ふろくの花園 45.少女とふろくの歳時記 暑中お見舞い申し上げます
長かった梅雨がようやく明けて、本格的な夏がやってきました。学校も夏休みになって、友だちと会う時間がいつもより少なくなってしまいます。
「○○ちゃん、元気かな? 今、何してるんだろう」
いつものようにケータイで電話やメールもいいけれど、こんなときこそふろくを使って、夏のおたよりを書いてみませんか?
日本には、夏を迎えると親しい人に暑いさなかの健康を気づかう手紙「暑中見舞い」を書いて送る習慣があります。昔はお盆のお供え品に手紙を添えて先方の自宅を訪問していましたが、次第に手紙で済ませるようになっていき、その手紙を「暑中見舞い」と呼ぶようになりました。ちなみに贈答の品は「お中元」に変わっています。
出す時期は、小暑(7月7日ごろ)あるいは梅雨明け後から立秋の前日(8月7日ごろ)までで、送る相手は年賀状よりも親しい人に限られるそうです。
暑中見舞いのおたよりは、「暑中お見舞い申し上げます」という季節の挨拶文から始まります。本文には相手の最近の様子をうかがう言葉と自分に最近起こった出来事を書き、最後に相手の健康を祈る言葉でしめくくり、日付は「平成○年」などの年号の後に「盛夏」をつけるといった決まりごとがあるとのことです。
ハガキやびんせん、ふうとうなどのおたよりグッズは、いつの時代も少女向けふろくの超定番となっていますが、今回はその中でも特に、夏のおたより用に届けられたふろくを紹介します。
まずは暑中見舞い用の絵ハガキです。先生方のイラストと一緒に、「暑中お見舞い申し上げます」と季節の挨拶文が印刷されているものもあります。『なかよし』『りぼん』『ひとみ』の創刊当初から登場しているふろくで、「年賀状」(29.少女とふろくの歳時記 お正月(後) 参照)同様、お友だちに出してしまうのがもったいないくらいの美しさです。
いろいろな年代のものを並べて見てみると、イラストだけでなく、切手を貼るところに「ここに五円切手をはる」「20円切手を貼ってください」「40円切手をはってね」などと書かれていることにも時代の流れを感じますね。
先生方の美しいイラストを楽しむだけでなく、遊び心にあふれたハガキも登場しています。
「松本洋子のきもだめしカード(なかよし 1986年8月号)」は、ハガキにあらかじめ印刷された目玉にプラスして、自分オリジナルのオバケが描けます。お友だちを怖がらせてもよし、本誌で開催された「あなたがつくるおばけコンテスト」に応募してもよしのふろくです。
「ようこそ!微笑寮へ 夏まつり!占い銀はがしカード(なかよし 1995年8月号)」は、この夏の運勢がわかる銀はがし占いがついたハガキ。お友だちに占いを楽しんでほしいのはもちろんだけど、自分宛てに出して自分の夏休みを占いたくなっちゃう、なかなか悩ましいふろくです。
相手から絶対返事が欲しいときに便利なのが往復ハガキタイプ。「ユーモアポストカード(なかよし 1983年9月号)」は、大好きなカレ宛てに出すユニークな暑中見舞い用往復ハガキです。往信面の自己診断カルテに自分のハートがどれだけカレのことでいっぱいかを書き、「わたしはほとんどビョーキ」「あなたのことをもっとよく知りたいの。あなたのメッセージがわたしのハートの特効薬」といった殺し文句を添えて送ります。そうすると返信面の履歴書にカレがプロフィールを書いてお返事をくれるというしくみです。1980年代という時代の軽いノリもあったからなのでしょうか、これは相当仲のいい、シャレのわかる相手じゃないととても恥ずかしくて出せないでしょう。
ハガキだけでなく、びんせんやふうとうにも夏のおたより用のものが続々と登場しました。
「海のレター・セット(ひとみ 1960年7月号)」や「あきらとみいこ
ハイ・ぽーず!!びんせん(ひとみ 1980年8月号)」、「りんごちっくプチびんせん(ちゃお 1981年7月号)」などの、海水浴のイラストが描かれたものをはじめ、人魚のイラストと透明びんせんが涼しげな「ななこマーメイドレターセット(なかよし 1988年8月号)」、フルーツや夏祭りなど4種類の夏モチーフがキュートな「りぼん夏色★レターセット(りぼん 2007年7月号)」など、夏の思い出レターにピッタリのデザインが目白押しです。
お友だちに2人だけのないしょ話を書きたいけれど、ハガキだとおうちの人に何を書いたか読まれちゃうし、かといってレターセットだと大げさすぎるし…… そんなときに便利なのが、「琴子&海 シーサイド・レター/那智&浩志 サファリ・レター(りぼん 1991年8月号)」のように、びんせんとふうとうが一つになった便利な折りたたみレターです。びんせん部分におたよりを書いたら、折りたたんで封をしてできあがり。ふうとうよりも気軽におたよりが出せるから、安心してヒミツの話も書けちゃいますね。
「陽菜ちゃん ぴりぴりフルーツレター/麻衣ちゃん
サマー・キリトリレター(りぼん 2001年7月号)」も折りたたみレターですが、開封するときにピリピリとハートやTシャツの形に切り抜くことができる楽しい仕掛けレターです。
そして、もらった人がさらに楽しめるアイデアレターも登場します。
「タイホしてみーな! すいかDE暑中見舞い(なかよし 1996年8月号)」はスイカの形をしたまん丸のカード。両側をひっぱってパカーンとスイカが割れると、中からかわいいキャラクターが飛び出して、もらったお友だちも思わずビックリです。
「チョコミミ ポップ☆アップ
サマーメッセージカード(りぼん 2007年7月号)」は、カードを開くと打ち上げ花火が出てくるポップアップカード。花火大会気分も味わえそうですね。
「恵麻ちゃん ドッキリ!レターセット(りぼん 2003年8月号)」は、しましまのクリアふうとうにびんせんを入れて動かすと、すばやく絵柄が変身! ふしぎで楽しいレターセットです。
「トメ&ヨネちゃん わくわくメール(りぼん 1987年8月号)」と「夏のジグソーメッセージカードセット(ちゃお 1992年7月号)」は、ジグソーパズルとメッセージカードが一つになった遊べるレター。メッセージを書いてからパズルをバラバラにして、ふうとうに入れて送ります。
書き終わったおたよりに、もうちょっと何か足したいときには、ハガキにも貼れるミニメッセージシート「あーみん・ももこの夏のごあいさつ札セット(りぼん 1988年8月号)」や、「くまちゃん サマースタンプ(りぼん 1994年7月号)」「わんころべえ&なぎさ Wスタンプ(なかよし 1994年8月号)」などの夏のメッセージ付きスタンプが便利です。暑中見舞いのおたよりをワンポイントでかわいく彩りますよ。
夏休みも中盤に差し掛かると、おたよりを書くときに「あれ? 今って暑中見舞いでいいんだっけ?」とつい考えてしまいますが、立秋を過ぎるとどんなに暑い日が続いても「残暑見舞い」になります。子どものころは毎年書き始めるのが遅く、いつのまにか立秋が過ぎていて結局残暑見舞いばかり出していたような気がします。
通信技術の発達により、季節の挨拶や近況報告が簡単にできるようになっても、手元に残るおたよりをもらうことは、いつになってもやっぱりうれしいものです。
※行事・風習の由来については諸説あります
〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男
監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア
編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『図解版 常識として知っておきたい日本のしきたり』武光誠
監修 廣済堂出版 2007年
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