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2016年3月の3件の記事

2016年3月 5日 (土)

人気者とピンポン☆

 「世界卓球2016 マレーシア」もいよいよ大詰め。これを書いている今、日本男子チームが女子チームに続けと、39年ぶりの決勝進出をかけて手に汗握る熱戦を繰り広げているところです。

 日本に卓球が伝わったのは1902年のこと。イギリスに留学していた坪井玄道が卓球の道具を持ち帰り、紹介したことが始まりといわれています。まもなく全国の学校で取り入れられ、1931年には「日本卓球会」(のちの「日本卓球協会」)が設立、その後、全日本選手権などさまざまな大会が行われるようになり、人々の間に広まって行きました。
 1952年の世界選手権では初参加にもかかわらず、男子シングルス、男子ダブルス、女子団体、女子ダブルスの4種目で優勝するという快挙をなしとげます。1956年には日本で初めての世界選手権を東京で開催、1960年代にかけて、日本卓球は世界選手権で多数のタイトルを獲得し、世界に名だたる卓球王国としての地位を確立しました。
 国内でも空前の卓球ブームが巻き起こり、1960年代には全国に1万軒以上も卓球場があったそうです。また、全国の温泉旅館でも遊技場に卓球台が置かれ、浴衣とスリッパで行える、娯楽としての“温泉卓球”が人気を呼びました。

 老若男女を問わず、誰もが卓球に親しんでいたこの時代、少女たちにも卓球を楽しんでもらおうと、本物そっくりの「ピンポンセット」が届けられたのです。

 写真:ビバ! ピンポンセット(りぼん 昭和43年11月号)

 人気漫画のキャラクターが描かれたペア・ラケット、組み立て式のスタンドがついてどこにでも立てられるビニール製のネット、直径2cm弱のよく弾んで長持ちするピンポン玉、優勝者にあげるGS〈グループサウンズ〉の人気スターの写真付きトロフィー、スコアカードと充実のセット内容。教室や家にある机を使って、友だちや家族とたっぷり遊べるセットです。

 人気漫画のキャラクターと、当時絶大な人気を誇っていたGS〈グループサウンズ〉(9.スターはいつまでもスター 参照)と、少女たちの大好きなスターが両方登場しています。
 雑誌生まれのスターと街の人気スターとが共演するこのふろくは、雑誌生まれの3大スターが輝きを見せはじめるこの時期ならではのものでしょう。

 「11月号についたピンポンセット、うれしかったわ。しんせきの子どもたちが大ぜいあつまった日に、みんなで試合をしたの。あたし? えへへ…… まけたの」
 このおたよりからも、少女たちがこのピンポンセットで卓球を楽しんでいる様子がうかがえます。

 しかし、1970年代以降は中国やヨーロッパ諸国の台頭でトップの座を奪われるようになり、国内での人気も衰退していきます。
 あるタレントが卓球のことを、当時の流行語を使い「根暗なスポーツ」を称したこともあってか、地味なスポーツという何かとネガティブな印象を与えがちでした。
 小学生時代に課外活動で卓球クラブに入っていて、周りの人よりちょっとだけ得意な数少ないスポーツがそんなことになってしまい、自分としては悲しい時期だったのです。

 ところが2000年ごろから、『行け!稲中卓球部』『ピンポン』といった卓球漫画が人気になったり、ビールや梅酒のCMに卓球が登場して話題になったり、さらには少女時代の福原愛選手がメディアに頻繁に取り上げられたりと、再び卓球が人々の注目を集めるようになってきました。そして、2012年のロンドンオリンピックで、日本女子チームが銀メダルを獲得。今回の世界卓球がTVで(ほぼ)ゴールデンタイムに生中継されるなど、近年、日本の卓球はさらなる盛り上がりを見せているようです。

 『なかよし』では2015年5月号より、『ピンポンドライブ』という卓球漫画が連載されています。少女漫画雑誌からスポーツ漫画が姿を消しつつある現在、毎月楽しみにしている作品です。

