ふろくの花園 52.少女とふろくの歳時記 ○○の秋(前)
にぎやかだったハロウィンも終わり、11月に入ってようやく本格的な秋の到来となりました。
“秋”を表す言葉として、「スポーツの秋」(50.少女とふろくの歳時記 スポーツの秋☆運動会 参照)や「行楽の秋」、「食欲の秋」、「読書の秋」、「芸術の秋」などいろいろなものが挙げられ、なぜ秋にだけこんなに「○○の」があるんだろうとつい思ってしまいます。気温も湿度も下がりさわやかな気候になって、何をするにも快適な時期だからというのはもちろんのこと、私にとっての秋は、暑くてジメジメしてしかも近年は期間も長い、厳しくツラい夏の日々を乗り越えたことへのご褒美でもあり、たくさんのことを楽しもうという気分にさせてくれる、1年で一番大好きな季節です。
今回は、いろいろな「○○の秋」を満喫するために少女たちへ届けられたふろくを紹介しましょう。
秋になると、日本の各地で山野の木々が赤や黄に美しく色づきます。その光景をニュースなどで目にすると、この季節ならではの自然のイベント「紅葉狩り」を楽しむために出かけたくなりますね。あざやかな色に染まったカエデやイチョウを眺めたり、どんぐりやトチの実を探したりと、「山野などに行って遊び楽しむこと(デジタル大辞泉)」という「行楽」にうってつけの時期、すなわち「行楽の秋」なのです。
「行楽の秋」という言葉がいつごろから使われているのかを新聞各紙のデータベースで調べてみたところ、1925(大正23)年11月の朝日新聞に「行楽の秋深く」という東武線の広告を見つけました。すでに戦前から使われていたことに驚きましたが、もっとも秋の行楽の代表ともいえる「紅葉狩り」も、奈良・平安時代の貴族たちが始めて江戸時代に町民たちに広まった歴史ある秋の遊びであり、古くから秋はお花見の春と並ぶ行楽シーズンとして認知されていたようです。
また、秋は穀物や果物などの収穫が多くなる季節でもあり、「収穫の秋」や「実りの秋」ともいわれます。
「行楽の秋」や「収穫の秋」、「実りの秋」の雰囲気を味わえるグッズや占い、ゲームのふろくが登場しました。
「陸奥A子のデイトバッグ(りぼん 1977年10月号)」は、六角形のボックスに持ち手をつけたユニークなスタイルのバッグで、当時の少女たちに流行していたトランクタイプ。秋らしいオレンジ色を基調にしたデザインと丈夫なつくりは、紙製だけど市販のものにも負けないくらい。おでかけにだって持って行きたくなっちゃうくらいオシャレなふろくです。
「虹子ちゃん ピクニックレターセット(ちゃお 1994年11月号)」は、ピクニックシーンのイラストが超かわいいレターセット。なんと105cmのロングサイズで使う長さによって切りはなせるびんせんや、メッセージを書いて折りたたむとリュック型になるP.S.カードなど工夫もいっぱいです。
「マリアっぽいの! カラーデュエット占い(なかよし 2000年11月号)」は、イチョウやもみじなどの葉っぱと栗の実の中から2つを選び、こすって出た色の組み合わせで今日のラブ運が占えます。
「ワイルドだもん ワイルド秋の味覚占い(なかよし 2003年10月号)」は、よいしょ! よいしょ! とおイモのつるを引っ張るキャラクターの中から好きなものを選び、その地面の下をエンピツでこすります。出てきたおイモの種類と大きさ、個数で今日の運勢をチェック。イモほり気分で楽しめちゃう占いです。
