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2015年7月17日 (金)

ふろくの花園 20.雑誌が生んだ人気者 (3)連載漫画のTVアニメ化

 各雑誌から生まれていった“まんが家”というスター。昭和50年代後半からは、そのスターたちが描く漫画と登場人物が、雑誌生まれの新たなスターとなっていきます。その流れを強力に推し進めたのが、連載漫画のTVアニメ化という別メディアとのタッグでした。少女たちは雑誌で漫画を楽しみながら、「あの漫画の○○ちゃんや△△ちゃんが動いてしゃべるなんて!」とTVの前でドキドキワクワクしていたものです。

 日本で最初に登場した少女漫画原作のTVアニメは、『魔法使いサリー』(りぼん 昭和41年7月号より連載/昭和41年12月より放送)といわれています。連載当初のタイトルは『魔法使いサニー』だったのですが、TV放送時に商標登録の関係でタイトルを変えざるを得なかったという“大人の事情”があったそうです。
 その他、昭和40年代には『リボンの騎士』(なかよし掲載)や『ひみつのアッコちゃん』(りぼん掲載)がTVアニメになっています。

 昭和50年代に入り、まずスターになった連載漫画と登場人物は、『なかよし』に掲載された『キャンディ・キャンディ』でした。昭和50年4月号に連載が開始された当初から、「おしゃれケース スイート・キャンディ(昭和50年5月号)」「キャンディの貯金箱(昭和50年6月号)」など、主人公の名前をふろくに入れており、登場人物を前面に押し出しています。昭和51年10月のTVアニメ放送開始の際には「なかよしまんが新聞 キャンディ特集号(昭和51年10月号)」で「ビッグニュース! キャンディがいよいよテレビに登場!」と大々的に取り上げられました。

 同じ『なかよし』掲載の『おはようスパンク』(昭和53年2月号および昭和55年10月号より連載)も、昭和56年3月よりTVアニメ化されました。この漫画は連載が一度中断し、絵を描いたたかなししずえ先生はその間に他の作品を連載しています。しかし、連載が中断しているにもかかわらず、毎号のようにスパンクが描かれたふろくがついていたのですから、人気の程がうかがえますね。可愛らしい犬のスパンクは、わんころべえとならぶ『なかよし』のマスコットキャラクターだったのです。


 また、創刊されたばかりの『ちゃお』と『ひとみ』でも、『若草のシャルロット』(ちゃお 昭和53年1月号より連載/昭和52年10月より放送)や『魔女っ子チックル』(ひとみ 創刊号・昭和53年4月号より連載/昭和53年3月より放送)がTVアニメになりました。ただ、この2作品は漫画の連載開始よりもTV放送開始がやや早いため、TVアニメ作品の漫画化といったほうがよいかもしれません。

 昭和50年代の『りぼん』といえば“おとめちっく”の全盛期で、スター作家たちとその絵柄の世界観を前面に押し出し続けていましたが、TVアニメ化された『ときめきトゥナイト』(昭和57年7月号より連載/昭和57年10月より放送)の人気が、作家重視から作品重視への転換点となりました。
 TVアニメにはなっていませんが『月の夜 星の朝』(昭和58年2月号より連載・昭和59年に実写映画化)』や『星の瞳のシルエット』(昭和60年12月号より連載)などの人気漫画を次々に生み出します。『キャンディ・キャンディ』終了後の『なかよし』が発行部数を落としていたこともあってか、昭和56年には発行部数を逆転し、昭和60年には200万部に到達。その後もさらに上昇を続け、「200万乙女のバイブル」と呼ばれるようにもなりました。

 そして、時代が平成に変わると、各誌の連載漫画が競うようにTVアニメ化されはじめ、本格的な漫画作品・キャラクター時代へと突入していきました。その頃にTVアニメ化された少女漫画といえば、なんといっても