〈参考文献〉
『スポーツなんでも事典 卓球』こどもくらぶ 編 ぽるぷ出版 2007年
『卓球まるごと用語辞典』藤井基男 著 卓球王国 2007年
『ピン本 極楽卓球のススメ』立川竜介 総和社 2000年

2016年3月20日 (日)

ふろくの花園 33.少女とふろくの歳時記 ひな祭り

 3月3日はひな祭り。「おひなさま」を飾り、桃の花やひしもち、ひなあられなどを供えて女の子の健やかな成長と幸せを願います。

 平安時代、貴族や豊かな家の女の子は紙で作った人形やちいさなおもちゃなどを「ひいな」とよび、ままごとのような「ひいな遊び」をしていました。
 同じころ、中国から3月3日に水辺で体を清めて病気を追い払うならわしが伝わって、海や川で身を清め、紙や土で作った人形を自分の身代わりとして流したりすることで、身の汚れを清める行事が貴族の間で行われるようになります。昔は病気で命を落とす子どもが多かったので、子どもが病気にならないよう枕元に人形を置いたり、病気になったときには身体をさすったり、息を吹きかけたりして人形にうつし、海や川に流していたそうです。
 この3月3日の人形を水に流す行事と「ひいな遊び」が結びつき、やがて人形が立派になるにつれて水に流さず毎年家に飾るようになったのが、今のひな祭りの始まりといわれています。
 その後、江戸時代には武士や商人の家でもたくさんの人形をひな壇に飾るようになり、明治時代以降は一般の家にも広まりました。 

 まさに少女たちのためのお祭りといえる「ひな祭り」をとりあげたふろくは、1955年の『なかよし』『りぼん』創刊当初から3月号の定番として登場しています。

 お殿さまとお姫さまの内裏びな、三人官女、五人ばやしなど、着物を着た宮中の人たちの人形が15体飾られる、美しく豪華な「おひなさま」には、少女たちの夢と憧れが詰まっています。その雰囲気を少しでも味わって楽しんでもらえるよう、様々なアイデアを盛り込んだ「ひな祭り」ふろくを少女たちに届けました。

 「とてもうつくしい! かざりおひなさま(なかよし 1957年3月号)」「おひなさまえはがき(りぼん 1958年3月号)」「ひなまつり写真集(なかよし 1959年3月号)」といった、おひなさまの写真やカードといった平面的なものから始まり、1960年代に入ると「ひな祭りびょうぶセット(ひとみ 1960年3月号)」「かわいいおひなさま(りぼん 1961年3月号)」などの机の上にも飾れる立体的なひな飾りも登場します。
 「たのしいおひなさまセット(なかよし 1962年3月号)」は男の子と女の子おそろいのおひなさまセット。衣装部分にハニカム構造を用いていて、開くとはかまのフワッとした感じが再現されるデラックスな紙製人形です。
 「ケース入りミニチュアおひなさま(りぼん 1969年3月号)」は内裏びなと三人官女の飾りびながビニールのケースに入っていてそのまま飾ることができます。小さなケースでも「おひなさま」の魅力が伝わってくるようなセットです。
 また、「たのしくつくりましょう おひなさま人形(なかよし 1963年3月号)」「紙びなさま おひなさま千代紙(りぼん 1963年3月号)」といった、自分だけのおひなさまが作れる千代紙セットや、「ひなまつりベビーダンス(なかよし 1964年3月号)」「おひなさまかさね小箱(りぼん 1964年3月号)」などの組み立て式で実用的なものも。
 さらには、内裏びなにグループサウンズの人気者、アイちゃんとジュリーが並んでいる「びょうぶつきかざりびな(なかよし 1969年3月号)」で、時代の空気も感じさせました。

 1970年代に入ると、ファンシーグッズやサンリオなどのキャラクターグッズが少女たちに広まり、雑誌生まれのスターたち(マスコットキャラクター・漫画家・漫画作品)が輝き始めます。ステーショナリーなどの実用品がふろくの中心になったこともあり、「ひな祭り」のふろくはしばらく姿を消しました。

