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2016年1月29日 (金)

ふろくの花園 29.少女とふろくの歳時記 お正月(後)

 お年玉に次ぐお正月の楽しみは、お友だちとやりとりする年賀状ではないでしょうか。
 年の初めに得意先などへ挨拶にうかがう「年始まわり」の習慣が、明治時代からの郵便制度の発達にともない、年賀状で新年の挨拶を送ることで簡略化されました。近ごろは年賀メールのやりとりも多くなりましたが、しばらく会っていない友人からの年賀状がポストに届いているのを見たときは、やはりうれしい気持ちになるものです。

 先生方の美しいイラストが描かれた年賀ハガキは『なかよし』『りぼん』の創刊当初からふろくになっていました。特に雑誌生まれのスターが輝き始める1970年代からは、少女漫画雑誌の本領発揮といったところです。
 本来の年賀ハガキとして使ってしまうと、自分の手元には残らなくなってしまうのが、雑誌を買わないと手に入らないふろくの悩ましいところ。友だちには出さずに自分宛ての年賀状にしたり、ハガキとして使わずファイルにとじてイラスト集のようにして保管するなど、少女たちはいろいろな方法で、大好きな先生方のイラストを大切にとっておきました。

 友だちから年賀状をもらうのはうれしいのですが、友だち宛てのたくさんの年賀状を書くことは、実はちょっぴり面倒くさいと思っていたりもします。
 そんな少女たちのために、年賀状を大量生産するための手助けとなるスタンプも、1980年代からふろくに登場しました。
 「あんみつ姫 お年賀スタンプ(なかよし 1987年1月号)」や、「今年もよろしくスタンプ(なかよし 1989年1月号)」といった、人気漫画のキャラクターや干支のイラストが描かれたものや、土台がスポンジのため力が入れやすくズレにくい「ムーぽん ペッタン年賀状スタンプ(なかよし 2000年1月号)」や、5個のスタンプをケースに入れてしまっておける「りぼんニューイヤースタンプ(りぼん 2000年1月号)」などが目白押し。ハガキにペタンと押すだけで、かわいい年賀状がラクチンに作れるようになりました。

 昔ながらのお正月遊びもふろくに登場しています。

 明治時代から雑誌の正月号恒例の付録である双六は、印刷技術が発達した江戸時代からお正月の遊びとして広まりました。“ふりだし”から“上り”までの間に起こるドラマの数々を味わうのも双六の醍醐味です。
 「日本はやまわりすごろく(なかよし 1957年1月号)」、「ヨッちゃんまんがすごろく(なかよし 1966年1月号)」、「新年GS〈グループサウンズ〉スゴロク(りぼん 1969年1月号)」、「あきらとみいこ 1・2・3・4・5・6〈いちにーさんすーごろく〉(ひとみ 1983年1月号)」、「ランゼと曜子 タイムトラベルすごろく(りぼん 1986年1月号)」、「ちゃおオールスター レジャーランドでGO! 大すごろく(ちゃお 1994年1月号)」、「年越しカウントダウンすごろく(なかよし 1996年1月号)」、「お正月お楽しみスゴロク(りぼん 2006年1月号)」など、『なかよし』『りぼん』の創刊時から年度を問わず、様々なテーマやキャラクターで少女たちのお正月に彩りを添えました。

 お正月の遊びとして、双六に負けず劣らず人気の「福笑い」は、顔のりんかくが描かれた紙の上に、目や鼻や口といった顔のパーツを目かくしをして並べていきます。江戸時代の後期から遊び始められたといわれ、明治時代にお正月の遊びとして盛んに行われるようになりました。パーツを並べ終わり目かくしをはずした時に目にする、できあがった顔の面白さに思わず笑ってしまいます。「笑う門には福来る」のことわざのように、新年の福を願って行われる遊びです。
 「くるみちゃんトモ子ちゃん 福わらい(なかよし 1956年1月号)」、「かのこちゃん福わらい(なかよし 1960年1月号)」、「ジュリーのおめでとうふくわらい(なかよし 1969年1月号)」、「亜土ちゃんふくわらい(りぼん 1971年1月号)」、「ペアで福笑い(ひとみ 1983年1月号)」、「お父さんは心配性 お父さん福笑い(りぼん 1987年1月号)」、「みい子&ムカムカ 新春まんぷくふくわらい(ちゃお 1994年1月号)」、「風子ちゃん 福笑い(りぼん 2002年1月号)」など、双六同様年度を問わず、その当時の人気スターや人気漫画のキャラクターが登場しました。

