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2015年11月の3件の記事

2015年11月14日 (土)

いいコトしたら、シールをペタッ☆

 「ノストラダムスの大予言」で地球に何かが起こると言われ続けてきた1999年、東京・渋谷の女子高校生の間で、ある願かけグッズが話題になりました。一見日本のパスポートに似たデザインで、ピンクや青、緑などの色をしたカラフルな手帳のようなもの。

 この「ヘブンズパスポート」は、パスポートとシール、天国へのパスカードの3点セット。まず、かなえたい願いごとを1つ決めます。そして、“いいコト”を1つするごとにイラストのピースになっている付属のシールを1枚ずつパスポートに貼っていきます。シールを100枚貼るとパスポートの3つのイラストが完成し、そのパスポートと天国へのパスカードをいつも大事に持ち歩いていると願いごとがかなうとのこと。すなわち、「“いいコト”を100回すると願いごとが1つかなうよ」という願かけです。

 1998年の発売以来口コミで広がり、翌年メディアで取り上げられたことで人気に火がつきました。“いいコト”というのは、世の中のためになることだけではなく、あくまでも自分が“いいコト”と思ったことでOK。「早起きした」「学校へちゃんと行った」や「笑顔で過ごせた」だって、れっきとした“いいコト”なのです。「善行を積めば、良いことになって自分に還ってくる」ということを、ゲーム感覚で気軽に楽しめる点でも彼女たちの心をつかんだのでしょう。

 そして、年少の少女たちにも、この“いいコト”願かけに参加できるようなふろくが届けられました。

 写真左:ハッピー・パスポート シール&ストックブック(ちゃお 平成12年1月号)
 写真右:ヘブンズパスポート

 20世紀最後の年となる、2000年の幕開けに登場した「ハッピー・パスポート シール&ストックブック」は、ミニ6穴手帳にとじられるサイズのパスポートとシールのセット。かわいいイラストが描かれた絵本仕立てになっています。「ヘブンズパスポート」同様、まずかなえたい願いごとを決め、毎日何か“いいコト”があるたびにシールを1枚ずつ貼っていき、絵本の9つの場面を完成させます。完成したパスポートを大切に持ち歩くと、絵本が願いごとをかなえてくれるとのこと。“いいコト”が自発的なものだけでなく受動的なものでもよい点や、貼るシールの数が9つだけでよい点に、飽きっぽい子どもにも最後まで参加してほしいという心配りを感じさせます。

 どちらのパスポートにも、ピラミッド・パワーでの願かけ(ピラミッド・パワーにおねがい☆参照)にあったように、「悪い願いごとはダメ」「本当に願いがかなうと信じて強く願う」という注意書きがされています。「願望を強く願う→自分の願望を自覚する→願望を実現させたいという気持ちが強くなる→願望実現のために行動を起こす」という、願望実現のためのステップを、このパスポートを使って“いいコト”願かけに参加することで自然と踏んでいるのです。なので悪いことを願うのは、その方向へ行動を起こしてしまうので、良くないことなのでしょう。

 「願いがかなったよ」というおたよりが、ふろくコーナーには見当たらなかったため、実際に少女たちがこのパスポートで願いをかなえられたのかどうかはわかりません。しかし、「席を譲りたいけど断られたらどうしよう」「この落とし物、交番に届けたほうがいいのかな、でも探しに戻ってくるかもしれないし」「あの子たちうるさいけど、注意したら逆ギレされそう」など、何をすれば正しいのかが曖昧な、不安定で不透明なこの世紀末に、このパスポートはきっと、“いいコト”をすることにためらいがちな若者の背中を押してくれたのではないでしょうか。

2015年11月24日 (火)

ふろくの花園 24.新世紀のふろくの花園 (2)街の人気者、再来

 2001年に「雑誌作成上の留意事項」が大幅改訂された要因のひとつに、1998年以降の雑誌市場の落ち込みがありました(23.新世紀のふろくの花園 (1)ホンモノがふろくに!?参照)。それは、女子小学生向けの漫画雑誌でも同じことだったのです。

