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2016年6月27日 (月)

ふろくの花園 42.少女とふろくの歳時記 憧れのジューンブライド

 大好きな漫画のラストシーンは主人公カップルの結婚式。真っ白なウェディングドレスを着て、教会で、指輪の交換と誓いのキス、みんなからフラワーシャワーで祝福されて……
 大人になったら私もステキなカレとこんな結婚式をしてみたい、と胸をときめかせる少女たちにとって特に憧れなのが、6月に結婚する花嫁「ジューンブライド」ではないでしょうか。

 「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」という「ジューンブライド」の伝説はヨーロッパの言い伝えです。ローマ神話で6月の守護神とされる女神ジュノー(Juno、ユーノーともいう)が、結婚や出産などを司る女性の守り神であったことから、この月に結婚すると女神が二人の結婚を一生約束してくれる、と信じられたといいます。また、ヨーロッパの6月は気候も良く、農作業が一段落する時期であったため結婚式を挙げやすかったということも、「ジューンブライド」伝説を後押ししたようです。
 日本でも、昭和40年代から取り入れられるようになりました。

 1990年代に入り、日本の結婚式事情は式場主導の「神前結婚式で三三九度→披露宴でウェディングドレスにお色直し」といった従来のスタイルから大きく変化します。その始まりは1990年代前半の、『けっこんぴあ』や『ゼクシィ』などの結婚情報誌の創刊でした。式場や披露宴会場を比較検討し、より効率よく選ぶことができるようになったため、結婚する当人が主体的に結婚式を作り上げようと考えるようになっていきます。そして、1995~1996年には神前結婚式とキリスト教式の比率が逆転し、ホテルなどが礼拝堂を併設するようになって以来「チャペルウェディング」が婚礼のスタンダードになりました。その後、新世紀を迎えるころにはレストランウェディングやハウスウェディングなど、自分たちの趣向を取り入れられる結婚式も広まったことで、いかにオリジナリティあふれる自分たちだけのモノを作れるか、という結婚式周りの情報戦が盛り上がりを見せていきます。

 そんな時代の空気が少女たちの憧れを詰め込むふろくにも入りこんだのか、1990年代後半から2000年にかけて、6月号のふろくに「ジューンブライド」にちなんだものが登場しました。

 「エンジェルリップ ドリームしたじき(ちゃお 1999年6月号)」や「キュートBOY ミニバッグ(ちゃお 2000年6月号)」は、ウェディングドレスを着たキャラクターのイラストが描かれています。使っているだけで「ジューンブライド」気分が味わえそうです。
 「プチちゃおコミック2001 特集あこがれのジューンブライド(ちゃお 2001年6月号)」は、ウェディングストーリーが6本で読みごたえたっぷりの別冊ふろく。といっても少女たちに向けたものなので、大好きなカレと未来の結婚を夢見る少女が主人公のかわいいお話です。読み終わったら、もっと「ジューンブライド」に憧れちゃうかもしれませんね。

 ゲームや占いでも「ジューンブライド」体験をしちゃいましょう。
 「せあらちゃん ジューンブライドゲーム(りぼん 1997年6月号)」は、かわいい3段のウェディングケーキ型。いちばん下のカレとの出会いからスタートし、両想いになって1段上り、プロポーズでもう1段上がり、最後にじゃんけんで勝てばいちばん上の段で待っているカレと結婚式のゴール! まさに、結婚に向けてのステップを一段一段上がるということを体感できるゲームです。
 「ウェディングバトルゲーム(なかよし 1999年6月号)」はプロポーズから結婚式まで、幸せなゴールをめざしてまっしぐらのゲーム、なのですが、婚約破棄でスタートにもどる、マリッジブルーで1回休み、他の人にコマをもどされたりと落とし穴もたくさん。最後に花むこチップをひいて、見事お相手のカレがでたらゴール! 結婚式まで山あり谷ありの道のりをたどるので、ゴールできた時の感動はひとしおでしょう。
 「せあら&奈緒 ジューンブライド占いミニブック(りぼん 1998年6月号)」は、会場やドレス、ケーキ、ハネムーンなど「どんな結婚式をしたいか」の心理テストに答えると、将来の恋愛の傾向がわかります。運命の人とはいつどこで出会えて、どんなデートをするのかな? みんなでワイワイ楽しめるミニブックです。

 「明姫ちゃん ウェディングプランノート(ちゃお 2000年6月号)」は、ウェディングプラザでドレスやブーケ、指輪、ケーキ、演出、引出物、新婚旅行などのウェディングアイテムを提案され、希望のものを選ぶという設定の心理テスト式ノートで、最終的に自分にピッタリのウェディングスタイルがわかります。少女向けにもかかわらず、それぞれのウェディングアイテムの写真や説明などが満載で、ページをめくっていると、まるで本当に結婚の準備をしているかのよう。
 このふろくの設定から見え隠れするのが、ウェディング・プランナーという存在です。
 ウェディング・プランナーは文字通り、結婚式のプランニングをすることが役割で、新郎新婦がどんな結婚式を行いたいかを聞き出し、希望に添った演出やプログラムを提案、一緒に結婚式を作り上げていきます。1950年代にアメリカで誕生し、日本ではオリジナルの結婚式を望むカップルが増えた1990年代から活躍の場を広げてきました。オリジナリティあふれる結婚式を行うには今や欠かせない存在で、映画やドラマに取り上げられたこともあり、女性に人気の職業の一つになっています。
 このウェディングプランノートで、様々なウェディングアイテムを提案され、希望のモノを選んでいくことで、自分の未来の結婚だけでなく、提案する側のウェディング・プランナーという職業に対しても憧れを抱く少女たちが出てくるのかもしれません。
 そう考えると、自分の結婚式は自分で作りたいという、この時代の空気が最も反映されたふろくともいえるのではないでしょうか。

 「ジューンブライド」のイメージから、日本でいちばん結婚が多いのは6月と思われるかもしれません。しかし、厚生労働省の統計より2015年の月別婚姻件数を見てみると、3月と11月が多く、6月はむしろ少ない方なのです。婚姻届を出す月と結婚式を挙げる月は必ずしも同じではありませんが、結婚式も気候の良い春と秋、特に11月が多いとのこと。
 実は、昭和40年代に日本で「ジューンブライド」が取り入れられたきっかけも、6月は梅雨時で挙式をする人が少なかったために、ホテル業界やブライダル業界が売り上げ向上を狙ってヨーロッパの「ジューンブライド」伝説を打ち出したこととされていて、バレンタインデー(31.少女とふろくの歳時記 バレンタインデー(前) 参照)を思い出させる業界の仕掛け的な面もあったようです。

 それでも「ジューンブライド」という言葉の響きとその伝説は、少女たちだけでなく、結婚に憧れるすべての女性にとって特別なものとなっているのです。

 ※行事・風習の由来については諸説あります

〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男 監修 PHP研究所 2015年
『最新 ブライダル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本 第2版』粂美奈子 著 秀和システム 2013年
『きちんとわかる 結納と結婚のしきたり』大輪育子 監修 日本文芸社 2012年
『ふたりの結婚準備 これ一冊で完璧!』LADIRB〈ラディーブ〉監修 大泉書店 2007年
『冠婚葬祭のひみつ』斎藤美奈子 著 岩波書店 2006年
『人口動態統計月報(概数) 平成27年11月分』『人口動態統計速報 平成27年12月分』厚生労働省webサイト
ウェブ版『知恵蔵2015』

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