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2015年12月20日 (日)

ふろくの花園 26.新世紀のふろくの花園 (4)自分だけのグッズを作ろう!

 21世紀を迎えて数年が経ち、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくは「市販品とほぼ同じ素材を使った“ホンモノ”ふろくの登場」「外部の人気キャラクター・商品を取り入れた“街の人気者”ふろくの再登場」「ファッション性を重視し漫画色を消した“オシャレ”ふろくの登場」と、新世紀の少女たちに向けて生まれ変わりつつあります。
 毎月雑誌を買って、まず最初に開くのが「次号ふろくお知らせ」のページであることは昭和50年代の子ども時代から変わらないのですが、人気まんが家や人気漫画のキャラクターのイラストではない、お店で売っているものと同じようなふろくを目にすると、「こんなモノまでふろくにできるなんてスゴイな~」という純粋な感動と同時に、「昔とは変わっちゃったよな~」と、しみじみ感じてしまいます。
 その中でも特に、市販品とほぼ同等のモノがメインになることで紙の組み立てふろくがほとんど姿を見せなくなったことに対し、少女たちが自分でモノを組み立てることや、創造性(モノがどのようにできているかを考える力)を育む場が少なくなってしまうのではないかという、少女たちの“モノづくり”体験の機会が減ってしまうことを危惧する気持ちを抱いたことも事実です。もちろん、少女たちとハンドメイドとは切っても切り離せない関係ですし、ふろくを組み立てることだけが“モノづくり”ではありませんが、子ども向け雑誌のふろくが持っていた役割の一つが失われてしまったかに思えて、少し寂しくなりました。

 しかし、新世紀のふろくを改めて見ていくことで、決してそんなことはないんだと気付きました。どうしても自分が実際に接していた時代を基準として物事を見てしまい、そこから変わってしまったことをついマイナスにとらえがちなのですが、少し離れたところから客観的な気持ちで見直してみると、その時代に合った良さを感じとることができました。

 ただ完成品を与えているだけと思われがちな“ホンモノ”ふろくも、ちゃんと少女たちの“モノづくり”体験をサポートしているのです。

 少女たちの手作り遊びとして長年親しまれているビーズ手芸は、色とりどりのキラキラしたビーズたちをワイヤーやテグスに通してアクセサリーやマスコットが簡単に作れます。小学生のころはよく、近所のお店でビーズとワイヤーと作り方の紙がセットになった子ども向けのビーズキットを買って、お花や果物、動物のブローチなどを作っていたものです。
 2002~2004年を中心に、ちょうどこのころにビーズで作った携帯電話のストラップやブレスレットなどが流行ったこともあってか、オリジナルのアクセサリーが作れるビーズキットがふろくに登場しました。

 人気TV番組『おはスタ』の「おはガール」とおそろいのアクセサリーや携帯電話のストラップが作れる「3WAYおはガールアクセサリー(ちゃお 2002年9月号)」や、ピンクビーズ15個+透明ビーズ15個+しずくビーズ10個+かいがらビーズ1個+ダイヤビーズ15個のセットで漫画の主人公「マーメイドプリンセスるちあ」とおそろいのアクセサリーが作れる「ぴちぴちアクアブレスレット&キラキラ☆マーメイドリング(なかよし 2003年4月号)」、キラキラピンクの宝石ちっくなビーズとパールビーズがセットになった「ジュエルビーズ アクセサリーセット(ちゃお 2004年12月号)」、とりはずせるハート型チャームもついた「きらきら★ビーズセット(りぼん 2004年7月号)」など、ふろくとはいえ、ビーズの色や形、数もそろっています。これだけでもブレスレットや指輪、ネックレスなどを作れるのですが、さらに市販のビーズも組み合わせることで自分だけのオリジナルアクセサリーを手作りできたのです。

 2008年ごろから、“デコる”や“盛る〈もる〉”という言葉をよく目にするようになりました。“デコる”は「デコレーション」=飾り、飾りつけ、装飾(『デジタル大辞泉』より)することからきた言葉、“盛る〈もる〉”は本来の意味である、積んで高くする、積み上げる、(俗に)化粧を濃くする、大げさに言う(『デジタル大辞泉』より)から、たくさん飾り立てることを指す言葉となっているようです。携帯電話にガラスやアクリルの粒を張り付けてキラキラと飾る“デコ”が若い女性たちの間に広がったことをきっかけに、文房具、アクセサリー、バッグなどの持ち物にも個性的な飾りつけをする=“デコる”、飾りをつけまくる=“盛る〈もる〉”が少女たちの間で一大ムーブメントを巻き起こします。
 「かわいく、かっこよくデコって自分だけのノートやペンケースを作りたいけど、やり方がわからないし、何を使えばいいんだろう……」というデコ初心者の少女たちに向けて、キラキラしたシールや、デコ文字・飾り文字を描くための見本下じき、かわいい模様が簡単に貼れるデコテープやマスキングテープ、ラメが入ったのりペンなど、様々なデコ用アイテムを2008年ごろからふろくに登場させ、少女たちのデコライフをバックアップしました。