 TVアニメ化されるほどの人気漫画とキャラクターを次々と繰り出し、上昇を続けた『なかよし』と『りぼん』の発行部数は、1994年ごろにそれぞれ210万部、255万部と最高を記録します。しかしそこが頂点で、2000年にはそれぞれ51万部、132万部とこれまでの人気が信じられないほど急落してしまいました。TVアニメをきっかけに雑誌を買うようになった読者が作品の連載終了で離れたり、子どもたちの興味がゲームや携帯電話、インターネットなどに向き、雑誌を利用する機会が少なくなってしまったり、さらには少子化が進んでいたりと理由はいろいろ考えられます。少女たちの心をつかむものが漫画雑誌の他にも世の中に数多く存在するようになったことで、雑誌から生まれた3大スター“マスコットキャラクター・まんが家・漫画作品”の、少女たちをひきつける力が以前より弱まってしまったことは否めないでしょう。

 それと時を同じくして、1990年代の終わりごろから主に『なかよし』と『ちゃお』で、芸能界の人気アイドルや、ゲームやアニメ、メーカー生まれのキャラクターが大々的に漫画やふろくに登場するようになりました。いわゆる“街の人気者”たちが、昭和40年代以来、再び少女漫画雑誌やふろくに戻ってきたのです。

 まずは20世紀末に登場した“街の人気者”のふろくから見てみましょう。

 1998~2001年にかけて、年に一度の『なかよし』恒例ふろくとなったのが、「NAKAYOSI IDOL BOOK〈なかよしアイドルブック〉」です。ともさかりえ、宇多田ヒカル、モーニング娘。、w-inds.など当時の人気アイドルが勢ぞろい。カラーグラビアやインタビューのほか、アイドルデータファイル、アイドルが出演するTV番組やCMの情報など企画特集満載で、ふろくだけど読み応えもある別冊でした。『明星』や『平凡』の『なかよし』版といったところでしょうか。
 もうひとつの人気者は、安室奈美恵やSPEEDなどの人気スターを次々生み出し、少女たちの憧れとなった沖縄のタレントスクール、「沖縄アクターズスクール」です。このスクールを舞台にした漫画『はじけてB.B.』が1997年から『ちゃお』で連載され、読者の少女たちと同年代のアクターズスクール所属アイドルが1998~1999年ごろのふろくに登場しています。

 次は、ゲームという新しいメディアから生まれた人気者です。
 1996年にバンダイから発売されたペットを育てる携帯ゲーム機「たまごっち」は、発売直後から女子中高生の間で大ブレイク。品切れが続出し常に品薄の状態が続き、次はいつ店に入荷するのかが話題となりました。入荷日には徹夜で行列しないと買えないこともあったそうです。この「たまごっち」のキャラクターが1998年ごろ、『なかよし』と『ちゃお』でふろくのイラストになりました。ちなみに「たまごっち」は21世紀に入り再発売され、2005年ごろから再び『ちゃお』に登場しています。
 同じ1996年に任天堂から発売されたゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター」は、ポケモンワールドに住むいろいろな種類の生き物“ポケットモンスター(通称ポケモン)”を捕まえて、友だちと交換しながら集め育てていくゲームです。その楽しさが子どもたちを魅了し、TVアニメにもなった言わずと知れた人気作品で、『ちゃお』で1997年から『PiPiPi★アドベンチャー』として連載されました。少女向けに、ポケモンを集める主人公を女の子にしてポケモンたちもかわいくキャラクター化。黄色いねずみポケモン・ピカチュウを中心にしたふろくも多数登場し、少女たちの人気を集めました。