 少女たちのお正月の外遊びといえば、羽子板で羽根を打ち合う「羽根つき」です。ミスをしたら顔に墨を塗られるペナルティもあって、結構真剣になってしまいます。
 羽根つきに使う羽根はトンボをかたどっていて、トンボは蚊を食べるため子どもたちが蚊にさされないおまじないとして、室町時代から宮中で行われていた遊びです。江戸時代から一般に広まり、お正月の女の子の遊びとなっていきました。
 本来は外で遊ぶ羽根つきを、家の中で楽しめるのが「ぴちぴち羽根つきルーレット(なかよし 2003年1月号)」です。羽子板で羽根を打ち合う代わりに、ルーレットを回し合ってその指示に従います。ミスをした場合は顔に墨を塗る必要はなく、ゲーム台紙に描かれたキャラクターの顔に墨のようなシールをはるだけなので、汚れず安心です。それでも、ルーレットが指す12個のマスのうち8つが自分か相手のどちらかにシールをはる内容なので、気は抜けません。大人がこのゲームで遊ぶときは、ほぼ100%遊んでいる本人の顔に何かをするルールに変わることでしょう。なかなか盛り上がりそうなゲームです。

 そして、読みあげられた札に合うものを、場に広げられた札の中から探して取る「かるた」もあります。室町時代にポルトガルから伝わったカード(トランプ)に、日本で古くからあった「歌貝」という和歌の上下を合わせる遊びが結びついて、今のような遊び方ができたといわれています。江戸時代のなかごろからお正月の遊びとして広まりました。
 「どうようかるた(りぼん 1956年1月号)」、「世界名作おひめさまかるた(りぼん 1957年1月号)」、「ナナ子バレーかるた(なかよし 1960年1月号)」、「おしゃれかるた(りぼん 1960年1月号)」、「社会科かるた(なかよし 1963年1月号)」、「スターかるた(りぼん 1966年1月号)」、「きんぎょ注意報! わいわいキャラクターカルタ(なかよし 1992年1月号)」、「チャチャ 新春ワンワンかるた(りぼん 1994年1月号)」、「ちゃおオールスターかるた(ちゃお 1996年1月号)」、「りぼんオールスター プチかるた(りぼん 1997年1月号)」、「なかよしオールスター ラッキーお年玉かるた(1998年1月号)」、「りぼんアイドル スーパーかるた21(りぼん 2001年1月号)」など、こちらも年度を問わず親しまれていたふろくです。枚数が多く、読み札に説明的な内容も入れられるカルタは、一つのテーマ、特に漫画作品やキャラクターについて大量の情報を読者である少女たちに伝えられるというメリットも持ち合わせています。少女たちは楽しく遊びながら、自分が読んでいる雑誌の漫画やキャラクターを知らず知らずのうちに覚えることができたのです。

 かるたと並ぶカードゲームであるトランプは、お正月の遊びというわけではなく、季節を問わず人気の遊びですが、家族や親せき、友だちなど大勢で集まる機会が多いお正月に遊べるよう、1960年代の「ふたあつあそべる トランプかるた(なかよし 1962年1月号)」や、「62年型ハッピートランプ(りぼん 1962年1月号)」の頃から1月号定番のふろくとなりました。ただ、1980年代後半からは、旅行などレジャーのおともにもできるよう、夏休みの定番へと移ってきています。
 そんな中、『ちゃお』がここ数年、「ちび☆デビ! ちび☆コミックトランプ(2012年)」、「ちゃおキャラ大集合!神笑い!!ちゃおだじゃれトランプ(2013年)」、「爆笑!!JSあるあるトランプ(2014年)」、「ちゃおバラエティトランプ2015(2015年)」と1月号にトランプをつけたことで、「今でもトランプはお正月のふろくの一つなんだ」と、なぜかホッとした気持ちになりました。