「オールスター 列車でGO! 秋のおでかけ占い(なかよし 2004年10月号)」は、遊園地・温泉・ハイキング・水族館・ショッピングの中から今日行きたい場所を1つ選び、好きな色の車両に書き、車両の銀をはがします。でてきたキャラクターと行きたい場所との組み合わせで今日の運勢が占えます。
「わんころべえ キノコがりゲーム(なかよし 1998年11月号)」は、秋の味覚のキノコがりをして点数を競うゲームを2種類楽しめます。
まず1つは、ゲーム盤のマスの上にキノコカードを置き、スタート地点からサイコロで出た目の数だけコマをタテ・ヨコに進めて、カードのあるマスに止まったらキノコをGET! ゲーム盤上のキノコカードがなくなったらゲーム終了で、取ったカードの裏に書かれた点数の合計がいちばん多い人が勝ち。ただし、キノコカードに紛れ込んでいる「毒キノコカード」を取ってしまったら、その分点数がマイナスされてしまいます。単純にキノコをたくさん取ったほうが勝ちではなく、運も重要なゲームです。
もう1つはすごろく形式で、簡単にゴールできるけどキノコはあまり取れないハイキングコースか、ゴールするのは大変だけどキノコをたくさん取れるチャンスがあるロッククライミングコースのどちらかを選んでスタート。途中止まったマスに「キノコカードを場からとる」の指示があればキノコをGET! 誰かがゴールしたらゲーム終了。取ったキノコカードの裏の点数を合計し、いちばん多い人が勝ち! としたいところですが、ゴールした人にはさらに50点加算されるため、早くゴールした人とキノコをたくさん取った人、どちらが真の勝者なのかは終わってみないとわからない、ドキドキ感いっぱいのゲームなのです。
「電脳少女★Mink どんぐりバトルゲーム(なかよし 2000年11月号)」は、山の形をした立体的なゲーム盤を使って、どんぐりひろい競争がお部屋の中でできちゃうゲームです。自分の進むコースを決めて山の頂上にどんぐりチップを置きます。サイコロで出た目の数だけチップを進め、山の下に着けたらそれをGET! 次からは頂上にある新しいチップを進めていき、頂上のどんぐりチップがなくなったらゲーム終了。GETしたチップの裏に書かれた点数の合計で順位が決まります。コースの途中には竹やぶや池などの落とし穴があり、そこにチップが入ってしまったらGETできません。また山の動物たちや風がとなりのコースにどんぐりチップを運んで他の人にGETさせてしまうことも。野山や公園では簡単にできるどんぐりひろいも、このゲームではなかなか一筋縄ではいかないようです。
「○○の秋」で忘れてはいけないのは、なんといっても「食欲の秋」でしょう。夏の暑さで落ちた体力も回復し、最も食欲の増進する季節であり、さらに「収穫の秋」で海の幸山の幸ともに豊富です。昔の人は、その豊かな恵みを神様に感謝しながら秋の味を楽しみました。
「食欲の秋」についても、いつごろから使われている言葉なのかを新聞各紙のデータベースで調べてみましたが、1934(昭和9年)9月の朝日新聞に「食慾の秋はまづ魚河岸に現れる」という記事があり、こちらも戦前にはすでに使われていた表現のようです。
さて、「行楽の秋」にはハイキングやピクニックに出かける機会も多くなりますが、日頃気軽に使っている「ハイキング」と「ピクニック」の違い、みなさんはご存知でしたか?