 しかし1980年代が終わるころ、3月号のふろくに「ひな祭り」が戻ってきたのです。

 雑誌生まれのスターが最高潮ともいえる輝きを見せているこのころ、『ときめきトゥナイト』の「ときめきランドのおひなさま(りぼん 1988年3月号)」や、『ちびまるこちゃん』の「まるちゃんおひなさま(りぼん 1989・1990年3月号)」といった、人気漫画のキャラクターたちが「おひなさま」に扮しました。
 「おひなさま」のひな壇にはたくさんの登場人物がいます。ひな壇に漫画のキャラクターを載せることで、少女たちに「ひな祭り」という年中行事を周知させるのはもちろんのこと、漫画作品の世界観をアピールできる絶好のふろくでもあったのです。

 風などで人形がゆらゆらとゆれる「ミモリちゃん ゆらゆらおひなさま(りぼん 1997年3月号)」や、ひな壇の部分が小物入れになっている「ほたるの虹色おひなさま(ひとみ 1989年3月号)」、指人形にして遊べる「シロちゃん 指人形おひなさま(りぼん 1991年3月号)」、付属のシールを貼って人形を変装させられる「変装おひなさま(りぼん 2001年3月号)」など、飾ることがメインだった1960年代までのふろくに、遊び心と実用性をプラスしたものも。

 そして、サイコロをふって占いができる「チャチャのおひなさま占い(りぼん 1994年3月号)」や、ひな壇ですごろくをしてお内裏さまを目指す「わんころべえ おひなさますごろくゲーム(なかよし 1997年3月号)」、コマをつかって遊ぶバランスゲーム「ドキドキおひなさまゲーム(りぼん 2000年3月号)」、勉強運・金運・ラブ運がわなげで占える「ラブわん! ひなかざり★わなげ占い(りぼん 2004年3月号)」など、ひな段の高低差を利用した立体感のあるゲームや占いができるもので、「おひなさま」をただ机の上に置いて眺めるだけでなく、少女たちを飽きさせないような工夫も凝らされています。

 「ひな祭り」には「おひなさま」だけではなく、この時期ならではのお菓子、ひなあられがあります。
 関東ではもち米を炒って砂糖をまぶしたあられ、関西や中部では塩または醤油味の丸いあられと地域によって違いがあり、四季(春・夏・秋・冬)を表す4つの色で染められているそうです。ずっと関東で育ってきた自分は、今年初めて関西のひなあられのことを知りました。甘さが苦手でひなあられはこれまであまり食べなかったのですが、関西のあられはいろいろな味があり後を引くおいしさで、世界が広がったような気がします。
 このひなあられを詰めるための「あずきちゃん ひなあられパック(なかよし 1996年3月号)」「ひなまつりだよ!! たまごっちパック(なかよし 1998年3月号)」「東京ミュウミュウ いちごのスイートあられパック(なかよし 2002年3月号)」も登場。「おひなさま」と一緒にお部屋に飾ったり、お友だちへのプレゼントに使ったりと、カラフルなひなあられをさらにかわいくして彩りを添えました。

 女の子のお祭りである「ひな祭り」には、仲良しのお友だちとパーティをするのも楽しみの一つです。
 お料理や小物づくりにゲームなどひな祭りパーティーのアイデアがぎっしりの「ひなまつり手づくりブック(ちゃお 1997年3月号)」や、テーブルセッティングに使える「レピッシュ! ひな祭りはしぶくろ(なかよし 1989年3月号)」と「ひなまつりペーパーナプキン(ちゃお 1999年3月号)」、チケットを持ってるみんなが集まると「おひなさま」ができあがる「あずきちゃん ひなまつりカム・カム・パーティーチケット(なかよし 1994年3月号)」、お友だちの名前を書いて机の上に置くとパーティーのかわいいマスコットになる「園子パーティー人形(なかよし 1990年3月号)」などのふろくで準備もバッチリ。パーティも盛り上がりそうですね。