 21世紀を迎えても“街の人気者”は続々とふろくに登場します。

 1997年にTVのオーディション番組でグループを結成、1998年にメジャーデビューしたアイドルグループの「モーニング娘。」。『なかよし』では、彼女たちの笑顔の裏に光る汗と涙のストーリーをリアルに再現した『娘。物語』が2001年から連載されました。ふろくも多数登場しましたが、中でもメンバーの1人・後藤真希ちゃんのフィギュア「モーニング娘。キャラクターマスコットなかよしバージョン(2001年12月号)」が話題となりました。また、2000年に結成された派生グループ「ミニモニ。」も2001年から『ちゃお』に登場しています。
 2005年に誕生して2009年ごろから広く人気を集めるようになり、「握手会」「選抜総選挙」「じゃんけん大会」など常に世の中に話題を提供し続けている“国民的アイドル”「AKB48」もついに『なかよし』にやってきました。彼女たちをモチーフとした漫画『AKB0048』が2012年から連載開始。遠い未来の「AKB48」は「AKB0048」と名前を変え、初代48の神話性を守るためにメンバーの「襲名性」をとっているという設定で、ダメッ子研究生の主人公がオーディションで大失敗しちゃったけど、“伝説のセンター・あっちゃん”を襲名することになるという、少女漫画によくあるシンデレラストーリーです。「AKB0048 あっちゃん&まゆゆ&ともちん きせかえシール(2012年6月号)」や「AKB0048 神セブン占い☆せんす(2012年8月号)」など、かわいくキャラクター化された人気メンバーたちが描かれたふろくが登場しました。

 1974年に誕生したサンリオのキャラクター「ハローキティ」が、1997年ごろに当時の人気芸能人がファンであることを公言したことでブーム再燃。女子高生・OL・主婦などに向けた商品も発売され、海外でも人気に火がついたといわれています。この“キティちゃん”が2001年に『ちゃお』、2007年に『りぼん』のふろくに登場しました。“キティちゃん”は昭和50年代も少女たちの人気者だったのですが、当時は『なかよし』や『りぼん』などのふろくになることはありませんでした。メーカー生まれのキャラクターがふろくにそのまま登場するということは、残念ながら、雑誌生まれの「マスコットキャラクター」の力が弱まったことのあらわれになってしまうのでしょうか。
 そして最近、少女たちの間で人気が出てきたキャラクターが、2012年ごろにサンエックスから誕生した「すみっコぐらし」です。「すみっこにいると“落ちつく”動物やモノたち」で、2015年から『りぼん』と『ちゃお』でシールやメモがふろくになっています。
 「妖怪ウォッチ」は「ポケットモンスター」同様、ゲームソフトやTVアニメ、玩具が人気となり、『ちゃお』で2014年から女の子キャラのフミちゃんを主人公にして漫画の連載が開始されました。猫の妖怪「ジバニャン」や狛犬の妖怪「コマさん」のかわいいイラストのシールやメモがふろくになっています。
 さらには、あの千葉県船橋市の非公認キャラ「ふなっしー」も『ちゃお』に登場。組み立て式の「ジャンピングヒャッハー貯金箱(2015年6月号)」がふろくになりました。

