ったり交換したりする農業の神様のお祭りや、いろいろな祭日などがまざって「クリスマス」ができたと考えられています。その後19世紀の中ごろから、クリスマスツリーを飾り家族でごちそうを食べて祝うという形になっていきました。
西洋で始まった「クリスマス」が日本に伝わったのは、16世紀ごろといわれています。布教のために来日した外国人宣教師が日本で初めてクリスマスのミサを行い、明治時代には来日していた外国人やキリスト教徒の日本人によってミサやパーティが行われます。大型商店やホテルもツリーを飾り、パーティを開きました。
当時の新聞記事を要約してみると、1875(明治8)年の読売新聞に「築地の女学校で行われたクリスマスイベントに大勢の人が集まり、立派な飾りや音楽の演奏でにぎやかだった」や、1881(明治14)年の毎日新聞に「横浜本町通の天主堂は大繁盛で、“キリスト教信者以外の参堂はできません”という札が掲げられるほどだった」、1883(明治16)年の朝日新聞に「クリスマス休暇中の神戸居留地は、門にクリスマスの飾りがされていて、まるで日本のお正月のようだ」など、すでに日本の都市部でクリスマスの行事が行われていたことがわかります。
その後大正時代に入って一部の家庭でも祝うようになり、第二次世界大戦後にはアメリカの影響を受けて日本中に広まります。昭和30年代になると、家庭でもクリスマスケーキを食べたり、プレゼントをもらったりする習慣が定着しました。現在ではハロウィン(50.少女とふろくの歳時記 私たちのハッピー・ハロウィン♪ 参照)同様、もともとの宗教的な意味とは関係のない「日本風クリスマス」として、私たちの生活にすっかりなじんだ年中行事となっています。
現在の日本ではどちらかというと、前日の12月24日のほうがクリスマス色が強い感じがしますが、キリスト教では太陽が沈んだときを新しい一日の始まりとしていたため、クリスマス当日の始まりとなる12月24日の夜を「クリスマス・イブ」として、お祝いを始めたということからきているようです。
1955(昭和30)年に創刊した『なかよし』と『りぼん』。ちょうどこの頃からクリスマスのいろいろな習慣が日本の子どもたちに浸透してきたこともあり、創刊当初から「クリスマス・カード(りぼん 1955年12月号)」「クリスマス・セット(なかよし、りぼん 1956年12月号)」「クリスマス・シール集(なかよし 1957年12月号)」などのクリスマスにちなんだふろくが少女たちに届けられています。その後も、12月号のふろくは「クリスマス」のためにあるといわんばかりの勢いで、少女漫画誌界において最大のシーズンイベントとなりました。
例をあげると、
『なかよし』1965年12月号ふろく ・クリスマスおかざりセット |
『りぼん』1967年12月号ふろく ・赤いブーツのセンターピース |
このように、別冊まんが以外のふろくが全てクリスマスという年もあったほどです。実際、この『少女とふろくの歳時記』を書くにあたり、所蔵しているふろくの中から年中行事のモノを探してみた際にも、クリスマス関連のふろくが他に比べて圧倒的な数量でした。
さて前置きが長くなりましたが、今回は、そんな「クリスマス」ならではのアイテムを取り上げたふろくを紹介します。
まずは、クリスマスのシンボルともいえるクリスマスツリーです。モミの木に華やかな飾りをつけるクリスマスツリーは、11世紀ごろのドイツ北西部がはじまりといわれています。冬でも常に新しい緑色の葉をつける常緑樹を使うことで、強い生命力や永遠の命を表しています。
暗い所でツリーの星が光る「久太郎
ピカピカツリーカード(りぼん 1987年12月号)」や、
アクセサリーがかけられる「ドリーミングクリスマスツリー(なかよし 1988年12月号)」「GALS!