 新世紀を迎えて15年が経った現在、『なかより』『りぼん』『ちゃお』のふろくは、“ホンモノ”ふろくのファッショングッズやステーショナリーが主となり、連載漫画のキャラクターグッズ色が薄くなっています。「ひな祭り」のふろくも「カレンダーつきフリフリひなかざり(りぼん 2009年3月号)」を最後に、2010年ごろからまた姿を消しました。

 「ひな祭り」は男性中心の社会だった昔に、女の子の成長と健康をまもる心がならわしとなって現在まで伝わった、世界でも珍しい行事だそうです。
 少女漫画雑誌のふろくから「ひな祭り」の空気を感じ取ることは難しくなってしまいましたが、少女たちのためのお祭りとしていつまでも大切にしていきたいですね。

※行事・風習の由来については諸説あります

〈参考文献〉
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男 監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 3月のまき』かこさとし 文・絵 小峰書店 2012年
『はじめて知る みんなの行事とくらし』学習研究社 2008年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア 編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『まるごとわかる 365日ものしり百科 3月』谷川健一 監修 日本図書センター 2005年

2016年3月28日 (月)

ふろくの花園 34.少女とふろくの歳時記 卒業・思い出づくり

 3月に入り、桜の開花はいつなのかが話題になり始めると、3学期ももうすぐ終わり。慣れ親しんだ教室で過ごす日々も残りわずかになりました。
 卒業やクラス替えなどで離れ離れになってしまう、仲良しの友だちやお世話になった先生方、部活の仲間たちとの楽しかった思い出を、ふろくで残しておきましょう。

 1枚の色紙にみんなからのメッセージが集まった寄せ書きは、部屋にずっと飾っておくこともできる思い出グッズの一つです。
 1970年代の終わりごろから、お店で売っている色紙と同じような白い正方形の厚紙に、先生方のワンポイントイラストが描かれているものや、ハート型、花型、人気漫画のキャラクター型など、少女たちにピッタリなかわいく遊び心のある寄せ書き用色紙がいくつも登場しています。

 「プルミエ・ミュゲ メモリアルサイン色紙(ひとみ 1981年3月号)」と「ゆかりのよせがき色紙(ひとみ 1985年3月号)」には、寄せ書きをしてもらう面の反対側に、春の別れや旅立ちをテーマにしたイラストポエムが描かれています。寄せ書きとポエムの相乗効果で、読み返すたびにロマンチック&センチメンタルな気分にひたることができます。
 また、「しあわせってなんだっけ色紙+なかよしオールまんが家サイン色紙(なかよし 1987年3月号)」や「なかよしオールスター サインいり色紙(なかよし 1998年3月号)」には、寄せ書きをしてもらう面の反対側に、漫画家の先生たちのサインとイラスト、一言メッセージがぎっしり書かれています。まるで雑誌生まれのスターである先生からも進級・進学をお祝いしてもらっているようで、漫画が大好きな少女たちにとっては、みんなからのメッセージと合わせて、何よりのプレゼントとなったことでしょう。

 1年間の思い出をひとまとめにしてしまっておくためのバッグやケースもふろくになりました。
 「ちびまる子ちゃん おもいでバッグ(りぼん 1991年3月号)」は、本誌の約2倍でB4サイズも入る紙袋。思い出の品の数々をたっぷりいれることができます。
 「カレンちゃん おもいでボックス(ちゃお 1995年3月号)」は、六角柱の形がユニークな筒形ケース。伸び縮みするので、いろいろなサイズの大切な絵や賞状などを折らずにとっておくことができるスグレモノです。
 「ありさちゃん タイムカプセルデータ・メモ(りぼん 2000年3月号)」には未来の自分へのメッセージも閉じ込めておきましょう。フタをしめた日付と「〇年〇月〇日まで開けちゃだめ!」の封印日付を書くスペースもあります。何年先になるのかな? 開ける日が楽しみになりますね。 

