ふろくの花園 39.少女とふろくの歳時記 お母さん、ありがとう
5月の第2日曜日は「母の日」です。家族の健康を守るお母さんの仕事にはお休みがありません。みんなのためにいつも忙しくしているお母さんに、ふろくを使って「ありがとう」の気持ちを伝えましょう。
「母の日」はアメリカで始まったといわれています。
アンナ・ジャービスという女性が、地域のために尽くしてきた母親が1905年の5月9日に亡くなったとき、翌年から第2日曜日に母親をしのんで白いカーネーションを捧げ、教会に来た人たちにも分け与えていました。
当時デパート経営者だったワナマーカーはこの活動に賛同し、1908年5月の第2日曜日に母をたたえる記念会を開きます。アンナの話を人々に伝え、この日を「母の日」とすることを提唱したのです。これがアメリカ中に広まり、1914年にウッドロー・ウィルソン大統領が国民の祝日として5月の第2日曜日を「母の日」に定めました。
日本での「母の日」は、大正時代にキリスト教関係者の間で広まったのが始まりとされていますが、一般的に知られるようになったのは、1937年に森永製菓が主催した第1回「母の日大会」がきっかけだそうです。また、各都道府県などの福祉団体で構成される「全国母子寡婦福祉団体協議会」は、1949年から東京などで造花のカーネーションを配る運動を通して「母の日」の普及に努めてきました。日本に「母の日にはカーネーションを贈る」という習慣が根付いたのは、この運動の果たした役割が大きかったことに他なりません。
今やカーネーションは「母の日」だけでなく「こいのぼり」(38.少女とふろくの歳時記 こいのぼり 参照)と並び、5月を表すシンボル的存在にもなっています。
『なかよし』『りぼん』『ちゃお』『ひとみ』で「母の日」をとりあげたふろくは、創刊当初の1950年代では「少女絵物語 おかあさん(なかよし 1956年5月号)」や「ママへの手紙(ひとみ 1959年5月号)」といった、お母さんをテーマにした別冊漫画がありました。
1965年ごろから、お母さんへの感謝の言葉を書いて渡せるミニサイズの手帳「母の日記念手帳(なかよし 1965年5月号)」や、「母の日カーネーション&カード(りぼん 1966年5月号)」、「母の日プレゼントカード(りぼん 1968年5月号)」などの、お母さんへの感謝の気持ちを形にして贈るためのふろくが登場しはじめます。それぞれのふろくには「5月○日は母の日です。おかあさまに感謝しましょう!」といった説明がされており、少女たちに「母の日」を紹介していました。
1970年代に入ると、人気のファンシーグッズを雑誌生まれのスターたちで再現したふろくが中心となり、ギフトボックスやイラストカードなどに「母の日のプレゼントにも使えるよ」と説明されていた程度で、「母の日」はあくまでもふろくの用途の一つでしかありませんでした。
その後、1980年代半ばごろから「母の日専用グッズ」が人気漫画のキャラクターのイラストで再び登場。5月号の定番ふろくとなったのです。
まずは、「いつもありがとう」のメッセージを書いて贈れるカードやギフトボックス。
カーネーションの花束形パッケージ「母の日ギフトボックス(なかよし 1986年5月号)」や、
お母さんと遊べる楽しいメッセージカード「ドキドキ母の日アミダカード(なかよし 1989年5月号)」、
開くとキャラクターがとびだす「みい子ちゃん
母の日ポップアップカード(ちゃお 1995年5月号)」、
開くとキャラクターの口がパクパクしてメッセージを伝えてくれる「マリジュン
五つ子メッセージカード(なかよし 1999年5月号)」、
左右に引っ張るとイラストが変わりメッセージがでてくる「ムーぽん
サンクスママカード(なかよし 2000年5月号)」など、様々な工夫がされています。
「あわせて1本! サンクス!ママカード(なかよし 1997年5月号)」は、カーネーションの花束形で、つまみを引っ張るとお花がパッと開いてメッセージがとびだします。お母さんも思わず楽しくなっちゃいそうですね。
いつもおいしいご飯を作ってくれるお母さん。「母の日」にはゆっくり休んでもらって、手作り料理をごちそうしちゃいましょう。
「母の日スペシャルミニブック(ちゃお 1996年5月号)」は、まぜごはんやスパゲティー、ホットケーキなどのランチメニューやティーパーティーメニューの作り方が載っていて、お母さんに大サービスできちゃいます。
「ママビックリ!! クッキングブック(ちゃお 1997年5月号)」は、まんが家先生のオリジナルメニューから、かわいいデザート、オードブル+スープ+メイン+デザートのフルコースディナーまで、なんと39品目ものメニューが作れる本格的なクッキングブック。これだけできれば、きっとお母さんも大喜びですね。