 『ちびまる子ちゃん』(りぼん 昭和61年8月号より連載/平成2年1月より放送)
 『美少女戦士セーラームーン』(なかよし 平成4年2月号より連載/平成4年1月より放送)

 の2作品です。『なかよし』『りぼん』を読んでいなくても、この漫画やアニメのことを知っている人は多いでしょう。

 TVアニメを見て漫画のことを知った人が雑誌を買うという、新たな読者を獲得したことで、発行部数が増えていったのです。『なかよし』は昭和50年代後半から発行部数が伸び悩んでいましたが、この『セーラームーン』が大人気となり、平成5年には前年の150万部から210万部と一気に200万部越えを果たし、これが最高の発行部数となりました。『りぼん』の発行部数も平成6年の255万部が最高となっています。

 TVアニメ化された人気漫画が掲載されているということは、雑誌にとって“TVでやってるあの漫画が読める雑誌だよ”というステイタスになります。いかにアニメ化できるような人気漫画・人気キャラクターを生み出すかも、このころの各誌の命題でした。

 ふろくにおいても、アニメになった人気漫画をバックアップするかのように、まんが家のイラストだけではなくアニメ画を使用したものも登場しました。アニメ版のガイドブックや、多くの絵をのせられるトランプなどがよく見られます。これらのふろくはアニメのキャラクターグッズでもあり、通常のアニメグッズはお店に行けば買えますが、ふろくは雑誌を買わないと手に入りません。ふろくが雑誌オリジナルのアニメキャラクターグッズになったことで、その希少性と付加価値がさらに高まっていったのです。

 以下は昭和60年代~平成10年ぐらいまでにTVアニメ化された、各雑誌の主な連載漫画です。

 ★なかよし★
 『きんぎょ注意報』(平成元年2月号より連載/平成3年3月より放送)
 『怪盗セイントテール』(平成6年10月号より連載/平成7年10月より放送)
 『カードキャプターさくら』(平成8年6月号より連載/平成10年4月より放送)


 ★りぼん★
 『ママレード・ボーイ』(平成4年5月号より連載/平成6年3月より放送)
 『赤ずきんチャチャ』(平成4年10月より連載/平成6年1月より放送)
 『こどものおもちゃ』(平成6年8月より連載/平成8年4月より放送)
 『ナースエンジェル りりかSOS』(平成7年1月号より連載/平成7年8月より放送)
 『ご近所物語』(平成7年2月号より連載/平成7年10月より放送)


 ★ちゃお★
 『水色時代』(平成3年6月号より連載/平成8年4月より放送)
 『ウェディングピーチ』(平成6年3月号より連載/平成7年4月より放送)
 ★ひとみ★
 『レディ!!』(昭和61年10月号より連載/昭和62年4月より放送) 

 可愛らしいマスコットキャラクター、芸能界のスターみたいなまんが家、TVアニメ化されるほどの人気を持つ漫画とキャラクター。昭和50年代にそれぞれの雑誌から生まれた3つの人気者〈スター〉の活躍により、各雑誌はキャラクター(個性)を持ち、独自の漫画・キャラクター(登場人物)で競い合える少女漫画雑誌へと姿を変えていきました。
 そしてふろくも、憧れの先生たちが描く漫画の人気が大きくなることで、“○○先生の”というまんが家のグッズから、“(○○先生の)◇◇(という漫画)の△△ちゃんの”という人気漫画のキャラクターグッズの時代に突入していったのです。
 それぞれの庭師によって形造られていった、『なかよし』『りぼん』『ちゃお』『ひとみ』オリジナルの「ふろくの花園」は、昭和50年代から60年代を経て平成に入り、どのような新世紀を迎えることになるのでしょうか。

※文中の発行部数は公称です

〈参考文献〉
『日本のアニメ全史』山口康男 編著 テン・ブックス 2004年
『雑誌新聞総かたろぐ(1979年版~2014年版)』メディア・リサーチ・センター 1979年~2014年

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