 この1年にあった出来事を新聞形式でまとめられるのが「みい子ちゃん おもいで新聞(ちゃお 1995年3月号)」です。「おもいでなんでもベスト5」「おもいで4コマをかこう!」「はやりセリフベスト3」「私のまわり流行通信」など、1人でじっくりいろいろな出来事を思い返しながら書いてもよし、友だちと一緒に思い出話に花を咲かせながら書いてもよしの、楽しいコーナーが目白押し。けれども、中には好きな人の似顔絵や身長・髪型・体型・タレントに例えると・好きなところなどを記事にしちゃう、「スクープ! 私の好きなひと!!」という結構きわどいコーナーもあり、ここはちょっと友だちにはナイショにしておきたいところ。本誌では、この「おもいで新聞」のコンテストも開催されましたが、応募対象のコーナーに「私の好きなひと!!」は入っていなかったので、少女たちも安心して好きな人の思い出を心の中にそっとしまっておけました。

 友だちや先生方からのメッセージを残しておくための思い出グッズといえば、何といっても「サイン帳」でしょう。
 この時期ならではの、思い出をとっておくための特別なノートである「サイン帳」が、いつごろから使われるようになったかは定かではありません。ただ、現在70歳代の母親が小中学生時代のサイン帳を今でも大事にとっておいていたり、「羽根ペンつきサイン帳(ひとみ 1959年3月号)」や「ゆめのサイン帳(なかよし 1959年3月号)」といったふろくに、「わすれられないたのしさを、いつまでもそっと、だいじにしまっておいてくれるゆめのサイン帳!」「三月… 進級も卒業も、もうすぐですね。美しい羽根ペンとルネ先生のサイン帳で、先生やお友だちのサインを集めてください」などの説明書きがあるのをみると、『なかよし』『りぼん』が創刊された昭和30年ごろには、「サイン帳」にお別れのメッセージを書いてもらう習慣はすでにあったようです。

 その後「サイン帳」が、「おひなさま」(33.少女とふろくの歳時記 ひな祭り 参照)をもしのぐ3月号の定番ふろくとして再び登場するのは、サンリオなどのキャラクターグッズ、特に文房具類が低学年の少女たちにも広まってきた1970年代の終わりごろでした。

 厚紙の表紙をスナップやリボンで止めるものが多く、普通のノートよりもしっかりとした作りだった当時の「サイン帳」は、「キャンディ・キャンディ 思い出ノート(なかよし 1978年3月号)」「陸奥A子のサイン・ノート(りぼん 1979年3月号)」などのノートだけのものや、「フォスティーヌ 思い出アルバム(なかよし 1979年3月号)」「アルバムつきサインノート(りぼん 1980年3月号)」「ロマンチックメモリー(ちゃお 1981年3月号)」などのサインと一緒に写真も保管できるアルバムがついたもの、「きららの思い出カード集(なかよし 1981年3月号)」「アルバムつきサイン帳セット(りぼん 1981年3月号)」などの1枚ずつ配れるタイプのものや、「香澄ちゃんおもいでアルバム(りぼん 1987年3月号)」などの思い出の品を一緒にしまっておけるポケットがついたものなど、様々なタイプがありましたが、ノート部分はワンポイントのイラストがある程度で、自由に描いてもらえるスペースの多いフリータイプがほとんどです。