 21世紀に入って新しく登場した少女たちにとっての“人気者”は、ファッション・おしゃれをテーマにしたアーケードカードゲームです。
 「トレーディングカードアーケードゲーム」ともいわれる、アイテムカードを集めてプレイするアーケードゲームで、主に玩具店、ショッピングモールやデパートなどの玩具売り場やゲームコーナーに置かれています。1回100円から遊べて、お金を入れるとファッションアイテムが描かれたカードが出てきてゲームが始まります。昔からの少女遊びの定番“着せかえ”の要素を取り入れていて、手持ちのアイテムカードを組み合わせて、選んだキャラクターの「髪型」「洋服」「靴」「アクセサリー」などをコーディネートした後に、リズムゲームによるパフォーマンスステージに挑戦するのが大体の流れです。
 2004年の「オシャレ魔女 ラブandベリー」を始めとし、2010年に「プリティーリズム」、2012年に「アイカツ!」、2014年には「プリパラ」と、この種類のゲームが次々と登場します。ゲームで遊びながらファッションを覚えられ、おしゃれに興味を持つことで、低学年の少女たちにもファッションが身近なものとなり、自分でおしゃれをすることが当たり前になっていったのです。
 『ちゃお』では2006年ごろから、これらのゲームで遊べるアイテムカードやゲーム情報が毎号のようにふろくになっています。ゲーム機の形をした「オシャレ魔女 ラブandベリー スーパーキュートボックス(2006年8月号)」は、ただ小物入れとして使うだけではなく、ゲームのことを知らない少女たちへの「お店にある、この形の機械で遊ぶんだよ」というガイド的役割も持ち合わせていました。
 そして「プリティーリズム」は『りぼん』にも登場します。『ちゃお』の2011年より早く、2010年より漫画の連載を開始。ゲームで使用するファッションアイテムカードとなる、ハート型をしたプラスチック製の「プリズムストーン」がふろくになりました。
 ふろくのアイテムカードはいずれも雑誌オリジナルのデザインで、雑誌を買わないと手に入らないものだったため、このカードが欲しくて雑誌を手に取った少女たちもたくさんいたのではないでしょうか。

 こうして、“街の人気者”たちを積極的に取り入れてきた『ちゃお』は、『なかよし』と『りぼん』の発行部数が急落していく中でも次第に発行部数を伸ばし、1999年に『なかよし』の、2004年には『りぼん』の発行部数をも抜いて、ついに3誌のトップに立ちました。

 少女たちの好きなもの、欲しいものを追求してきた少女漫画誌のふろくですが、雑誌生まれの3大スターの輝きが弱まり、雑誌から生まれたまんが家が漫画を描いてアニメ化し、それをふろくにすれば即雑誌が売れるという時代ではなくなってきたという現実を認めて、“街の人気者”たちをそのまま受け入れざるを得なくなってきたのです。特に、昭和50年代以降、雑誌生まれの作家・作品とその世界観を大切に守ってきた『りぼん』が、『ハローキティ』や『プリティーリズム』で外部の作品・キャラクターと手を結び、それを前面に押し出したことは衝撃的といっていいほどの出来事で、とても大きな決断だったに違いありません。それほど発行部数の落ち込みは深刻なことだったのでしょう。

 “街の人気者”の力を借りた結果、昭和40年代の「街の人気者をみんなで共有する」ふろくの時代がまた戻ってきつつあります。モノが豊富でなんでも揃っている新世紀のふろくが、まだモノが揃いきっていない時代のふろくに近くなってきているのは、興味深いことですね。

 ただ、ゲームのアイテムカードは、雑誌やふろくの中だけで完結するものではなく、雑誌の外の商品で楽しむもののため、別にお金を使わないとふろくで遊ぶことができません。バブル崩壊やリーマンショックの影響を受けた景気の低迷で、モノが売れなくなったといわれていることもあり、子どものモノにもお金を使ってほしいという商業的な事情も多少見え隠れしているように感じます。
 “街の人気者”が雑誌やふろくに登場することで、雑誌のふろくは商品の広告ツールとしても使われるようになってきました。

 そして新世紀を迎えた数年後、雑誌生まれの3大スターの輝きが弱まっただけでなく、少女漫画雑誌とそのふろくのあり方をさらに大きく揺るがすムーブメントが少女たちの間で起こり始めていたのです。

〈参考文献〉
『雑誌新聞総かたろぐ(1979年版~2015年版)』メディア・リサーチ・センター 1979年~2015年
『週刊日録20世紀 1997年』講談社 1999年
『週刊日録20世紀 Special17 懐かしのオモチャ・絵本・遊び』講談社 1999年

2015年11月30日 (月)

ふろくの花園 25.新世紀のふろくの花園 (3)オシャレが大好き!

