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2016年10月27日 (木)

ふろくの花園 51.少女とふろくの歳時記 私たちのハッピー・ハロウィン♪

 昨年の10月31日、様々な仮装をした若者たちが渋谷のスクランブル交差点や六本木に集まっているところが多くのメディアに取り上げられました。テレビの画面に映し出されるその騒ぎっぷりを見て、「この人たちは何でこんなことをしているの?」「今、日本でいったい何が起こっているのか?」と、頭の中が“?”でいっぱいになったことを今でも覚えています。
 今年もまた、この「ハロウィン」の季節がやってきました。ハロウィンの市場規模は年々伸びていて、日本記念日協会によると3年前に1000億円を初めて突破し、この6年で3.5倍に膨らんだとのこと。特にここ2~3年で、夏休みが終わって9月に入ると街は早くもオレンジと紫に染まるようになり、夏休みとクリスマスの間をつなぐイベントとしてすっかり定着したようです。
 さて、ハロウィンに若者たちが大騒ぎする様子を見て顔をしかめる人々が決まって口にするのが、「ハロウィン本来の意味を分かっているのか」なのですが、みなさんは「ハロウィン」の本来の意味を知っていましたか? 私が持っていたハロウィンのイメージは「日本のお盆のようなもの」だったのですが、周りの人に「ハロウィンって何の日?」とたずねてみたところ、そのほかに「仮装して街を歩く日」「カボチャを飾る日」「いろんな家を回ってお菓子をもらう日」「収穫祭」などいろんな答えが返ってきて、いまひとつその実態がつかみにくかった風習なのです。

 オシャレ大好き少女たちにとっては、「仮装とお菓子」の日になっているハロウィン。今回はハロウィンにちなんだふろくを紹介するとともに、ハロウィンについての“?”を調べてみました。

 そもそも「ハロウィン」とは何の日なのでしょうか?

 10月31日のハロウィンを一言でいうと、「キリスト教の聖人を記念する祝日・万聖節の前夜祭」で、古代ヨーロッパ民族であるケルト人が2000年以上前から行ってきた、1年の終わりに秋の収穫を祝って先祖の霊を迎える祭りに由来するとされています。古代ケルトでは10月31日が1年の終わりとされ、その日の夜に先祖の霊が家族のもとに帰ってくると信じられていました。ただ、この世に帰ってくるのは先祖の霊だけでなく、悪霊や魔女、妖精も現れます。人々は身を守るために仮面をかぶり、魔除けのたき火を焚いていたそうです。
 3~4世紀ごろにヨーロッパにキリスト教が広まると、7世紀の初めごろにケルトのこの風習がキリスト教の祝日である11月1日の万聖節の前夜祭と結びつき、「All Hallow's Eve(諸聖人の日の前夜祭)」を短くした「ハロウィン」と呼ばれる行事になりました。
 17世紀以降、ヨーロッパからアメリカに渡った移民たちがハロウィンの風習を持ち込んだことでアメリカ全土に広まります。次第に宗教色は薄まって大衆化し、カボチャをオバケの顔のようにくりぬいて飾ったり、子どもたちが仮装して「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ)」と言って近所を回ってお菓子をもらったりするイベントも加わり、現在のような楽しいイベントへと変わっていきました。

 ハロウィンの行事が日本で広まり始めたのは1980年代に入ってからとされています。そのきっかけは1983年に東京・原宿で行われた仮装パレードだそうです。新聞各紙の記事データベースで日本でのハロウィン関連記事を調べてみたところ、「ハロウィンの31日、六本木のディスコで仮装パーティー(1987年)」「ハロウィン仮装 楽しいゾ 恵比寿、代官山に2千人(1987年)」「仮装列車で行こう! ハロウィンエクスプレス号(1989年)」など、1980年代の終わりごろから都市部でのハロウィン仮装イベントの記事が目立つようになってきました。1990年代に入ると各デパートなどが商戦として展開し、1997年に始まった東京ディズニーランドのハロウィンイベントと川崎ハロウィンパレードにより、行事の認知度が一気にアップします。保育園や幼稚園、商店街などでもイベントが行わるようになり、子どもたちにとっての楽しいお祭りがまた一つ増えたのです。