 1990年代になると、「愛良ちゃん 思い出セット(りぼん 1992年3月号)」「アリスちゃん サイン帳セット(ちゃお 1994年3月号)」「虹子ちゃん おもいでサイン帳セット(ちゃお 1995年3月号)」「奏ちゃん 思い出セット(りぼん 1996年3月号)」などの、厚紙で作られたバインダーにサイン用紙、アルバム、ポケットなどをひとまとめにとじておく「サイン帳セット」「思い出セット」が主流になりました。
 サイン帳部分は1人に1枚ずつ配れるルーズリーフタイプ。1冊を何人もに回すノートタイプと違い、効率的に回収ができるので、毎日会えるわけではない塾や習いごとの仲間にも気軽にサインを頼めます。名前・住所・電話番号・誕生日・血液型などの基本的な項目のほか、趣味や将来の夢などを記入する欄がいくつか決まっていて、残りのスペースにメッセージなどを自由に書いてもらう形式です。ふろくによっては「おともだちのきろく」とも名付けられています。似顔絵だけでなく写真シールを貼る枠が現れてくるのも、プリクラが少女たちの間で爆発的な人気を呼びはじめるこの時代ならではでしょう。

 2000年代に入り新世紀を迎えると、“ホンモノ”ふろくとなるミニ6穴タイプのサイン帳セットが登場します。とじ具は金属やプラスチックと丈夫になり、ビニールカバーがついたものもあるバインダーは、市販のモノと遜色がないくらいの本格的なもので、思い出をずっととっておくことができそうです。
 友だちに書いてもらうサイン帳部分は、1990年代のものよりもさらにカラフルで、記入する項目もさらに細かく、数も多くなりました。名前・住所・電話番号・メールアドレス・誕生日・血液型などの基本的な項目はもちろんのこと、プリクラコーナーや趣味・特技・性格・チャームポイント・将来の夢・好きなもの・宝物・マイブームなどの様々な質問について、アンケートや穴埋め式のテストにたてつづけに答えていくような勢いで記入欄が作られています。さらには心理テストや恋バナコーナーまでもあり、フリースペースはメッセージが一言書ける程度に減ってしまいました。
 かつてのように自由なレイアウトでメッセージを書いてもらうタイプに比べて、書き手側のオリジナリティは出にくいかもしれませんが、書くことが苦手で何を書いていいのかなかなか思い浮かばない少女たちにとっては、質問に答えるだけのこれらの用紙には気楽に書けるでしょうし、全員同じ質問だからこそ、友だちによって答えが違うのを見て、それぞれの性格・考え方の違いを感じ取ることができるのかもしれません。みんな一緒に、一人だけ浮かないようにという配慮もされた、ある一定の枠の中で個性を出すというのが、なんとも今の子ども社会をよく表しているような気がします。

 そして2009年ごろから「サイン帳」は、「ちゃおキャラ きらきら☆キュート!クロdeクローバープロフ帳(ちゃお 2009年3月号)」「ベストフレンド★プロフ帳(りぼん 2011年3月号)」「ハッピーフレンズ☆プロフ帳&プロフシート(ちゃお 2015年3月号)」といった、「プロフ帳」という新しい名前で呼ばれるようになります。「プロフ」は「プロフィール」の略で、ネット上の自己紹介サイトで決まった項目に入力する「プロフサイト」がメディアで話題になり、少女たちの間に広まったことも影響しているのでしょう。

 この「プロフ帳」、現在では卒業シーズンの3月だけでなく年間を通して使われているようで、特に4月の新学期にクラス替えなどがあると、挨拶代わりに用紙を渡して友だちづくりのきっかけにする少女たちも多いとのこと。
 かつての「サイン帳」は、お別れする友だちとの思い出づくりだけではなく、新しい友だちとの出会いにもつながるコミュニケーションツールの一つへと変化しているのです。

 この回を書くにあたり、所有しているふろくのサイン帳を見返してみたところ、小学生時代の友だちや先生に書いてもらったものが何冊か見つかりました。もう30年以上も経つのに当時の記憶が鮮やかに甦って、ふろくの懐かしさだけでなく少女時代の懐かしさも合わせて味わえたような気がします。

 友だち、先生、仲間たち。みんなの気持ちと思い出がつまった1冊は、いくつになっても大切な宝物になりますね。

〈参考文献〉
『モノ流行 プロフィル帳 卒業前に交換』読売新聞 2009年3月2日朝刊

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