ジュエリー★ツリーBOX(りぼん 2000年12月号)」、
小物やお菓子が入れられる「シンデレラツリートレイ(なかよし 1989年12月号)」、
銀はがしで占いができる「青子ちゃん
ごきげん銀はがしカレンダーツリー(りぼん 1995年12月号)」「くるみちゃん
銀はがしクリスマス占い(りぼん 1997年12月号)」、
ツリーを開くと中からキャラクターが出てくる「東京ミュウミュウ
クリスマスツリーカード(なかよし 2001年12月号)」など、
ただ飾るだけではなく、いろいろなアイデアがプラスされた組み立て式クリスマスツリーが登場しました。
ツリーの下の穴から上の穴へ進んでてっぺんの星にたどりつく立体すごろく「姫ちゃん
クリスマスツリーすごろく(りぼん 1991年12月号)」や、「りえちゃん
クリスマス・ツリーゲーム(りぼん 1994年12月号)」といった、みんなでゲームを楽しめるクリスマスツリーも。
「ぷくぷく天然かいらんばん 山田さんのぷっくりすますツリー(ちゃお 2000年12月号)」は、キャラクター型のバルーンに空気を入れて土台にセットすると、かわいいキャラクターのクリスマスツリーができあがります。
クリスマスツリーには、古くはろうそくを飾っていましたが、現在では様々な飾りや電球などをつけるのが一般的です。
ツリーのてっぺんに飾る「星」はキリストが生まれたときに空に輝いていたとされる「ベツレヘムの星」を表していたり、「ろうそく」は世の中を照らす明かりであるキリストを表していたり、「りんご」はアダムとイブの伝説に出てくるリンゴや聖書に出てくるエデンの園を表していたり、「ベル」は「教会」を表していたりと、その飾りにもそれぞれ意味があるそうです。
これらの伝統的な飾りにプラスして、「ミモリちゃん ツリーかざりメッセージセット(りぼん 1996年12月号)」や「B-ウォンテッド オーナメントメッセージボックス(なかよし 1999年12月号)」、「みるくSHAKE! オーナメントボックス(なかよし 2001年12月号)」、「ふぉうちゅんドッグす わんわんクリスマスハウスBOX&マスコットオーナメント(なかよし 2002年12月号)」などの、メッセージカードやプレゼントBOXにもなる、ふろくのオーナメントでツリーをかわいく彩りましょう。
「あさり&プニプニ おもしろツリーオーナメント(ちゃお 1993年12月号)」や「桃花ちゃん おねだりカード(りぼん 2001年12月号)」は、サンタさんへのお願いごとをウラにこっそり書くことができます。クリスマスツリーがもはや七夕(44.少女とふろくの歳時記 七夕☆星に願いを 参照)の笹飾りのようになってしまっていますが、少女たちの願いごとは季節を問いません。
にぎやかな飾りつけをすると、モミの木に住んでいる小人が喜んで、幸せをもたらしてくれるという言い伝えもあるそうです。みんなの願いが届くといいですね。
玄関などに飾るクリスマスリースも、すっかりおなじみになりました。
モミの木やヒイラギなどを輪にして木の実や花などを付けるクリスマスリースは、キリストが十字架にかけられたときにかぶっていた冠にちなんでいたり、神の永遠の愛を示したり、その力による魔よけを表す古代信仰のなごりなど、様々な由来があります。
「きんぎょ注意報!
クリスマススターリース(なかよし 1992年12月号)」と「怪盗セイント・テール
ふわふわクリスマスリース(なかよし 1996年12月号)」は、どちらも空気を入れてふくらませる画期的なクリスマスリース。両面テープで好きな場所にくっつけて飾れるので、お部屋のクリスマス気分がかわいく盛り上がりますよ。
「のえる&まりあ メッセージリース(りぼん 1999年12月号)」は、クリスマスリースとメッセージボードがひとつになったリースです。お部屋のドアにかけると、クリスマスの雰囲気になるだけでなく、プライバシーもばっちりキープします。
少女たちにとってのクリスマスのお楽しみといえば、なんといっても12月24日の夜、寝ている間にプレゼントを枕元の靴下に入れてくれるサンタクロースでしょう。
サンタクロースは、4世紀初めに現在のトルコでキリスト教の司教だった、セント・ニコラウスがモデルといわれています。多くの貧しい人に救いの手をさしのべていたニコラウスは、結婚を控えた姉妹の家の煙突に金貨を投げ込んだところ、たまたま暖炉に干していた靴下に入りました。ここからサンタクロースのプレゼントをもらうために靴下をツリーにつるす風習が始まったそうです。また、クリスマスツリーに飾る「玉」には、ニコラウスが人々に配ったプレゼントや投げた金貨という意味もあるとのこと。
