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2015年6月10日 (水)

ふろくの花園 16.新規参入-『ひとみ』の場合(前)

 『ちゃお』の創刊から半年後、もうひとつの新しい仲間が「ふろくの花園」に加わりました。

 それは、『少年チャンピオン』でおなじみの秋田書店から発行された『ひとみ』。創刊は昭和53年4月号なのですが、実は昭和30年代にも一度、同名の少女雑誌が発行されていたのです。

 『りぼん』『なかよし』の創刊から3年後、昭和33年8月号が初代『ひとみ』の創刊になります。これらの少女雑誌は、すでに発行されていた『少女ブック』『少女クラブ』などよりも年少の、とりわけ“ベビーブーム世代”と呼ばれる、昭和22~24年生まれの少女たちをメインターゲットにしていました。また昭和33年前後は、作家たちの様々な才能が花開き、少女漫画の基盤が形づくられていった時期ともいわれています。本格的な少女漫画時代の幕開けと時を同じくして、圧倒的な人数をほこる新しい世代の読者たちを得た少女雑誌界。その盛り上がりは、昭和50年代前半の少女漫画雑誌の創刊ラッシュ期とどこか似ているような気がします。

 初代『ひとみ』の内容は、子役スターの表紙やグラビア、漫画よりも幅をきかせていた絵物語、そして欄外ハシラの一行豆知識など、まだ完全な漫画雑誌にはなっていない少女向けの総合情報誌という、当時の少女雑誌のスタイルを踏襲していました。

 創刊号のふろくは以下の5点です。

 ・トモ子ちゃんもしている うでかざり
 ・夏のジュニアバッグ
 ・別冊まんが 月のひとみ

 ・別冊まんが バレエ靴のひみつ
 ・夏休みレターセット

 その後もレターセットや手帳、紙袋にはじまり、昭和30年代ならではの様々なふろくを少女たちに贈り続けました。

 本誌の連載漫画の続きを楽しめる別冊漫画、ブロマイドをはじめとした人気スターグッズ、学習に役立つ「全国名所パノラマえはがき(昭和33年9月号)」「少女のための社会科事典(昭和36年2月号)」、バレエをとりあげた「バレエブローチ(昭和35年10月号)」「バレエ立体えはがき(昭和36年2月号)」、アクセサリーやファッション小物も「クリスマス十字架うでかざり(昭和33年12月号)」「プリンセスネックレス(昭和34年2月号)」「金のちょうちょうブローチ(昭和35年6月号)」「プリンセス水泳帽&ひとみサングラス(昭和34年7月号)」、「おしゃれベルト(昭和34年5月号)」「おしゃれチーフ(昭和35年11月号)」など多数。

 洗濯もOKの「ペパロン製エプロン(昭和33年9月号)」や交通標識をデザインした「サイン・ブローチ(昭和36年3月号)」には“これだけでもデパートでかえば百円します”や“今、東京で大流行”といった少女たちの心をくすぐるコピーが踊ります。

 もちろん、「おしゃれうちわ(昭和34年9月号)」「手芸人形(昭和35年5月号)」ほか、当時絶大な人気を誇っていた内藤ルネ先生デザインのふろくも忘れていません。

 さらに、皇太孫(当時)の誕生記念ふろくである「王子さま王女さま?写真スタンド(昭和35年4月号)」は、本誌と同じB5サイズの豪華版写真立て。左側に皇太子さま(当時)、右側に美智子さまの写真が印刷され、中央に生まれた赤ちゃんの写真を入れて机などに飾るという、“ご生誕”に沸いた世の中の熱気を感じ取ることができるふろくです。

 しかし、初代『ひとみ』は創刊からわずか3年弱、昭和36年4月号で休刊(※注)となってしまいました。秋田書店は同時期に『中学生画報』『小学生画報』を新たに発行しており、低学年の少女向きに特化した雑誌よりも、より幅広い層を対象とした児童・生徒向けの雑誌に力を入れることにしたようです。

 最終号のふろくは以下の5点+本誌とじこみ1点でした。

 ・花のヘアーバンド
 ・別冊ひとみカラーアルバム
 春のヨーロッパ
 ・ナプキンつき
 お料理セット
 ・別冊まんが あした光る星

 ・別冊まんが スーパーローズ
 ・本誌とじこみ スタージャケット

 次号の本誌、ふろくのお知らせがないところは最終号らしいのですが、ほとんどの連載が「5月号につづく」になっていたり、読者ページなどはお便りを引き続き募集中、休刊についての告知やあいさつも見当たらなかったため、本当にこの号で休刊になるようには思えませんでした。当時どのような進行で雑誌がつくられていたのかはわからないのですが、もしかしたら、休刊は急に決まったことだったのかもしれませんね。

 それから17年後に再び発行される、昭和50年代の『ひとみ』については後編へ。

※注:『国立国会図書館 NDL-OPAC』の「休・廃刊注記」では「以後廃刊」になっています
〈取材協力〉
弥生美術館
〈参考文献〉
『別冊太陽 子どもの昭和史 少女マンガの世界2』平凡社 1991年
『雑誌新聞総かたろぐ(1979年版~2007年版)』メディア・リサーチ・センター 1979年~2007年

※2008年8月に書いたものを投稿しました

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