「母の日」に誰もが贈ったことのあるプレゼントといえば、何といっても手作りの「お手伝いチケット」でしょう。掃除、洗濯、料理、買い物、皿洗い、肩たたきなどで、日ごろの感謝の気持ちを身体で表すことができる、この「お手伝いチケット」付きメッセージカードが「母の日」ふろくの中心でした。
一般的なお手伝いの内容がすでに印刷されているチケットだけでなく、何でも1日お手伝いチケットや、子どもがやりたい
or お母さんがしてほしいお手伝いを自分で記入するチケットがついているふろくもあり、それぞれの家庭に合わせて幅広く使えるよう心配りがされています。
ホールのショートケーキ型チケットを切り分けて使う「ケーキ型母の日感謝チケット(なかよし 1988年5月号)」や、
おてつだい1日券つき母の日カード+お買物おねがいチケット+おてつだいチケットがセットになった「お母さんありがとう3点セット(りぼん 1989年5月号)」、
チケットに書かれた点数を組み合わせてお手伝いの内容を決める回数券「ポケット・パーク
母の日おてつだいチケット(なかよし 1993年5月号)」、
カーネーション形のお手伝いチケットがついた「チャチャ
母の日ありがとうカード(りぼん 1995年5月号)」と「海の碧・空の青
サンクスママギフトカード(なかよし 1996年5月号)」、
バッグ型のケースの中に身だしなみグッズの形をしたお手伝いチケットが入っている「実果子ちゃん
母の日おてつだいバッグ(りぼん 1997年5月号)」、
牛乳パック形のケースにお手伝いチケットが8枚も入っている「だぁ!だぁ!だぁ!
母の日チケットボックス(なかよし 1998年5月号)」、
キッチンペーパーロールのようにお手伝いチケットをケースからスルスル引き出せる「夢見なサイキック!
ママ大好きペーパーチケット(なかよし 2001年5月号)」、
銀はがしで出たマークで何のお手伝いをするか決める「風子ちゃん
母の日花束カード(りぼん 2002年5月号)」など、
とにかく遊び心とアイデアが満載で、お母さんもゲーム感覚で気軽にお手伝いを頼めそうです。
中には、おてつだいチケットつきハウス+おねだりカード+お母さんありがとうカードの3点セット「光希ちゃん
母の日セット(りぼん 1992年5月号)」や、
お母さんを女王様に見立てて、かたづけ王女やかいもの王子などのチケットでお手伝いをする「母の日女王さまセット(りぼん 1994年5月号)」、
ポールを立てて、お手伝いをするごとにチケットを頂上へ進めて差し込んでいく「えみゅらんぷ
母の日お手伝いポール(りぼん 2001年5月号)」などのように、
お手伝いの回数や内容などの目標をあらかじめ決めて、達成できたときには「○○をお願いします」と欲しいものをおねだりできるという、ちゃっかりしたルールのチケットも。
ただし、1か月~3か月程度の有効期限が記載されているものもあり、「母の日」の威力も長くは続かないことがわかります。期限が過ぎたチケットを渡されても、少女たちにはこころよくお手伝いを引き受けてほしいものですね。
少女たちの「母の日」サービスを完全バックアップするだけでなく、少女たちとお母さんとのコミュニケーションツールとしても、これらのふろくはきっと役立ったことでしょう。
そして、「アイちゃんのサンキューママカード(なかよし 2003年5月号)」以降、お母さんへの感謝を形として贈る「母の日専用グッズ」は姿を消してしまいました。
“ホンモノ”ふろくのファッショングッズや文房具という、少女たちにインパクトを与えるグッズが中心となり、ふろくを通じて少女たちに「母の日」を伝えるという役割が再び薄まったことに寂しさを感じますが、お母さんに感謝し、その気持ちを伝えることの大切さを、少女たちはまた別の方法で知ることもできるのです。
※行事・風習の由来については諸説あります
〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男
監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 5月のまき』かこさとし
文・絵 小峰書店 2012年
『こども きせつのぎょうじ絵じてん 増補新装版』三省堂編修所
編 三省堂 2009年
『ポプラディア情報館 年中行事』新谷尚紀 監修 ポプラ社 2009年
『はじめて知る みんなの行事とくらし』学習研究社 2008年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア
編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『ワイド時典 母の日』読売新聞 2005年5月2日朝刊
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