サンタクロースは、赤い服と白いひげ、トナカイが引くソリに乗ってやってくるというイメージですが、19世紀ごろから絵本などにこの姿が描かれるようになり定着していきました。その特徴的な服装は、司祭の服が元になっているとされていますが、コカコーラのポスターに描かれた赤い服が広まったという説もあります。トナカイはヒゲの老人が白馬やシカに乗ってくるというヨーロッパの伝説、ソリは北欧神話の神様が冬に空を飛んでやってくるという伝説に、それぞれ由来しているそうです。
クリスマスには、キャラクターがかわいいサンタクロースに扮して、少女たちにふろくのプレゼントを届けてくれています。
「姫ちゃん サンタカード&サンタ袋(りぼん 1990年12月号)」は、袋の中にプレゼントを入れ、袋の端をサンタカードの手の部分に開いている穴に通すと、まるでキャラクターのサンタクロースがプレゼントを運んでいるかのよう。
「わんころべえ おねがいサンタブーツ(なかよし 1991年12月号)」は靴下型のプレゼント用袋。サンタクロースへのおねがいカードもついているので、クリスマスプレゼントのおねだりはこれでバッチリです。
「茶美ちゃん・ハッピークリスマスファイル(ちゃお 1993年12月号)」はトナカイのソリに乗ったサンタクロース姿のキャラクターがかわいいファイル。季節を問わずふろくになるファイルも、このイラストでクリスマス用の特別なグッズになります。お友だちからのクリスマスカードを入れちゃいましょう。
「光希ちゃん のびのびサンタカード(りぼん 1994年12月号)」は3人のサンタクロース姿のキャラクターが次々と飛び出してくるクリスマスカードです。
クリスマスのもうひとつのお楽しみは、ごちそうと一緒に食べるクリスマスケーキですね。
1910(明治10)年に「不二家」が日本で初めてクリスマスケーキを発売し、洋菓子普及のきっかけを作りました。スポンジケーキに生クリームやバタークリームをぬり、イチゴとサンタクロース形などの菓子をのせたデコレーションケーキが、日本のクリスマスケーキのスタンダードになっています。砂糖菓子のサンタクロースやウエハースで作られた家、チョコレートのメッセージプレートを誰が食べるかじゃんけんやゲームで決めたことも楽しい思い出です。
「電脳少女★Mink デコレーションケーキトップ(なかよし 1999年12月号)」はクリスマスケーキに飾れるマスコット。このデコレーションでケーキをドレスアップできちゃいますよ。
世界では、ドイツの「シュトーレン」やイタリアの「パネトーネ」など、さまざまな伝統菓子がクリスマスの食卓を飾ります。
日本でも人気で見た目にも楽しいお菓子が、木の切り株をかたどったケーキ、フランスの「ブッシュ・ド・ノエル」です。フランスではクリスマス・イブに大きな薪を焼いた習慣があり、その薪をまねて作ったそうです。
「麻衣ちゃん ブッシュ・ド・ノエルボックス(りぼん 2001年12月号)」と「ハッピーアイスクリーム! ブッシュ・ド・ノエルBOX(なかよし 2003年12月号)」は、どちらもこの「ブッシュ・ド・ノエル」をデザインした小物入れ。まるで本物のクリスマスケーキみたいでデコレーションもいっぱいです。机の上に置いて文房具を入れても、パーティのテーブルに置いてお菓子を入れても、ウキウキワクワクなクリスマス気分を味わえちゃいます。
クリスマスならではのアイテムを取り上げたふろくを見ることで、クリスマスをめぐる様々なコト・モノの由来を知ることもできました。
おうちやお部屋をクリスマスのふろくで飾ったら、いよいよみんなでクリスマスを楽しみましょう♪
※行事・風習の由来については諸説あります
〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男
監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 12月のまき』かこさとし
文・絵 小峰書店 2012年
『こども きせつのぎょうじ絵じてん 増補新装版』三省堂編修所
編 三省堂 2009年
『ポプラディア情報館 年中行事』新谷尚紀 監修 ポプラ社 2009年
『21世紀こども百科 もののはじまり館』小学館 2009年
『はじめて知る みんなの行事とくらし』学習研究社 2008年
『まるごとわかる「日本人」はじめて百科 2 食べ物・飲み物をつくった人』湯本豪一
監修 日本図書センター 2008年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア
編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
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