 そんな子どもたちが大好きなお祭りを、ふろくが見逃すわけがありません。

 「ハロウィン」をとりあげたふろくは、「ゆりのハロウィン・ブックカバー(ひとみ 1989年10月号)」や、あざやかハロウィンデザインの「Pなつ通り ジョイフルレターセット(なかよし 1989年10月号)」が、1980年代の終わりごろに登場しています。

 1990年代に入ると「吹雪ちゃん ハロウィーンしたじき(りぼん 1993年10月号)」や、立体的なアートフレーム「ミモリちゃん ハロウィン・フレーム(りぼん 1997年10月号)」、かぼちゃ形の「りぼんギャグキャラ びっくり伝言メモ(りぼん 2002年10月号)」などのハロウィンシーンを描いたふろくが登場。ハロウィンの雰囲気を楽しめます。

 ハロウィンの合言葉といえば「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ)」です。
 なぜ、この言葉が使われるようになったのでしょうか?

 ケルト民族が祭りのための食糧を集めて歩いたことや、11月2日に亡くなった人がいるキリスト教徒の家を訪ねてパンケーキをもらい、そのお礼にお祈りをすると死者が天国に行けるという中世ヨーロッパの風習、家の前に供え物を出しておかないと通りかかった幽霊が怒って翌年その家に災いをもたらすなど、その由来には様々な説がありますが、仮装をした子どもたちが近所の家を回り、この言葉でお菓子をもらう現在のような形式は、アメリカで20世紀に入ってからできあがりました。
 子どもたちが食べ物をもらって回る風習はアメリカでも以前からあちこちで存在していましたが、ハロウィンが広まりはじめた1920年代になると、さまざまな土地の新聞に「トリック・オア・トリート」という言葉が登場し始めます。やがて子ども向けの人気雑誌やラジオ番組が「トリック・オア・トリート」について取りあげ、1950年代になると全国的に知られる習慣になったそうです。

 「ぜんまいじかけのティナ スウィート・ハロウィンゲーム(なかよし 2000年10月号)」は、4人で遊んでゲーム盤を1周する間におうちのマスにあるおかしチップを集めるゲーム。特にルールには書かれていないのですが、おうちのマスに止まったとき「トリック・オア・トリート」と言っておかしチップをもらうと、よりハロウィンっぽくなりそうですね。    

 カボチャのタグがついた「まゆみのハロウィン・バッグ(ひとみ 1990年11月号)」や、ビニールタイつきの「実果子ちゃん ハロウィーン・バッグ(りぼん 1995年10月号)」、「チャチャ パンプキン・プレゼントバッグ(りぼん 1997年10月号)」、1つずつ切り離せる袋が3つついた「ぷくぷく ハロウィンキャンディーパック(ちゃお 1999年10月号)」、「ミルモ ハロウィンキャンディバスケット(ちゃお 2004年10月号)」は、お友だちにお菓子をあげるときはもちろん、自分がお菓子をもらいに行くときにも使えるかわいいギフトパッケージです。
 また、お面にメッセージをかいてキャラクターカードにかぶせて渡す「ハロウィンごあいさつカード(ちゃお 1994年11月号)」や、「株式会社ラブコットン スライドメッセージハロウィンカード(りぼん 2008年11月号)」といった、メッセージカードをお菓子のプレゼントに添えるとより楽しんでもらえそう。

 ハロウィンの代表的なシンボルといえるのが、オレンジ色のカボチャに目・鼻・口をくりぬいて作るランタン(手さげのランプ)「ジャック・オー・ランタン」です。
 なぜ、カボチャに顔を彫るのでしょうか?

 「ジャック・オー・ランタン」は、元々はカブを使って作られていました。ジャックという悪い男が悪魔をだました罰として、死んだ後もカブで作ったランタンを持ちあの世とこの世の間を永遠にさまよい歩いているという、アイルランドに伝わる「けちんぼジャック」の伝説がもとになっています。アメリカにハロウィンが伝わったときに、カボチャの生産量が多いのと、ちょうど収穫の時期にあたるため、カブの代わりにカボチャを使ってランタンを作るようになりました。カボチャに怖い顔を彫って、ろうそくを灯して家の前にかざっておくと悪霊を払ってくれると信じられています。ちなみに現在でもアイルランドなどでは、カブを使って作っているそうです。
 ジャックの悪霊を避けるために怖い顔を彫ったはずなのですが、その表情はどことなくユーモラス。それが日本人の“カワイイ”心を刺激したのか、日本においてはハロウィンのマスコットキャラクターとなり、この時期になると街中が「ジャック・オー・ランタン」風のグッズでいっぱいになります。