 少女たちの“オシャレ大好き”パワーが、少女漫画雑誌『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくのスタイルを変える!?
 人気漫画のキャラクターグッズからオシャレなファッショングッズへ。新世紀の少女たちのニーズを取り入れた“ファッショナブル”なふろくとは、どのようなものなのでしょうか?

 21世紀に入り、小学生ぐらいの女の子を街で見かけると、服装やヘアスタイル、持ち物などが自分の子ども時代とは比べ物にならないほど可愛くカッコよく決まっていて、みんなオシャレになったなあと感じます。デパートやショッピングモールの子ども服売り場にはジュニア向けブランドの洋服が並び、子ども向けの化粧品やメイク道具までもが販売されています。昭和50年代に小学生だった自分は「オシャレなんてまだ早い」と親に散々言われ、親の選んだ洋服を着せられていたものでした。しかし今では少女たちに向けたファッション情報やアイテムが増加し、オシャレを取り入れたゲームも人気です。親世代はもちろんのこと世の中全体が、子どもが主体的にオシャレを楽しみファッションにお金をかけることに寛容になっているようで、うらやましい限りです。

 20世紀の終わりから21世紀のはじめにかけて、『なかよし』や『りぼん』を卒業する世代であるローティーン・主に中学生の少女たちをターゲットにしたファッション情報誌が次々と登場します。1995年にこれまでの占い・心理テスト中心から、ファッション専門誌としてリニューアルした『ピチレモン』を皮切りに、1997年には『nicola〈ニコラ〉』、2001年には『ラブベリー』『melon〈メロン〉』『CANDY〈キャンディ〉』の3誌、2003年には『Hana*chu→〈ハナチュー〉』が創刊されました。ファッションや美容、生活情報など女性ファッション誌の入門誌的な構成で、ファッショングッズや文房具などのふろくもついています。2003年から2005年にかけてがこの6誌が競い合う、ローティーン向けファッション誌がいちばん盛り上がりを見せていた時期でした。“ホンモノ”ふろくをつけられるようになったことも、この創刊ラッシュを後押ししたのではないでしょうか。しかしそれ以降は次々と休刊してしまい、2015年の『ピチレモン』休刊後は『nicola〈ニコラ〉』のみが生き残り、少女たちに支持され続けています。

 そしてついに、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』とターゲットを同じくした、小学校高学年の少女たちに向けたファッション情報誌も登場しました。2009年に『ニコ☆プチ』、2011年に『JSガール』、2013年に『キラ☆ピチ』の3誌が創刊され、現在も隔月で発行されています。生活情報記事も多数掲載している『ニコ☆プチ』、読者スナップや撮影会など参加型企画に力を入れている『JSガール』、人気キャラクター情報も満載の『キラ☆ピチ』と、それぞれ個性を持った雑誌たちです。どの雑誌にも、「SISTER JENNI〈シスタージェニィ〉」「RONI〈ロニィ〉」「ZIDDY〈ジディー〉」「mezzo piano〈メゾピアノ〉」「EARTHMAGIC〈アースマジック〉」「Lindsay〈リンジィ〉」「ANGEL BLUE〈エンジェルブルー〉」といった人気ジュニアブランドや人気キャラクターとコラボした、バッグやアクサセリーなどのファッショングッズや文房具などのふろくがついています。


 2014年の発行部数を見ると『nicola〈ニコラ〉』が約15万部、『キラ☆ピチ』が約13万部、『JSガール』が約85000部、『ニコ☆プチ』が約74000部となっています。ちなみに同年の『なかよし』は約14万部、『りぼん』は約20万部、『ちゃお』は約54万部で、公称部数もありますが少女漫画誌に迫ろうかという勢いです。少女漫画誌の発行部数が落ちてきている中、“女の子が最初に必ず通る道”と言われてきた『なかよし』『りぼん』『ちゃお』を手に取らないで、いきなりファッション情報誌から読み始める少女たちも出てきているのかもしれません。漫画はあくまでも創作物・フィクションを楽しむものですが、ファッションは自分自身が楽しめるリアルムーブメントです。それも少女たちがオシャレをしたくなる一因なのでしょう。ファッションにふれて興味を持つ年齢は下がってきており、少女たちは「もっとオシャレな女の子になりたい」「もっとオシャレなモノがほしい」と日々願い、そうなるための情報を求めているのです。

