ふろくの花園 32.少女とふろくの歳時記 バレンタインデー(後)
2月14日のバレンタインデー当日に向けて、チョコレートのプレゼントのほかに準備しておくもの。それは、相手に渡すチョコレートを持つ自分自身です。
「チョコレートを渡す相手に良い印象をもってもらいたい、そしてあわよくば……」
本命チョコを準備している少女たちなら、きっと誰もが思っていることでしょう。
どうしたらバレンタインデーがうまくいくのか、その戦略もふろくがこっそり教えてくれるのです。
1980年代の終わりごろからギフト用グッズのほかに、「なかよしバレンタインBOOK
わたしのファーストバレンタイン作戦(なかよし 1988年2月号)」「香澄ちゃん
バレンタイン大作戦BOOK(りぼん 1989年2月号)」「なかよしバレンタインブック(なかよし 1990年2月号)」「バレンタイン大作戦ブック(りぼん 1997年2月号)」「バレンタイン突撃チョコBOOK(りぼん 1998年2月号)」「りぼん特製!!
ミニBOOK バレンタイン大作戦!!(りぼん 2000年2月号)」「桐子流バレンタイン必勝BOOK!(なかよし 2003年2月号)」「LOVEバレンタインBOOK(なかよし 2004年2月号)」など、バレンタイン対策用の別冊ふろくが登場しました。
チョコレートの作り方やラッピング方法だけでなく、好感度を上げるファッションやメイクなどの自分磨き、心理テストで見る相手のタイプ別アタック法や自分にピッタリの渡し方、2月14日の星座別運勢、おまじない作戦、さらにはコスメやショッピンググッズなどのプレゼント企画まで、バレンタインデーの成功率を上げるための数々のテクが満載です。
さらには、決戦の5日前から1まいずつ水にぬらしてアドバイスをもらう「わんころべえ
バレンタインカウントダウン占い(1994年2月号)」や、チョコレート、ファッション、ラッキーアイテム、告白の場所、ラッピングの成功率が占える「バレンタインドキドキあみだ占い(なかよし 2002年2月号)」といったバレンタイン向けの占いも。
最終的には運にすがってしまう部分もあるのですが、きっと少女たちには大きな助けになったことでしょう。
これで安心して、バレンタインデー当日を迎えられますね。
さて、バレンタインデーに無事チョコレートを渡せたあと、気になるのがホワイトデーのお返しです。
このホワイトデーは日本生まれの風習で、1978年に福岡の老舗菓子会社・石村萬盛堂がバレンタインデーのお返しとして、3月14日に「マシュマロの日」を作ったことが始まりとされています。その後、1980年に全国飴菓子工業協同組合が3月14日をマシュマロの白色から「ホワイトデー」と名付け、「マシュマロやクッキー、キャンディなどを男性から女性にプレゼントする日」というキャンペーンを始めたことで、バレンタインデーのお返しの日として定着しました。
「物をもらったらきちんとお返しをする」という、日本人の律義さを表している風習の一つといえるでしょう。
ホワイトデーはどちらかというと男子主導のイベントになるのですが、これを女子主導にしちゃおうというアイデアがふろくに盛り込まれました。
ホワイトデー予約券がついたタグで封をする「スイートバレンタインバッグ(なかよし 1989年2月号)」と、ボックスが2つに切り離せて、片方のボックスにお返しを入れてホワイトデーに渡す「バレンタインペアボックス(ちゃお 2000年2月号)」です。
どちらもバレンタインプレゼント用のギフトパックなのですが、ホワイトデーのお返しをバレンタインデーの時点から予約(という名のおねだり)するという、結構ちゃっかりとした女の子らしさを感じさせるふろくです。でも、元から仲の良い男子相手じゃないと使いにくいような気もします。
少女たちの小さな恋を応援してくれるバレンタインふろく。ステキな思い出がつくれるといいですね。
さて、21世紀を迎えて10数年がたった現在、バレンタインふろくは“ホンモノ”ふろくへの進化と同時に、かつてのスタイルとは少し変化をみせています。
15種類作れる甘かわデコパーツ型とバラエティスウィーツ型の2種類のシリコン型、デコ用のステンシルプレートがセットになった「スウィーツ・カンペキセット(なかよし 2013年2月号)」
オリジナルシリコン型にラッピングパック、ギフトシールがセットになった「バレンタイン友チョコセット(りぼん 2013年3月号)」
キュートなチョコが一度に16コ作れるオリジナルシリコン型と、スイーツメッセージペーパー、ギフトシール、クリアパックがセットになった「友チョコおうえんセット(りぼん 2014年3月号)」
12種類のチョコが作れるパティスリーシリコン型に加えて、メッセージ入りのクッキーが作れるデコクッキースタンプセット、リバーシブルクッキー型がセットになった「友チョコ&クッキー
かんぺきセット(りぼん 2015年3月号)」
大流行の3Dトリュフが8種類作れるアニマルトリュフ型、メッセージ入りチョコが作れるチョコバー型、トレンドのおしゃれマフィンもカンタンに作れるマフィンカップ2コと、話題のお菓子ツールがセットになった「友チョコパーティーセット(りぼん 2016年3月号)」
これらのふろくは、使いやすさでブームとなったシリコン型を中心とする本格的なお菓子作りキットで、東急ハンズもかっぱ橋もビックリ!! の充実した品揃え。雑誌を買うだけでこれだけのものがもらえるのですからお得ですよね。バレンタインデーでなくても、お菓子を作りたくなっちゃいそうです。
ふろくの名前に「友チョコ」という言葉が多くついていることからもわかりますが、少女たちの中でのバレンタインデーがここ数年、以前の恋愛的な“告白チョコ”から友だち同士のコミュニケーションがメインへと、意味合いが少しづつ変わりつつあります。「義理チョコ」よりも主体的にチョコレートを贈っている印象を受ける「友チョコ」という呼び名も、周囲との関係性を大切にする今の時代ならではでしょう。
少女たちの周りだけではなく、大人の世界でも近年のバレンタインデーは「女性が好きな男性にチョコレートを贈り、愛を告白する日」にとどまらず、「友チョコ」のほか、この時期にしか出ない特別なチョコレートを自分へのご褒美として買う「自分チョコ」や、男性から女性へチョコレートを贈る「逆チョコ」、そしてプレゼントもチョコレートに限らず花を贈るなど、多様化してきています。
「ひとつのチョコレートで親愛の情や日ごろの感謝の気持ちを伝え、それに対してきちんと返礼をする」
バレンタインデー、そしてホワイトデーは、西洋の風習を元にしていますが、日本人の細やかな心遣いが取り入れられた、とても日本らしいイベントといえるでしょう。
日ごろはなかなか口に出せない「好き」や「ありがとう」の言葉。1年に一度、そんな気持ちを相手に堂々と伝えられるイベントに、ふろくも一役買っているのです。
※行事・風習の由来については諸説あります
〈参考文献〉
『バレンタインデーの秘密 愛の宗教文化史』浜本隆志
著 平凡社 2015年
『12か月の絵図鑑 季節を知る・遊ぶ・感じる』長谷川康男
監修 PHP研究所 2015年
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 2月のまき』かこさとし
文・絵 小峰書店 2012年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア
編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『まるごとわかる 365日ものしり百科 2月』谷川健一
監修 日本図書センター 2005年
『バレンタインデー様変わり 友達、家族“シェア”で楽しむ』産経新聞 2016年2月11日
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