 ふろくにも、「コンなパニック ハロウィンボックス(なかよし 1992年10月号)」や、「のえる&まりあ ハッピーハロウィーンペンスタンド(りぼん 1998年10月号)」、「はじけてB.B. ハロウィンBOX(ちゃお 1998年10月号)」、「デリシャス! ハロウィン・かぼちゃボックス(なかよし 1996年10月号)」、「結婚しようよ ハロウィンパンプキンボックス(なかよし 2002年10月号)」、「13日は金曜日? パンプキンボックス(りぼん 2003年10月号)」、「聖〈セイント〉ドラゴンガールみらくる ハロウィーン★パーティーボックス(りぼん 2004年10月号)」といった、「ジャック・オー・ランタン」をモチーフにしたカボチャ型の小物入れが登場しています。
 大きさは様々ですが、ふたや仕切りもついていて机の上の小物をバッチリ収納。ハロウィンが終わっても使いたくなりそうなかわいさです。

 現在のハロウィンのメインとなっている仮装。
 なぜ、オバケや魔女の仮装をするのでしょうか?

 ハロウィンには先祖の霊だけでなく悪霊もこの世に現れると先に書きましたが、避けたい霊に出会ってしまったときに自分だとバレないよう、霊をだまして追い払うためにオバケや魔女など怖いものの仮装をするようになりました。中世のキリスト教社会では、神秘的なものや魔術が生活に根付いていたため、魔女や悪魔が恐れられていたそうです。

 鼻つきメガネとヘアバンドで楽しくお茶目に変装できる「アニマル横丁 ハロウィン変装セット(りぼん 2001年10月号)」や、コウモリと黒猫ミミのヘッドドレス2個セット「ラブ・ベリッシュ! ハロウィーン★おしゃれ仮装グッズ(りぼん 2006年10月号)」といった、ふろくの仮装グッズは紙製だけどバッチリ使えます。パーティーだけでなく、学芸会や運動会の応援合戦につけても目立てそうですよ。

 そして、ハロウィンが盛り上がりを見せてきたここ数年は、“ホンモノ”ふろくを中心にした雑貨セットがふろくになっています。

 「クラスアイドルセット(なかよし 2014年10月号)」は、暗い所で光るイヤーアクセがついたダテメガネと、ワイヤー入りで形が変えられるカチューシャのセット。イヤーアクセは黒猫モチーフで、カチューシャにはカボチャやオバケ、黒猫のほか、コウモリ、クモの巣のイラストが散りばめられていて、ハロウィンパーティに大活躍しそうです。
 「ハッピーハロウィン☆ステショセット(りぼん 2014年11月号)」は、ウエハース型のボールペンとロリポップキャンディ型のマーカー、パンプキン柄のきんちゃく、カップケーキ型メモ、袋入りグミ型消しゴムといった、ハロウィンに欠かせないスイーツモチーフの文房具に、仮装に使えるボディペイントシールのセット。
 「ハロウィン☆パーティーセット(りぼん 2015年11月号)」は、キュートなネコに変装できるメガネペンと、写真を撮るときに付けたいヒゲ型のふせん、電気を消すと魔女が光るウォールステッカー、開くと絵柄が変わる仮装メモ、カボチャ型のパンプキン馬車ボックス、暗闇で光るオバケ型消しゴム、そして前年に引き続きボディシールのセット。ハロウィンに友だちと一緒にワイワイ遊べるグッズが大集合。
 「ハロウィンパーティーセット(りぼん 2016年11月号)」は、変装して記念写真が撮れるヒゲ付ボールペン、4つの柄が1本に詰まったマスキングテープ、アプリスタンプ風シール、オバケイラストのきんちゃく、オバケ・カボチャ・黒猫・コウモリが大集合で壁に貼ってお部屋を飾れるガーランドのセット。オールオバケで身の回りのモノをハロウィン仕様にかわいくデコれます。

 これらのふろくに描かれる、カボチャ・オバケ・魔女・黒猫・コウモリ・クモの巣。
 なぜこれらがハロウィンのシンボルになっているのでしょうか?