 2010年ごろからは、シンプルデザインのノートと、シール、ジェルペン、デコテープ、ホロシート、ステンシルなど全部で10点セットの「めちゃ盛りスーパーデコセット(りぼん 2010年9月号)」、フリータイプのノートと、デコペーパー、シール、ファーシート、プチリボン、レース風デコテープなど、なんと全部で13点セット! ガーリーデコ、ポップデコ、森デコも盛れちゃう「激カワ★メガ盛りデコセット13点!!(りぼん 2011年9月号)」、あこがれのスマホみたいなケースを「きせかえ☆デコシール」と「キャラ☆デコシール」でデコって、“デコ電”気分が味わえちゃう「NY-2011 Autumn Ver. スマホちっくケース(なかよし 2011年11月号)」、50ピースの本物ストーンシールでカチューシャとコンコルドをデコって、オリジナルのアクセサリーが作れる「デコカチューシャ&デココンコルド&デコストーンセット(なかよし 2012年1月号)」、シンプルなペンケースをステッカーとミラーシール、ふせんでデコって自分仕様にアレンジ、大人かわいいマイ空間がつくれちゃう「アレンジ☆ペンケースセット(りぼん 2015年10月号)」などの、デコ用アイテムだけではなく土台となる文房具やアクセサリーもセットにしたトータルパッケージで届けられています。また、これらのデコセットを使った「デココンテスト」「デコり選手権」も各誌で開催され、少女たちの“デコ熱”を感じさせる応募作品が多数寄せられました。“デコ”が少女たちの生活にすっかり根づいたことが見てとれますね。

 2014年ごろから、直径1.5cmほどの小さなカラフルゴムやシリコンバンドを編んで作る、バンドアクセサリーが街中で流行りはじめました。元サッカー選手のベッカムやイギリス王室のキャサリン妃など、海外セレブが愛用するほどのオシャレ度も注目を集めた一因のようです。このバンドアクセサリーを作るためのキットは複数販売されているのですが、その中でも「アメリカで超大人気!」「世界中で1000万個以上売れた大ヒットグッズ!」「ブレスレットキットの本家本元!」「いろ~んな賞をとりまくり★」というふれこみの「Rainbow Loom〈レインボールーム〉」が『なかよし』とコラボ、「Rainbow Loom〈レインボールーム〉スペシャルセット(なかよし 2015年8月号)」としてふろくに登場し、話題になりました。ちなみに「Loom〈ルーム〉」とは英語で「織機」の意味です(『デジタル大辞泉』より)。ミニレインボールーム+編み棒、スイーツチャーム、光るパステルレインボー輪ゴムの3点セットで、『なかよし』でしかゲットできないオリジナルのセットとのこと。もしかして、このセットを手に入れるために『なかよし』を買った大人も数多くいたのではないでしょうか。本誌の約8倍サイズでお友だちとも一緒に見られる特大の作り方説明書もついていて、多数の写真を使って手順を詳しく説明しているのと、完成までにかかる時間の目安も書いてあり、初めてチャレンジする子でも飽きずに編めるよう心配りがされています。

 雑誌を買うだけで、いま話題の新しい手芸が体験できるなんて、少女たちにとっては何よりのプレゼントでしょう。ここでも、“街の人気者”ふろくのパワーを感じとることができるのです。

 少女たちが夏休みにいつも頭を悩ませるのが、自由研究の宿題です。「夏休みの宿題やってない! 自由研究どうしよう!! 楽しくってがんばれる自由研究ってないかなあ~」という少女たちに向けて、『なかよし』が2年続けて自由研究をサポートするふろくを届けました。

 まずは、自分だけのマイファーストカメラで“カメラ女子”になれちゃう「ピンホールカメラセット(2014年9月号)」は、レンズを使わずに針穴(ピンホール)で撮影するピンホールカメラとカメラをデコるためのシール、宿題おたすけブックの3点セット。王冠型のつまみを持ち上げて数秒待って、下げるだけで撮影できるカメラは市販の35ミリフィルムが使えるため、長く愛用できそうです。宿題おたすけブックにはいろいろな場面での写真の撮り方が載っていて、デジタルカメラとは一味違ったオシャレ写真や、なんと心霊写真まで撮れるとのこと。またピンホールカメラのしくみも解説していて、自由研究に直結できる内容となっています。
 そして翌年、さらにパワーアップして登場したのが、手作り万華鏡キット「キラメキ☆万華鏡〈カレイドスコープ〉セット(2015年9月号)」です。万華鏡本体のパーツとミラーシート、着せかえシート、中に入れるホログラムパーツとプラバン、宿題おたすけシートのセットで、万華鏡だけでなく、いま流行中のプラバン作りも体験できちゃうよくばりなセットです。宿題おたすけシートには万華鏡の見え方のしくみのほか、「なぜ熱を加えるとプラバンは縮むのか?」「身の回りにあるものを万華鏡に入れたらどう見える?」など自由研究のヒントが満載です。
 カメラ、万華鏡、プラバンとも、ただ作って遊ぶだけではなく、それらのしくみも学べるという点で、“モノづくり”体験を楽しめるふろくといえるでしょう。

 『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくに紙の組み立てふろくがほとんど見られなくなった今、かつての組み立てとは違ったかたちで少女たちの創造性やセンスを育む場が提供されています。完成品をただ与えるだけではない、+αを自分好みにカスタマイズする余地を残したふろく。これは、ある意味デザイン的に完成された人気漫画のキャラクターグッズでは難しいことでした。キャラクター色と少女漫画色をあえて消すことで、使う側のオリジナリティを浮き立たせることができるようになったのです。自分でデザインを考えて、自分だけのモノを作れるのは、新世紀のふろくならではの醍醐味となりました。

 “ホンモノ”ふろくに変わってしまっても、少女たちに“モノづくり”体験をしてほしい、創造性を育んでほしいという作り手の願いは、今でも変わらずに込められているのです。

 新世紀の少女たちはたくさんのモノに囲まれ、たくさんのモノを見て育っているため、かつての少女たちよりも、自分でモノを選ぶ目に自信をもっているように思います。“自分で考えたい・選びたい・決めたい”という意志を持った彼女たちが、自分でデザインを選び、自分で作った、自分だけのグッズを持てることは何よりも魅力的なことなのかもしれません。

〈参考文献〉
『読売新聞』2008年1月19日朝刊「デコ キラキラ」
『日経TRENDY』2014年12月号 日経BP社

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