 また、1980年代までのふろくのトランプには、ケースなどに「児童用トランプ」と書かれているものがあり、子どもの頃は「トランプに子ども用と大人用があるのかな?」と不思議に思っていたものです。1989年に消費税が導入されるまでは、トランプや花札などのギャンブル性の高いカードゲーム類に対して税金が掛けられていて、子ども向けのものは課税の対象外だったため、子ども向け雑誌の付録にトランプをつける場合には「児童用トランプ」の表記を入れていた、ということを大人になってから知ることができました。

 そして近年、日本のお正月はデジタル化や国際化が進んだり、元日から街が動き出すようになったことなどで、昔のようなお正月らしさがなくなってきたと言われています。
 『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくも実のところ、“ホンモノ”ふろくやオシャレなデザインの大きなふろくがメインとなり、紙製の細々としたものが少なくなってきた2010年ごろから、お正月らしさをはじめとする季節を感じさせるふろくが姿を消しつつあるのが現状です。

 それでも、お正月に役立つ“ホンモノ”ふろくが現在でも登場しています。 

 自分でデザインできるシリコンスタンプとスタンプパッド2色に、メッセージカードやデコシール、おみくじシールがついて、オリジナルカードが簡単に作れる「おうちでプリント屋さんセット♪(なかよし 2013年1月号)」
 ネオンカラー筆ペンとネオンクレヨンマーカーの極上ペンセットにお正月限定柄のマスキングテープのほか、スクラッチシールや金フチクリアシール、イラストベースシールなどでオリジナルのシールが作れる、年賀状をかわいくするためのフルセット「キラ☆チェン年賀状デコセット(りぼん 2015年1月号)」
 デコテープに3ステップスタンプ、初笑いシール、スクラッチシール、クリアフレームシールで、華やか年賀状がカンタンにできるテクがぎっしりの「年賀状デコセット2016(りぼん 2016年1月号)」といった、“ホンモノ”ふろくならではの文房具ラインナップを駆使した、年賀状を作るためのふろくです。
 メールとLINEの普及や年賀ハガキの売上げが年々少なくなっていったりと、少女たちの間にも年賀状離れが進んでいると思いきや、“デコる”ことが大好きな彼女たちにとって、その“デコ熱”を存分に発揮できる年賀状はまだまだ大切なコミュニケーションツールの一つであるようですね。

 もう一つは、もらったお年玉を入れておく貯金箱なのですが、紙製の組み立てふろくではない新世紀の“ホンモノ”ふろくは、かなり本格的なモノになっています。
 「金運上昇!ATM型貯金箱(ちゃお 2016年1月号)」は、カードと暗証番号がついた貯金箱。カードをさして、あらかじめ設定されている4ケタの暗証番号をプッシュすると引き出しがオープンするというATM風システムで、コインが約30~40枚入り、500円玉なら15,000円分貯められます。金運アップに効くイエローカラーで幸運の4つ葉だけでなく、さらに幸運を呼ぶ6つ葉のクローバーも描かれていたりと、縁起が担がれているところにもお正月らしさを感じさせます。

 少女たちに日本の四季、伝統、行事を伝えるという、ふろくの大切な役割の一つがなくなりつつあることに対して寂しい思いを抱くのは、おそらく自分だけではないでしょう。
 子どもたちに様々な年中行事に親しんで、身近に感じてほしいという願いは、私たち全ての大人が共通して持っているものなのです。

※行事・風習の由来については諸説あります

〈参考文献〉
『親子でたのしむ日本の行事』平凡社 2014年
『かこさとし こどもの行事 しぜんと生活 1月のまき』かこさとし 文・絵 小峰書店 2011年
『親子で学ぶ 季節行事とマナーの基本』クレア 編著 毎日コミュニケーションズ 2007年
『おもちゃ博物館6 双六・福笑い』多田敏捷 編 京都書院 1992年

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