 カボチャ・オバケ・魔女については先ほど書きましたが、黒猫は魔女の使いの中でも特別な存在であったこと、コウモリはハロウィンのたき火に寄ってきた虫を食べようと集まってくること、クモやクモの巣はそれらから生命のサイクルや時の流れを感じ取ってきたことなどからハロウィンに欠かせないモノになったようです。
 ハロウィンのシンボルはもともと人々に恐れられていたものなのですが、今では怖いはずの幽霊がにっこり笑っていたり、黒猫やクモ、コウモリがかわいく描かれていたりと楽しい遊びに変わっています。

 ハロウィンについての“?”をひととおり調べてみたところで、話を最初に戻しましょう。ここ最近のハロウィンに街へ繰り出して騒いでいる若者の中で、アニメやマンガのキャラクターなどハロウィンとは全く関係ない仮装も目につくようになり、なぜ今ここでこの格好をするのかと思うこともあります。外からその様子を見ている人々に「ただ騒いでいるだけで、ハロウィンが何なのか分かっているのか」という感想を抱かせてしまうのは、これも理由の一つなのかもしれません。

 最後に、なぜ日本のハロウィンは幅広いジャンルの仮装イベントなのでしょうか?

 一部の愛好家が行ってきたコスプレのイベントがハロウィン行事の一つである仮装と結びついた、テーマパークのハロウィンイベントで仮装ができるようになった、地域の仮装パレードが普及してきたなど、ハロウィンの仮装イベントが広まった理由は様々です。その中でもキーとなるのは、自分たちがとびついた新しいモノ・コトを他の若者たちに拡散・伝播し強い影響を与えることができる、流行の仕掛人的な若者たちの存在でしょう。彼・彼女らが2007~2008年ごろ東京でハロウィンに面白がって始めた仮装が、2013~2015年には日本全国の幅広い年代が参加する国民的イベントになっていきました。スマートフォンでイベントの様子を撮影し、SNSに続々と投稿してたくさんの人に見せることもその普及に一役買っています。若者たちは、友だちを集めてみんなでワイワイ楽しむ場としてハロウィンを取り入れ、自分たちのアレンジを加えて「ハロウィン=仮装をして楽しく騒ぐ日」というスタイルを確立させました。そんな若者たちにとってハロウィンとは宗教的意味合いなど関係のない、普段は押さえている変身願望を1年に一度、ここぞとばかりに開放する仮装のお祭り、いわば“ハレの日”なのです。

 『りぼん』『ちゃお』の本誌に安くて簡単にできるハロウィン用コスプレとメイク、おもしろ写真撮影のガイド記事が掲載されたり、読者世代の少女たちに向けた「今年なに着る? がぜったい見つかる!!」をキャッチコピーにしたハロウィンコーデ=仮装のガイドブックが出版されるなど、少女たちの間でもハロウィンの楽しみは今や、どんな仮装をするか(+ハロウィン限定スイーツ)になっているようです。

 古代ヨーロッパで始まった神秘的な儀式がアメリカに渡り、暗くて不気味なイベントだったハロウィンは、今では明るいイベントになりました。場所が変わり、時代の流れによってハロウィンという行事の意味合いも変わっていきます。日本にやってきたハロウィンも独自に進化していくのは自然なことでしょう。
 本来の意味からちょっと外れていても、仮装メインのこのスタイルが、今を生きる“私たちの”ハロウィンなのです。
 でも、いろいろなシンボルの由来を知れば、これまでよりもっと深く、ハロウィンという行事に興味を持てるようになるかもしれませんよ。

 今年のハロウィンを楽しめるのもあとわずか、仮装もお菓子も、思いっきり「ハッピー・ハロウィン」しちゃいましょう♪

 ※行事・風習の由来については諸説あります

〈参考文献〉
『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』原田曜平 著 新潮社 2016年
『HAPPY★ハロウィンBOOK』ぷっちぐみ10月号増刊 小学館 2016年
『マイ・ヴィンテージ・ハロウィン』マリオン・ポール 著 グラフィック社 2015年
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男 監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『まるごとかぼちゃ 絵図解やさい応援団』八田尚子 構成・文 絵本塾出版 2014年
『絵でわかる社会科事典 (4)年中行事・祭り』鎌田和宏 監修 学研教育出版 2013年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 10月のまき』かこさとし 文・絵 小峰書店 2012年
『ポプラディア情報館 年中行事』新谷尚紀 監修 ポプラ社 2009年
『21世紀こども百科 もののはじまり館』小学館 2009年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア 編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『ハロウィーン SNSで熱く』読売新聞 2016年10月17日朝刊

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