辞書でそれぞれの言葉を調べてみると、ハイキングは「自然と楽しみながら野山などを歩くこと(デジタル大辞泉)」で、ピクニックは「野山に出かけて遊んだり食事をしたりすること。野遊び、遠足(デジタル大辞泉)」となっています。どちらも野山に出かけることに変わりはないのですが、ハイキングは野山の散策が目的で、ピクニックは野山で遊びや食事をすることが目的のようで、どうやらピクニックは「行楽の秋」だけでなく「食欲の秋」も兼ね備えたレジャーともいえそうです。
そんなピクニックに欠かせないのがお昼のお弁当なのですが、この季節にはランチボックスやピクニックセットといった、少女たちにとって秋の遠足にもお役立ちとなるふろくが多数登場しています。
「ピクニックセット(りぼん 1976年11月号)」は、紙皿+紙ナプキン+コースター+紙コップ+おてふき+ストローのいろいろ入って便利なペアセット。先生方のイラストがステキすぎ&袋にセットされた様子がカンペキすぎて、使うのがもったいなくなりそう。
2箱のランチボックス&ボックスケース+ビニール製ランチバッグがセットになった「姫ちゃん
ランチタイムセット(りぼん 1990年11月号)」や、
大小2つのランチボックス+ビニール製のランチバッグ&ランチマットがセットになった「友香ちゃん
ハッピーランチセット(りぼん 1993年11月号)」、
おにぎりが3コ入るゆったりサイズのケースとチビおつけものケース、一目でおにぎりの中身がわかるシール、お弁当やおにぎりなどがたくさんのせられるゆったりサイズのランチマットがセットになった「茶美ちゃん
おでかけ・おにぎりケース&おにぎりめじるしシール&おでかけランチマット(ちゃお 1994年10月号)」、
おにぎりボックス+サンドイッチボックス+ビニール製ランチバッグがセットになった「せあらちゃん
わくわくランチセット(りぼん 1996年10月号)」など、複数のランチボックスとランチバッグ、ランチマットなどがセットになったものも。
「いち・に・のさんだんランチBOX&おしゃれナプキン(なかよし 1987年11月号)」は、3つのランチBOXとナプキンケースをまとめてセットできちゃうよくばりなセットです。
「なるみちゃん ランチボックス(りぼん 1989年10月号)」や、「菜緒ちゃん ランチボックス(りぼん 1999年10月号)」、「蘭ちゃん おでかけランチボックス(りぼん 2000年10月号)」は、中にトレイがついている2段構造。フルーツやナプキン、ウェットティッシュも入れられます。
サンドイッチボックスとおてふき、紙ナプキンがセットになった「スパンク ウキウキピクニックセット(なかよし 1979年10月号)」や、「チャーミングサンドイッチトレー&ペアペアナプキン(なかよし 1981年10月号)」などの、サンドイッチ用のランチセットも登場しました。子どものころ、お弁当にサンドイッチを持ってくる子はどことなくオシャレな感じがしたものです。
「一条ゆかりのピクニックバッグ(りぼん 1976年11月号)」や「ラブリー・ランチボックス(なかよし 1980年10月号)」、「きんぎょ注意報! ピクニックボックス(なかよし 1992年11月号)」、「紗南ちゃん ランチボックス(りぼん 1995年10月号)」、「夢のクレヨン王国 おでかけランチボックス(なかよし 1998年10月号)」などの持ち手がついたシンプルなランチボックスも、もちろんありました。箱の上部に丸みをつけたり、ひもを使って箱を閉じたり、真ん中からパカッと開くようにしたりといった工夫が凝らされています。
これらのランチボックスは紙製ながら、どれも多彩なデザインと機能で市販品を見事に再現していて、紙の可能性を感じさせるものばかりです。ただ食べ物を入れるため、汚れたり濡れたりしてもう使えなくなってしまうかもという不安もありました。ラップやアルミホイルを敷いてガードしたり、食べ物は入れずに小物入れにしたりするなど、少女たちは様々なアイデアでふろくのランチボックスを使っていたようです。
しかし、そんな心配などご無用の“ホンモノ”ランチボックスがついに登場します。
「マーメイドメロディーぴちぴちピッチ
ラブリーランチBOX(なかよし 2004年11月号)」は、フタも本体もプラスチック製なので汚れても水で洗えます。食べ終わったあとは本体を折り畳んでフタにしまえるから持ち歩きもラクチンの超使えるふろくです。
「行楽の秋」、「収穫の秋」、「実りの秋」、「食欲の秋」は、自然と触れ合い、自然のモノを味わうアウトドア的な「○○の秋」ともいえるでしょう。
さわやかな秋晴れの日は、ふろくと一緒にお出かけしても楽しそうですね。
※行事・風習の由来については諸説あります
〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男
監修 PHP研究所 2015年
『ポプラディア情報館 年中行事』新谷尚紀 監修 ポプラ社 2009年
『はじめて知る みんなの行事とくらし』学習研究社 2008年
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