 そんな少女たちにも雑誌を手に取ってもらうため、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』も21世紀に入ると、ファッショングッズのふろくに力を入れ始めます。紙での再現が難しい、ファッショングッズの現物をふろくにできることは、規約改正のメリットの1つでした。
 練り香水が8種類入った「香りメイクパレット(なかよし 2014年3月号)」や、ネイルアートが楽しめるマニキュア・ネイルシール・つめみがきのセット、パレット式のリップグロスなどのコスメ類に、ブレスレットやネックレス、指輪、ヘアゴム、カチューシャ、シュシュなどの“連載漫画のキャラクターとおそろい”をウリにしたモノもあるアクセサリー。そしてミラーやブラシ、ハンカチやタオルなどの身だしなみグッズといった、“ホンモノ”ふろくの数々で、より多様に少女たちのニーズに応えられるようになりました。

 バンダナやリストバンド、財布、マフラー、くつした、ブランケット、ビーチサンダルなどの“ホンモノ”ふろくも登場します。これまでは紙やビニール製の手さげや組立式のケースだったバッグ類は、ポーチ、ファーバッグ、ショルダー、メッセンジャーバッグ、リュックなど、いろいろな形や素材で市販品と同等のものをふろくにすることができるようになりました。


 これらのファッショングッズふろくは、特に2008年ごろから漫画やキャラクターのイラストを使わずに、ロゴデザインや模様柄などが目立つようになりました。「オシャレっぽくないとダメ!」という少女たちの気持ちを受けたからなのでしょう、漫画色を極力なくしてファッション性を高めています。これまでは、少女漫画誌のふろくといえば人気漫画のキャラクターグッズだったのですが、女の子の絵が消えることでファッショナブルなグッズへと生まれ変わりました。
 少女たちの“オシャレ大好き”パワーは、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくのスタイルを変えてしまうほどの影響力を持っていたのです。

 さらに『なかよし』と『ちゃお』では、人気ジュニアブランドが全面協力した漫画とふろくも登場します。
 『ちゃお』では2003年に「mezzo piano〈メゾピアノ〉」とコラボして『シンデレラコレクション』の連載を開始。真面目で優等生の主人公がオシャレに目覚め、雑誌の読者モデルとして活躍するストーリーです。
 『なかよし』では2007年に「ANGEL BLUE〈エンジェルブルー〉」とコラボして『夢みるエンジェルブルー』の連載を開始。オシャレ大好きの主人公はフツーの中学生だったけど、ある日才能を認められ「エンジェルブルー」のデザイナーとしてナイショでデビューすることになるというストーリーです。
 どちらも漫画の連載中に、ブランドのロゴやキャラクターがデザインされたファッショングッズがふろくになりました。


 『なかよし』は2010年から2011年にかけても、「BLUECROSS GIRLS〈ブルークロスガールズ〉」「Pink shower〈ピンクシャワー〉」「ZIDDY〈ジディー〉」「SISTER JENNI〈シスタージェニィ〉」「RONI〈ロニィ〉」「INNER PRESS〈インナープレス〉」といった人気ジュニアブランドとコラボしたふろくを毎号のように登場させています。人気ブランドの、お店で買えないレアなオリジナルアイテムが雑誌を買うだけでもらえるのは、ブランドアイテムが欲しくてもなかなか手が届かない少女たちにとっては、何よりのプレゼントとなったことでしょう。

 これらのファッショングッズふろくを次号予告で紹介するときのコピーもまた、女性ファッション誌を意識した用語や言い回しを使い、ファッション性をアピールしています。
 「MOE甘ガーリーチェックショルダーバッグ(ちゃお 2012年6月号)」→“ワンピでガーリッシュに”“シンプルコーデのアクセントに”
 「シャイニーパープル キラつやガーリー長ざいふ(ちゃお 2013年3月号)」→“カジュアルコーデにもハマる!!”
 「チェンジング☆ショルダーバッグ(ちゃお 2015年10月号)」→“短めショルダーでスポカジミックス”“ラブリーコーデにピッタリ!”
 「ふわもこキャンディソックス(りぼん 2011年11月号)」→“甘カワなキャンディカラーにキュン”
 「姉カワローズマフラー(りぼん 2012年1月号)」→“クールガーリーなデザインだから、毎日のおしゃれにヘビロテ確実!!”
 「フレンチモードタンブラーポーチ(りぼん 2014年10月号)」→“パリのカフェモチーフが姉カワ”
 「NAKAYOSI×Pink shower〈ピンクシャワー〉 超ゴーカルームグッズ☆(なかよし 2010年12月号)」→“ラブリーピンクがゆるかわ”
 「サマースター☆アクセセット(なかよし 2010年8月号)」→“チャーム×3のネックレスで強めコーデが完成!”
 「NAKAYOSI×SISTER JENNI〈シスタージェニィ〉 ロングウォレット(なかよし 2011年2月号)」→“シグネチャー柄がオシャレ☆”

 『なかよし』『りぼん』『ちゃお』が誌面やふろくにファッションを取り入れたことで、“オシャレ大好き”少女たちならではの、新しい雑誌生まれのスターが誕生しました。
 それは漫画雑誌生まれだけれど漫画ではない、読者からの応募で選ばれて次号ふろくの予告やプレゼントのお知らせ、特集企画などに登場する“読者モデル”です。彼女たちはいわば“読者の代表”的な位置づけで、『なかよし』では「なかガール」、『りぼん』では「りぼんガール」※一般読者からの応募は2009年で終了、『ちゃお』では「ちゃおガール」と呼ばれています。読者の少女たちにとって、同年代の“読者モデル”たちは憧れのアイドルであると同時に、友だちになれそうな身近な存在でもあったのです。 

 少女たちの生活に“オシャレ”が浸透していくことにより、少女“漫画”雑誌とそのふろくのあり方がまた変化を見せてきました。
 もはや目玉的なふろくとなったファッショングッズなのですが、どうも『ニコ☆プチ』や『JSガール』のふろくと似たような印象を受けてしまいますし、どの雑誌のふろくなのか区別があまりつきません。以前はふろくに描いてある漫画のキャラクターで、どの雑誌のいつごろのふろくか大体の見当はついていたのですが、漫画のイラストがなくなってしまったため、ふろくを見ただけでは何のいつのふろくかがわかりにくくなってしまいました。昭和50年代に誕生した雑誌生まれの3大スターの輝きが弱まったことで、ふろく自体の個性も弱くなってきてしまったのかもしれません。そして、ふろくの材質は違っても、漫画やキャラクターにこだわらない少女たちが好みそうなデザインという点では、手作り感あふれるブローチなどのオシャレグッズがついていた昭和30年代の少女雑誌時代にまでも戻りつつあるようです。

 そして、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』のふろくの大部分をファッショングッズが占めた2010年前後には、いくら流行っているからといって、本誌とあまり関係のないバッグやアクサセリー、化粧品などを子どもたちにただ与えるだけでよいのか? と危惧する気持ちもありました。しかしここ数年は、一時のようなファッショングッズ頼みのふろくということはなくなり、文房具や他の実用品、漫画のキャラクターなどともバランスよく届けられるように心配りがされているように思えます。

 ただ現物を与えるだけでなく、創造性を育む新世紀ならではのふろくも少女たちに届けられているのです。

〈参考文献〉
『雑誌新聞総かたろぐ(1979年版~2015年版)』メディア・リサーチ・センター 1979年~2015年

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